10月28日、アルバルク東京はホームのアリーナ立川立飛に中地区5位の富山グラウジーズを迎えた。富山は昨季、B2リーグ降格の危機に瀕する苦しいシーズンを送ったものの、大型ポイントガードの宇都直輝、元NBAプレーヤーのデクスター・ピットマンらを擁し、個々の能力は申し分ない。直近2試合で連敗を喫したが、今シーズンはミオドラク・ライコビッチ氏を新ヘッドコーチに迎えて、昨季の雪辱を晴らすべくチームの士気は高い。
ハロウィン間近となったこの日、アリーナ立川立飛でファンを迎えるスタッフもちょっとした仮装を施し、コートサイドには仲の良い「マリオ」の夫婦や、カボチャの帽子を被った子どもたちも見受けられ、週末のアリーナを彩っている。雨の中観戦に訪れたファンにとっては、このように季節を感じる非日常的な雰囲気も、週末のエンターテイメントとしてのバスケットボールを楽しむ重要な要素であることを改めて気づかされる。
ここまで8勝1敗と東地区首位を快走するA東京は、この日もいつものようにバランス良いオフェンスを展開。4番(パワーフォワード)、5番(センター)がディフェンダーの選手をうまくスクリーンでひっかけて(ピックというプレー)、ディフェンスの間にズレを作る。うまくズレを作れないようなら、逆サイドからボールをもらいにきたガードの選手に対し、4番、5番が再びピックを試みる。この一連の動作が非常にスムーズに行われるA東京は、ボールも人も流れるように動き、チームとしての連動性が非常に高い。
ズレが生じて後手を踏んだ富山のディフェンスを見て、さらに空いている選手へとパスを飛ばすアルバルクは、このオープンショットを確実に沈めて着々と得点。第1クォーターを28-19、第2クォーターでも25-16とリードを収め、前半を終えて53-35と優位に試合を進めた。
前半戦、チームを引っ張ったのは竹内譲次とジャワッド・ウィリアムズの2人の4番だ。第1クォーターは竹内譲次が出場し、2ポイントシュート3本をすべて沈めて11得点4リバウンド。第2クォーターはウィリアムズが出場し、2ポイントシュート6本中5本を決めて14得点。任せられた時間帯でそれぞれがしっかりと結果を出して、前半戦の安定した試合運びに大いに貢献した。
A東京は後半に入っても、ピットマン、サム・ウィラードなど富山の強力なインサイド陣に散発での得点は許すものの、富山のアウトサイドシュートをしっかりとシャットダウン、富山に追撃の余地を許さず試合をコントロールした。後半途中に、アレックス・カークのド派手なアリウープと、ピットマンの豪快なダンクでショットクロックの補助具が外れ、レフェリータイムアウトが2度も挟まるアクシデントが起こったが、A東京は一切ペースを乱すことなく試合をクローズ。104-77と今季初の100点ゲームで圧勝し、これで7連勝。一方、敗れた富山は3連敗となった。
敗れた富山ライコビッチHCは試合後の記者会見で「まずはA東京に『おめでとう』と言いたい。本当に強いチームたった。序盤に4番のポジションでやられてしまった」と分析し、「第2クォーター以降を楽な展開に持ちこませてしまった」と肩を落とした。
勝ったA東京のルカ・パヴィチェヴィッチHCは「(今日の試合は)パフォーマンスレベルが高かった。選手たちは本当に素晴らしい試合を見せてくれた。ホームのみなさんの前でハイスコアリングゲームをお見せできてうれしい」と笑顔を見せ、「今日のような試合を続けられるようにしたい」といつものようにさらなる高みを目指す姿勢を見せた。
田中大貴というエースを擁するA東京だが、抑えるべき選手は田中だけではない。層が厚くタレントも豊富なうえに、人もボールも激しく動き、オープンな選手の正確なシュートや、厳しいディフェンスでボールを奪ってからの速い攻撃など、対策の難しいチームへと成長を遂げつつある。シーズン序盤にも関わらず、厳しく濃い練習を重ねることによって、チームの連動性も日増しに高まっている。混戦の東地区を早くも抜けだしつつA東京を止めるのはどのクラブとなるのか? これからのシーズンの見所となりそうだ。
文=村上成