12月8日、Bリーグ第11節が行われ、川崎ブレイブサンダースはホーム川崎市とどろきアリーナに中地区首位シーホース三河を迎えた。12月6日に開催されたBリーグ理事会において、2018-19シーズン以降、株主(オーナー)が、東芝ビジネスアンドライフサービス株式会社から株式会社ディー・エヌ・エー(以降DeNA)に変更することが承認され、即日、事業承継に関する会見が両社から行われたばかりのブレイブサンダース。バスケットボール界にとっての大きなニュースが発表された後に開催される最初のホームゲームの相手として迎えるのは、昨シーズン唯一勝利を得ることができなかった三河、今シーズンもここまで、17勝2敗、勝率.895と圧倒的な強さで中地区首位を快走する強敵だ。
川崎は、前節のサンロッカーズ渋谷との対戦で今季初の連敗。勝敗数で並んでいたSR渋谷に痛い敗戦を重ね、東地区4位へと順位を下げた。昨日、6日の発表を受けて、「一つの区切りとして恩返しをするという意味でも、今季結果を出そうという気持ちは選手・スタッフの中で高まっているという感覚があります」と語った川崎のキャプテン篠山竜青。前節の悪い流れを断ち切って、再び昨シーズン見せつけた圧倒的な強さを取り戻すかどうか、注目が集まる試合となった。
試合開始は19時8分。川崎は開始早々、三河の橋本竜馬に3Pシュートを沈められ先制を許すも、すぐさまファジーカスがミドルシュートで返す。ダニエル・オルトンを中心にインサイドを攻める三河の攻撃をしのぎ、ファジーカス、長谷川技のシュートで優位に試合を進めるかに見えた川崎だったが、橋本竜馬、金丸晃輔、比江島慎の日本代表クラスと桜木ジェイアール、オルトンという巧さとパワーを備えたインサイド陣の織りなす流れるようなオフェンスを防ぐことができず、ジワジワと差をつけられると、20-29と9点のビハインドを負って第1クォーターを終えた。
第2クォーターに入り、トラベリングやオフェンスファールなどをおかし、リズムを失った三河に対し、川崎は粘り強くオフェンスリバウンドを拾い辻直人の連続3Pシュートにつなぐ。辻は高さに劣るチームメイトが必死にチップアウト(リバウンド時にボールを弾いて味方へつなぐこと)してつないだボールをしっかりと沈めてみせて、このクォーターだけで10得点。アイザック・バッツのインサイドプレーと個のシュート力で得点を重ねる三河に対し、徐々に点差を詰めることに成功した川崎はこのクォーターを4点リード、前半を終えて44-49とした。
第3クォーターも両者ともに高い集中力を保ったままで、一進一退の好ゲームが続く。しかし、川崎は鎌田裕也とバッツのミスマッチを突く三河のオフェンスに耐えられず、徐々に差を広げられると、バッツへのダブルチームでフリーになった狩俣昌也に連続3ポイントを沈められて再び2ケタ得点差を許す。一気に三河に流れが傾くかと思われたが、ここでもチームの危機を救ったのは辻。この日冴えわたる辻のアウトサイドシュートでなんとか追いすがった川崎はこのクォーターを30-30のタイとして、74-79の5点差で最終クォーターへと突入した。
Bリーグの強豪であり、日本バスケットボール界を支える両チーム。名門同士の好ゲームは第4クォーターに入るとさらに激しい攻防となる。意地と意地のぶつかり合いとなり、川崎は藤井や篠山の得点が重ねるものの、桜木や比江島に冷静に返され、シーソーゲームのまま試合はいよいよ最終盤へと入った。どちらにリズムが転ぶのか、と観客が息を飲み見守っていた残り1分39秒、川崎に大きなチャンスが巡ってくる。この試合早いタイミングでファールを重ねベンチに座っている時間が長くなっていたオルトンは、イライラが募ったのか、この大事な局面でアンスポーツマンライク・ファウルを犯してしまう。スコアは95-95。ついに、川崎が逆転かと思いきや、このフリースローを名手ファジーカスがなんと2投とも失敗。この失敗により流れが三河に傾くかに見えたが、ジョシュ・デービスがその後のプレーで得点を奪い、川崎がついに逆転を果たす。
我慢に我慢を重ねた川崎の勝利が目前に見えたが、この流れを断ち切ったのは三河の比江島。日本代表でもその実力をいかんなくアピールした三河のエースは、アウトサイドからの2ポイントを決めると、その後もフリースローを2本とも成功し、試合終了直前には3ポイントも沈めてみせて、このクォーターだけで15得点。このゲーム計23得点を挙げて、粘る川崎の息の根を止めた。川崎は強敵三河に対し、最後の最後まで追い詰めるシーソーゲームを展開するも、ファイナルスコア99-104で敗戦。悔しい敗戦を喫した川崎は前節の渋谷戦から数えて3連敗となった。
試合後の記者会見で三河の鈴木貴美一ヘッドコーチは「川崎さんということで、スカウティングして挑んだのだが、さすがは川崎。リバウンドでも本来、ウチが上回らなければならないのに、リバウンドを取られ。シュートを決められ…。ただ、(試合を)やってるほうは大変だけど、観てる方々には良かった試合だと思います」とライバルとのシーソーゲームを制し、安堵の表情を浮かべた。
敗れた川崎、北卓也ヘッドコーチは「スタートを非常にがんばってくれて、最後までわからないくらいの試合にはなったが、残念ながら負けてしまって悔しいです」と語ると、「シューティングパーセンテージも高いし、さすがは三河さんだなと…。もう少しディフェンスの踏ん張りがないと勝てないなと思いました」と、課題を口にした。昨年は経験をしていないチーム3連敗については「昨シーズンと比べてもメンバーも違うし、仕方がない。一人一人がもっとディフェンスをやっていかないと厳しいのかなと思っている」と述べると、次の試合に向かってしっかりと前を向いた。
チームにとって戸惑いもあるかと思われた川崎だが、敗れはしたものの、平日の夜に駆けつけた熱心なバスケットボールファンの前で、選手は素晴らしいプレーを披露した。詰めかけたファンも目の前で繰り広げられたバスケットボールを堪能し、大きな声で声援を送った。いつもどおりのブレイブサンダース、いつもどおりの川崎ファンの間に大きな混乱は見られなかった。しかし、キャプテン篠山が語った“一つの区切り”に向けて、選手の想いとチーム、ファンの熱量を感じることができたこの試合、それぞれの胸の奥底に眠る熱い思いはあるようだ。今シーズンの川崎の区切りに向けての戦いに、今後も注目したい。
【試合結果】
川崎ブレイブサンダース 99-104 シーホース三河(@川崎市とどろきアリーナ)
川崎|20|24|30|25|=99
三河|29|20|30|25|=104