2017.03.08

B3ライジングゼファーフクオカの広報が語るクラブの未来「子どもたちの憧れとなるチームに」

B3リーグのファーストステージを制したライジングゼファーフクオカ
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タモリ、井上陽水、松田聖子、チェッカーズ、浜崎あゆみ、橋本環奈などなど、数々の芸能人を輩出する福岡県。出身の有名人を並べるだけでも、驚くばかりだが、福岡が生みだしてきたのは芸能人だけではない。実はスポーツにおいても際立つ実績を残す種目がある。それが、バスケットボールだ。福岡ソフトバンクホークスの印象から、ついつい“野球県”のイメージを持ってしまうかもしれないが、高校バスケ界においては、昨年インターハイとウインターカップの2冠を達成した男子の福岡第一高校、ウインターカップ2度の優勝を誇る福岡大学附属大濠高校があり、女子の中村学園女子高校も同大会で冬の女王に4度輝くなど、全国に名を馳せる強豪として有名だ。また、B1リーグにおいても、県出身のプレーヤーとして橋本竜馬比江島慎金丸晃輔日本代表トリオ(いずれもシーホース三河)に加え、熊谷尚也(栃木ブレックス)、阿部友和千葉ジェッツ)など、各チームの主力を挙げることができる。

そんな“バスケどころ”福岡県だが、現在はB1リーグどころか、B2リーグにもクラブは存在しない。福岡をホームにするライジングゼファーフクオカの主戦場はB3リーグだ。bjリーグ時代の2012-2013シーズンには準優勝を果たすなど実績、実力に申し分ないが、Bリーグ立ちあげの際に、福岡県バスケットボール協会の支援承諾を得ることができず、B3からのスタートとなった。現在は経営面や興行面で、Bリーグの求める水準に達すべく、日々着実に歩みを進めている。そんなライジングゼファーフクオカの現状とB3リーグに参加するチームの日常について、クラブ広報に話をうかがった。

インタビュー=村上成
写真提供=ライジングゼファーフクオカ

――福岡県のご出身ですか?
広報 はい、そうです。小中学校ではバスケットボールをやっていたんですけど、高校ではやっていなくて。高校卒業後にまたやり始めました。バスケットボールが好きなんですかね(笑)。

――チームは設立して何年になるのでしょうか?
広報 2007-2008シーズンにbjリーグに参入して、今年で10年目になります。ただ、スタッフや選手は、新しい方が多いです。前身のライジング福岡からライジングゼファーフクオカに変わってから、入れ替えが結構ありましたね。

――では、10年経っているけれども、新しいチームみたいな感じでしょうか?
広報 そうですね。ライジングゼファーフクオカに変わってからは、ゼロからではないですけど、ライジング時代に培ってきた良いものを残しつつ、新しいチームとしてスタートしています。

――前身から引き継いでいる良いものとは具体的に何ですか?
広報 そうですね、昔から地元出身の選手が多く所属しているので、そこはすごくいいところだと思います。福岡出身の選手が6名いて、出身は福岡ではないのですが、福岡第一高校出身の長島エマニエル選手を含めると、7名が福岡にゆかりがある選手になります。選手はみんな福岡を盛りあげたいという強い気持ちでプレーしているので、そこが他のチームにはない強みだと思います。

――昨年9月にBリーグが開幕し、さらにB3リーグができて、環境が変わったと思うんですが、実際に変わったと感じていますか?
広報 そうですね、変わったと思います。メディアに取りあげられることが多くなり、周りの皆様に注目していただく機会がbjリーグの時よりも増えました。

――bjリーグとの違いは感じますか?
広報 特にB3だからかもしれませんが、B3リーグはプロとアマの混合リーグなので、企業チームと試合をするところが一番の違いですね。企業チームはホームアリーナを持たないので、プロのチームの方がホームになることが多いんです。なので、ホームでの試合数が全然違います。私たちは、より多くのお客様に試合を見に来ていただけるようになりましたが(笑)。

――ホームゲームの数が増えると、興業面が大変ですね。
広報 そうですね。準備から試合の運営、撤去までスタッフがやらなければならないので大変です。開幕3試合が連続でホームでの試合だったのですごく大変でした。

――先日、B3の吉田専務理事にお話をうかがったところ、B3はB1、B2リーグに上がるための“登竜門”と考えていて、各チームに経営や試合運営などの経験を積んでもらいたいということでした。実際にB2に上がることを意識していらっしゃるんですか?
広報 選手たちはB2に上がることを意識して戦っています。その選手を支えるために、フロントも同じ意識でやっていますし、来シーズンはB2にいるという前提で進めている話もあります。

――メディアの引き合いや普段の発信もあって、業務量は増えたんですか?
広報 そうですね、今は広報と別に演出面の役割もあって、開幕前はどういった演出をしていくか、どのようなものをリリースしていくか、選手の情報はどのように発信していくかを把握するのが大変でした。今はだいたいのルーティーンがわかるようになってきたので、後はイレギュラーなことにどう対応していくかだけですね。

――B3の中で演出面も含めて、フロントの動きがいいなと思うクラブはありますか?
広報 いいなというより絶対に負けたくないとフロントが思っているチームは、やっぱり金沢武士団です。金沢にはホームで唯一2連敗して、すごく悔しかったので。

――ライジングゼファーフクオカをどんなチームにしたいですか?
広報 よく代表の長尾洋二が言うのですが、「日本で一番愛されるチームを作る」ということを意識しています。

――愛されるチームにという点で、福岡出身の選手が多いのも一つの要素ですかね。
広報 そうですね。福岡の県民性なのか、地元の選手を応援したくなるのはあると思います。選手も一緒で、地元福岡を盛りあげるためにプレーしています。B1からB3に来た選手もたくさんいますし、その想いがプレーにも表れていると思います。盛りあげるために選手も私たちに協力してくれていますし、フロントも含め、そういうところでチーム一体になっていると感じます。

――観客動員数はどうですか?
広報 市内開催だと多いんですけど、会場が今バラバラなので少ない時もあります。でも、そのバラバラなのを逆手に取って、会場ごとにユニフォームを変える試みを行っています。ユニフォームの色がその市の花の色で、北九州市だったらひまわりなんで黄色、筑後地区だったらコスモスなのでピンク、福岡市内は球団カラーで、ホームはネイビー、アウェイは白にしていて、開幕戦はオレンジにしました。その都度ユニフォームを替えてお客様に楽しんでもらえるようにしています。動員数はやっぱり福岡市内が多いですね。平均で2000人くらいは入っています。

――アリーナの収容人数はどれくらいなんですか?
広報 3000から3500人なので、やっぱり空席が目立ちますね。そこを埋められるようにしたいです。

――今、北九州や飯塚にも行ったりしていると思うんですが、最終的にメインはやっぱり市内にしたいですか?
広報 そうですね。B2に上がるためには、ホームゲームの試合を市内で6割占めなければならないので。残り4割のホームの試合は北九州や飯塚など市外でやりたいですね。飯塚市の出身の選手もいるので、そこで開催すれば、地元の小学校、中学校の子どもたちも来てくれますし、できる限りやりたいです。

――次にステップするための課題などはありますか?
広報 フロントスタッフでみんなそれぞれだと思うんですが、私は一番の魅力というか、選手もお客様も望んでいるのは会場が満員になることだと思うんですよ。満員の会場で試合をすることでメディアにも取りあげてもらえるし、それによって露出が増えて、福岡に行こうかなというお客様たちを取りこむことができます。やっぱりきっかけは満員の会場だと私は思うんです。そこにはすごい価値が眠っていると思うので、動員数がもう一伸びすればいいかなと。選手のモチベーションもそれだけであがりますし(笑)。

――福岡は福岡大学附属大濠高校があったり、福岡第一高校があったりとバスケ熱が高いと思うのですが、そのあたりはどう感じますか?
広報 福岡ソフトバンクホークスが強いので、正直、バスケットボールがものすごく熱いという感じではないです。でも、このクラブに勤めてから改めて感じていることは、福岡は小中高とバスケが強くて有名なので、クラブが福岡を代表するバスケチームとしてBリーグの頂点に立って、子どもたちの憧れとなるチームにしたいですね。今、小中高でプレーしている選手たちが、いつかライジングゼファーでプレーしたいと思うようになればいいし、プロになって他の地区でプレーしても、いつか地元の福岡でプレーして、「福岡に恩返ししたい」と思ってくれたらうれしいですね。

――この選手に注目してほしいと思うオススメの選手はいますか?
広報 クリニックでの評判や、取材対応がすごく良い選手がいて、福岡出身ではないんですが(笑)、41番の加納誠也選手がオススメです。クリニックの時も子どもたちのことをしっかり名前で呼ぶし、参加者からの評判も良くて、チームの中ではムードメーカーです。あとは福岡県出身の選手はみんな注目してほしいんですが、その中でも、福大大濠出身のトリオ、山下泰弘選手、堤啓士朗選手、小林大祐選手はよく福岡のメディアの方に取りあげてもらっています。このトリオはプレー面でもそうですけど、コメントが地元愛に溢れていて、それを知っているファンからすると、福岡のために戻ってきてくれたんだと感じていただけるようです。選手のコメントもそうですが、クラブは、やっぱり地域に密着してなんぼだと思うんですよね。そうでなければ、地域の企業に応援してもらえないですし。

――バスケを野球やサッカーのように、“やる”スポーツから“見る”スポーツに変えるために必要なことは何だと思いますか?
広報 やっぱり、見に行こうとする一歩目が大きいと思います。野球みたいに気軽にパッと行こうと思われていないので。例えば、ファンクラブ会員の人たちが初めての人を連れてきたら、その初めての方のチケットを半額にしたりとか、きっかけを作り、その後も続けてアリーナへ足を向けてくれる運営をするのも大事だと思います。企業にスポンサーの特典として、チケットを渡しているんですが、その方々の口コミで、ファンの拡大ができたらいいなと思います。そして私たちスタッフは、気軽にお越しいただけるように、エスコートしなくてはならないと思っています。来ていただけたら絶対面白いので、面白さを伝えられるようにしたいですね。

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