2年目を迎えるB3リーグはいよいよチャンピオンを決めるファイナルステージに突入した。B2参入を視野に入れた強化の進むクラブが増える中、注目度が増すB3リーグ。B3からの底上げが、Bリーグ全体を押し上げるのは必至だ。そこで、ファイナルステージの展望と注目の2チームを紹介していきたい。
B3リーグ2017-18シーズンのレギュラーシーズンでは2位に食いこんだ大塚商会アルファーズ。 ファーストステージでは黒星が先行したものの、レギュラーシーズンでは東京八王子トレインズを抑えて一時首位に立つなど、4位となった昨シーズンを上回る快進撃を演じている。
大塚商会は外国籍選手を除く日本人選手全員がチームの保有法人である株式会社大塚商会に社員として所属。フルタイムの仕事をこなしているため、平日の練習にメンバー全員がそろうことがないという逆境にありながら、プロのクラブに対しても互角以上の戦いを見せている。
チームを率いるのは現役時代に埼玉ブロンコスでプレーし、引退後は京都ハンナリーズなどでも指揮を執った経験のある青野和人氏。2013年に大塚商会のヘッドコーチに就任しており、豊富な知識と理論に基づいたコーチングが持ち味だ。
5位と出遅れたファーストステージからの巻き返しについて、青野HCは「シーズン序盤は攻撃回数を減らすというか、セットからのスクリーンプレーでズレを作ったり、パスに関しても4、5本回すようなオフェンスを展開していたが、うまくはまらないことも多かった。それをメンバーによってシンプルにブレイクを出したり、アップテンポにアタックすることをより意識するようにした」と語り、思いきったバスケットスタイルの転換を好調の要因に挙げた。
また、1月に加入したアンドリュー・ネイミックの存在も大きい。「ネイミックが入ったことで、ディフェンス面は数倍安定した。ディフェンスリバウンドを取ったらまず走る(ファーストブレイクを狙う)というプレーも選択しやすくなった」(青野HC)
青野HCの手腕とB1での経験も豊富なビッグマンの加入によりレギュラーシーズンを席巻した大塚商会だが、八王子や埼玉などのプロチームと違いB2昇格の資格も持たないなか、その躍進の原動力はどこにあるのか。新卒での加入から6年目キャプテンを務める西片翼はこう説明する。
「普段は練習に1回も全員がそろうということはないので、週末にやっと全員が集まってバスケができるんです。本当に土日が楽しみで仕方がない」。仕事をしながらバスケットをプレーすることが、却ってモチベーションの維持につながっているのだ。
「もちろん勝ちたいですし、毎試合勝ちに行ってるんですけど、それ以上に楽しみたいという気持ちが強い。好きな時に好きなようにバスケができない分、できる時間はもう一生懸命やろうと思っています」(西片)
今季のB3リーグについて青野HCは「基本的には横一線に近いです。レギュラーシーズンで優勝した八王子は力強いバスケットをしていますが、昨年の二強(ライジングゼファー福岡、金沢武士団)と比較すると、苦戦している試合がしばしば見られました。逆に言うとウチも八王子に対しては五分(2勝2敗)でしたが、その他の全チームに1敗ずつ(3勝1敗)してしまい、せっかく奪った首位の座をすぐに明け渡してしまった。ファイナルステージも勢いやコンディション次第で順位が大きく変わる可能性がある」と語れば、西片も同様に「どのチームが強いか、というより本当に自分たちの出来次第。どのチームにも勝てる可能性はあるし、逆にどのチームにでもやられてしまう危険性があります」と実力伯仲であることを強調した。
参加クラブ数が再び絞られ、一戦の重みが増すファイナルステージ。B2昇格を目指す八王子、埼玉の2クラブをはじめ、プロチームとの戦いも一層激しさを帯びてくるなか、2カ月間をどう戦いぬくのか。
西片は「一戦ずつ勝っていくしかないです。ウチは本当に大味のチームで、波がすごくあります。調子の良いときは得点もできるししっかり守れるんですけど、停滞すると何もうまくいかなくなってしまう」、「タイムアウトも1試合5回と限られている中、できる限り自分たちで立て直して、本当に重要な時にコーチがタイムアウトを使えるような状況を作っていきたい」とコート内での修正を課題に挙げ、青野HCは「主力である長谷川(武)のケガが逆にチャンスだと思っています。長谷川が戻ってきたときに元のバスケットしかできないようであれば、所詮2位までのチーム。ファイナルシーズンを優勝と考えるならもう一段上のレベルに行かないといけないですし、彼の穴が埋められると、復帰してきたときにいま伸びているものに+αになる」と話す。卓越したパスセンスでチーム最多のアシスト数をマークしている長谷川の復帰、そして離脱中に残された選手がどれだけ成長できるかが鍵をにぎるだろう。
ファイナルステージを開幕2連勝で飾った大塚商会。「レギュラーシーズンもチャンスありながら優勝できなかったので、本当に優勝したい」と西片が話せば、青野HCも「レギュラーシーズンでは2連勝した八王子戦(第13節)がピークで、チーム全体にどこか慢心や達成感が出てしまい、最終的に2位になってしまった。その悔しい思いを全部出しきる」と、並々ならぬ決意をのぞかせた。
西片はB3リーグについて、「勝つことは大前提として、勝ちながらどれだけこの土日を楽しめるか。そんな姿を多くの人に見てもらいたい」と思いを明かす。キャプテンを務める西片だが、決してプレータイムは多く与えられていない。それでもベンチでは誰よりも大きな声でチームを盛りあげ、タイムアウトになると真っ先に飛び出してチームメートを迎え入れる。その姿はアルファーズを体現している選手と言っていい。
「子どもたちからしたら、B1・B2のプロ選手は憧れだと思います。ただ、他にもB3というリーグがあって、プロに混じって社会人のチームがこれだけ楽しそうににプレーしているんだとか、プロにはない部分を感じてもらえると嬉しいです」(西片)
“B3の門番”の底力に注目だ。
文=山口晋平