2018.11.01
昨シーズンの好スタートから一転、今季は開幕ダッシュに失敗した名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。9月29日の開幕戦はアウェーで川崎ブレイブサンダースから貴重な勝利をもぎ取ったかと思ったら、その後はあれよあれよの5連敗。ケガ人を抱える不幸があったものの、試合の終盤で逆転を許し、勝ちきれないジレンマを抱えながらの苦しい船出となった。
転機となったのは10月21日のB1リーグ第4節第1戦、ホームに三遠ネオフェニックスを迎えての“愛知ダービー”だ。この試合、チームの柱でもあり日本代表にも選出されている張本天傑が、日本代表合宿を終え疲労性の腰痛で出場できないアクシデントが発生した。この緊急事態で、試合終盤の三遠の猛攻を防ぎ、勝利に貢献したのが、ニックネーム“ふにゅー”こと船生誠也だ。
船生は190センチ85キロとスモールフォワードとしてはやや細身ながら、長い手足を活かしたディフェンス力に特徴を持つ選手だ。21日の試合も、このゲームだけで6スティールを記録。特にゾーンディフェンスに目が慣れた三遠に猛追を受けた第3クォーターに、まとめて4つのスティールを挙げて、瓦解しかけたチームのディフェンスを瀬戸際で押しとどめた。
試合後のミックスゾーンで、船生は「(スティールは)狙ってというか、僕的に『危ないな』というところに行ったら、案の定相手のパスが出てきた」と語った。いわゆる“読み”が良いとも言えるし、野性的な勘が鋭いのかもしれないが、この困ったときに“そこに船生がいる”というのが彼の武器の一つだろう。
序盤のリードを吐きだす苦しい展開となった三遠との試合、船生が「最大26点差もあったリードがジワリジワリと詰められて、『あー、またかー』という空気も流れかけた」と語ったとおり、5連敗中だったチームには重苦しい雰囲気が流れていた。「ベンチもコートもチーム一丸となって、(試合が)ホームということもありましたし、なんとか(流れを)断ち切れた」と述べた船生だが、この三遠が作りだした一気呵成の勢いを消したのは、彼の野性的な守備と危機察知能力だと言える。
このまま負ければさらなる深みにはまる危険性もはらんでいた大一番、チームの結束と船生の献身的な守備もあり、名古屋Dは息を吹き返すと、続く2戦も勝利を収めて3連勝。序盤で抱えた借金の返済も視野に入ってきた。
連敗を止めて、再び上昇の兆しが見えてきた名古屋D。連勝中の3試合でスターティングファイブに名を連ねる船生は「波がくれば、ウチは若いし、もっともっと良くなると思います」と力強く語る。ひらがなで「ふにゅー」と書かれると力が抜けてしまうような柔らかさだが、とんでもない。“ふにゅー”の猛禽類を思わせる鋭いスティールが、チームにさらなる大波を届けることに期待したい。
文=村上成
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