2020.10.01

なぜ横浜ビー・コルセアーズのスポンサーに? 横浜トヨペットの宮原漢二社長へ直撃!「ともに成長を目指したい」

赴任先での思い出を含め、宮原漢二社長には様々な角度からバスケットボールを語っていただいた [写真]=伊藤 大允
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

 横浜ビー・コルセアーズのトップパートナーの1つでもある横浜トヨペットは、改めて言うまでもなく車を販売する会社だ。横浜の観光名所、山下公園の近くに居を構え、64年もの歴史を誇る同社がなにゆえBリーグのクラブのスポンサーをしているのだろうか?

 そんな疑問を持った編集部が取材を依頼すると、何と宮原漢二社長が直々に対応してくれるとのこと。実は宮原社長は、海外赴任先でNBAをはじめとするスポーツエンターテイメントの洗礼を受けた経験があるという。さて、どのような話が聞けるのだろうか。

取材=入江美紀雄
写真=伊藤 大允、B.LEAGUE
取材協力=横浜トヨペット株式会社

赴任先のカナダで感じたスポーツが持つポテンシャル

同じ“横浜”にフランチャイズを持つビー・コルセアーズをサポートする横浜トヨペット [写真]=B.LEAGUE

——まず横浜ビー・コルセアーズをサポートすることを決めた経緯を教えてください。
宮原 ちょっと話が脱線してしまうのですが、私は2009年から17年までカナダのトロントに駐在していました。カナダと言ってもトロントにはアメリカの多くの都市のようにメジャーリーグやアイスホッケー、そしてメジャーリーグサッカーのチームがあります。ご存知のようにNBAならラプターズのフランチャイズですね。実はそれまでバスケットボールにはあまりなじみがなかったのですが、トロント時代は仕事のお付き合いもあり何度かアリーナに行くようになって、そしてハマりました(笑)。妻も「混むから」という理由でスポーツ観戦が得意ではなかったのですが、バスケットだけは終始「楽しい」と。あのようにスピードと流れがあるスポーツを間近で見たら、バスケットの面白さにひかれてしまいますよね。家から30、40分のところにあったラプターズのアリーナでは、おじいちゃん、おばあちゃん世代からお孫さんまでと家族三代で楽しむ姿もあちこちで見られNBAが生活に深く入り込んでいることを感じました。

——NBAを先に見てしまったわけですね。
宮原 弊社は設立から60年を超える歴史を有していますが、事業活動だけでなくスポーツ振興をはじめとした地域貢献活動など、地元神奈川のお役に立てるよう様々な取り組みを展開しています。その中で“横浜”というつながりで、ビー・コルセアーズさんのスポンサーをさせていただいていたのですが、日本ではバスケ人口は多いのに、Bリーグも始まったばかりという状況でした。でもバスケットボールは高い将来性がある。私がカナダで見たNBAのように観客が一体感を持って楽しむことができれば、すごく盛り上がるのではないかと。私が帰国する前からビー・コルセアーズさんのサポートをさせていただいていたのですが、もっと深く関われる機会がないかなとお声がけしたのがきっかけです。

熱心なファンが多いのもビー・コルセアーズの特徴 [写真]=B.LEAGUE

——NBAと比べると若干もの物足りなさを感じませんか?
宮原 現時点ではおっしゃるとおりかもしれません。ただサッカーのJリーグも始まったのが1993年、それから20年も経ってみると、これだけ多くのファンの方々に支持してもらえるようになっています。この1、2年の話ではないかもしれませんが、バスケの場合もこの先10年、20年とどのように成長していくのか楽しみです。高いポテンシャルを秘めているのは事実だと思います。

——ビー・コルセアーズを盛り上げていこうというのは宮原社長の意向ですね。
宮原 私がカナダで経験したことは大きいと思いますし、バスケ、Bリーグが本当にこれから成長していくと感じられたからだと思います。地元のスポーツチームが愛されて、みんなで育てていくことはとても大切です。横浜トヨペットとして県下に約80カ所の事業所を持っており、グループ全体では約60万人ものお客様に支えられています。我々の事業活動を通じて、今までBリーグの試合を観たことがなかった人がバスケやビー・コルセアーズのファンになるようなお手伝いができればと思っています。それに携わっているというビー・コルセアーズのファン、ブースターが「車を買うなら横浜トヨペットで」と思っていただけたら、それはすごくうれしいことだと思います。

バスケが盛んな神奈川でもっと愛されるクラブになってほしい

日本のバスケットボールが「どのように成長していくのかが楽しみ」と宮原社長 [写真]=伊藤 大允

——横浜トヨペットは県内全域に店舗を持たれていますから、そこでビー・コルセアーズの選手の等身大パネルやユニフォームを飾ったりして、多くの方に浸透させていくこともできますね?
宮原 当然あります。我々の人気企画の1つは、ビーコルの選手が子どもたちにバスケットボールを教えるというものあります。私の息子もバスケットをしていますが、プロの選手に教えてもらえることは夢のような体験だと思うので、そういったことを通して、ファンを増やすお手伝いができればいいですね。

——神奈川県は、田臥勇太選手(宇都宮ブレックス)の出身地であるなど、ミニ、中学校も強くバスケが盛んな地域です。
宮原 元々神奈川はバスケが盛んな土地です。またスポーツは老若男女が楽しめて、家族で盛り上がれるものを提供できることはとてもうれしいですね。

——Bリーグは女性ファンやファミリー層が多いというデーターがあります。御社の客層との親和性はいかがですか?
宮原 カナダでも感じましたが、バスケットボールは特に女性の熱狂的なファンが多いですね。自家用車は家族で乗るものなので、家族全員で選ぼうという意識があります。昔は“パパが選んで”というような流れがありましたが、今はご家族で来店されて、お子さんも「この車がいいね!」というご家族も多くなってきました。それだけにBリーグとの親和性は高いと思います。バスケットを通して弊社のことを知ってもらえればうれしいですし、車のことで当社に相談してみようと思っていただけたら本当にありがたいことです。

——フランチャイズを盛り上げて活性化しようということも共通点かもしれません。
宮原 「ビー・コルセアーズを応援する=車の販売に結びつく」とは考えていません。長い時間をかけて成長していくことを一番に考えており、10年、20年かけて共に歩んでいくつもりです。車業界のお話をさせていただくと、人口減少や車の所有意欲が減り、カーシェアなど利活用を求める方が増えてきているなど、「自動車販売」という意味では難しい時代になってきているのは事実です。しかし、私たちが求められているものは、地元に密着してどれだけ貢献できるか、喜びを分かちあえるかということです。「横浜トヨペットあるいはウエインズグループがずっと支えてきて、成長してきたね。そして、次に購入しようと思っている車に迷ったら、横浜トヨペットのお店に行ってみようかという関係になれたらうれしいですし、我々の社員の活力にもなると考えています。仕事中はスポーツの映像を流さないのですが、ビー・コルセアーズの試合だけはメインのフロアでテレビをつけています。勝てば喜びを分かち合いますし、会社の一つの結束にもつながる大切なことなのかなと考えています。

——新型コロナウイルスの影響もあり、例年通りの試合運営ができなくなっています。その中でもスポンサーとリーグ、クラブとタッグを組んでビジネス的にもメリットを生み出すことも大切だと思います。
宮原 ファンがあってのスポーツですし、これからファンがどんどん増えていけば、結果としてビジネスの部分でももっと成長できると思います。Bリーグは5シーズン目に入るところですが、これからも大きくなっていくでしょう。今、八村塁選手(ワシントン・ウィザーズ)や渡邊雄太選手(メンフィス・グリズリーズ)という世界に通用する選手が出てきたことも国内のバスケットボールにとっても追い風になるのではないでしょうか。今度は日本代表がチームとして世界に通用するようになればなお盛り上がるだろうなと思います。

——今後ビー・コルセアーズに期待するものは何ですか?
宮原 根強いファンに支えられているクラブなので、それを維持しながら、あとはさらにチームを強くしていくにはどうしたらいいのか、それを実践していくのもポイントだと思います。ファンが増えてくれば収入も増えるのはもちろん、選手も良い意味での緊張感、エネルギーが出てくると思います。タクシーに乗ったときなど、運転手さんに「ビー・コルセアーズ知ってますか?」と聞いているのですが、まだまだ知らない方がいらっしゃるんですね。そういった皆さんに知ってもらえるようにしていくのも我々の役目ですから、陰でサポートすることでクラブも強くなっていってほしいと思います。横浜に愛される、地元とともに成長するクラブになっていってほしいですし、そうなればもっと大きなアリーナが必要だよね、というようなムーブメントが起きるかもしれません。そうすれば、もっと多くのファンが楽しめるようになりますから、どんどん夢が広がっていきますね。

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