2020.10.02

“準備はいいか?”JBA審判グループに聞く!(前編)『コロナ禍の中で開幕する新シーズンへの準備は?』

コロナの影響はチームや選手だけでなくレフェリーにとっても同様だ [写真]=B.LEAGUE
バスケットボールコメンテーター

 今シーズンのBリーグ開幕テーマは次のようにある。

「準備はいいか?」
盛り上がる準備はできているか? 興奮する、熱狂する準備はできているか? 10月2日に、B.LEAGUEがいよいよ開幕します。皆さまに感謝を込めて、ワクワクするような時間を届けられるようにという想いが込められています。(Bリーグ発表より抜粋)

 なるほど! 興奮する、熱狂するにも準備が必要なことは間違ない!そこで今回はBリーグ開幕が待ちきれない皆さまに、正しく興奮と熱狂するには重要な要素である、新ルール変更点について、JBA審判グループのお2人にインタビューした。新型コロナウイルスに関する審判サイドの対策も含めて前後半に分けてお伝えする。

取材・文=井口基史

取材協力

上田篤拓日本バスケットボール協会 審判グループ シニア・テクニカル・エキスパート)
静岡県出身。bjリーグのプロレフェリー時代にはNBAレフェリーを目指し、日本人としては初となるNBAサマーリーグにてレフェリングを経験した。現在はJBA審判グループ シニア・テクニカル・エキスパートと国際バスケットボール連盟(FIBA)レフェリーインストラクターを務める。

高森英樹日本バスケットボール協会 審判グループ アシスタントマネージャー)
神奈川県出身。新潟アルビレックスBBにて通訳~強化部まで13シーズンに渡り従事。現在はプロチーム所属経験を活かし、JBA審判グループにて審判派遣、研修などの運営を担当し、コートの外から全カテゴリーのバスケットボールを支える。

いつもと違いオフでも新シーズンに向けての準備は怠ることはできない

――まず昨シーズンの新型コロナの影響によるシーズン中止から、いよいよBリーグ新シーズンがスタートします。お二人の今の気持ちをお聞かせください。
上田
 世界的にコロナの影響が広がる中、本当にトップリーグが再開できるのか、という不安は皆さん同じだったと思います。ただこうしてトップリーグが再開する過程には、たくさんの方々の協力のおかげで実現するわけですので、本当に感謝したいです。審判グループだけでなく、ファンの方々、各クラブとリーグオフィス、パートナー、メディアの皆さんと共にバスケットボールに取り組むことができる、特別なシーズンが始まると実感しています。観客数など制限はありながらも、こういう時だからこそ「バスケを通じて元気をもらえた」と言ってもらえるようなシーズンにしようとレフェリー全体でも話しています。

高森 新シーズンは正直ドキドキしていますが、開幕に向けてリーグオフィスと共に様々な対策に取り組んできました。特にレフェリーをはじめ、テーブルオフィシャルのスタッフの皆さんはそれぞれ仕事があり、家庭を持つなど様々な環境にいますので、その中で最大限の協力を得て取り組んできました。特に我々は全国のレフェリーと向き合っていますので、できるだけ同じ温度でいるように心がけましたし、開幕後もコミュニケーションを続けていきたいと思います。バスケットボールを動かしていく。良いゲームをたくさんの方に楽しんでもらえるように、JBA、リーグオフィス共に進んでいきたいと考えています。

――今シーズンは長いオフになったと思いますが、ファン・ブースターが知る機会の少ない、レフェリーや審判グループのオフの過ごし方を教えてください。
高森
 まず日本には(9月25日)現在JBA公認ライセンス登録者が約51,000人いらっしゃいます。そのうちS級という、トップリーグを担当できるレフェリーは153名という、わずか0.3%という非常に狭き門です。そのなかの148名が今シーズンBリーグ・Wリーグのゲームを担当予定ですので、今回はS級のレフェリーについての紹介という点をご理解ください。

 通常のオフは、所属都道府県や全国大会でのレフェリングや、FIBAレフェリー有資格者は国際大会で海外経験を積む時期ですが、今シーズンはそういった活動は出来ませんでした。またプレシーズンゲームも例年8月初旬から派遣依頼をいただいていたのが8月末からにずれ込みましたので、そのあたりが本格的にレフェリーも活動再開された時期になるかと思います。

 それまでの期間も、従来は集合して行っていた研修はできませんので、オンラインで開催しつつ、コロナ環境下でもトップリーグを担当する意思を表明してくださり、職場や家族の承諾を得るなど環境を整えることのできたレフェリーに、Bリーグのガイドラインに沿った対応とPCR検査を実施するプロセスを行いました。

――なるほど選手と同様限られた環境下で準備が進んでいたのですね。いつもと違うオフはコンディションなどの準備は難しかったと言えますか?
上田
 そうですね。オフはレフェリーもそれぞれトレーニングやコンディショニングに取り組む時期ですが、コロナの中でトレーニング施設に行ってもいいのか?など地域によっては難しいエリアもあり、厳しいオフだったことは想像できます。またトップリーグ担当レフェリーは、各都道府県協会に属していますので、インターハイや国体など、彼らの経験を地元協会に還元する、共有することは非常に大切なのですが、そういうことも限定的になりました。

 コート外で言うと、シーズン中はほぼ毎週金曜から移動して土日のゲームをこなし場合によっては水曜の試合も担当いただいていますので、職場や家族など、どこかに負担や協力をもらいながら活動している方がほぼ全員です。そのためオフ期こそ普段できない職場の仲間を手伝ったり、カバーしたりとか、家族サービスにあてるなど、長いシーズンを迎えるための環境作りも大事な過ごし方なのです。

――そういうコート外の部分は、なかなか知る機会のない一面ですので、貴重な機会です。
上田
 そうですね。ほぼ全員が月~金曜まで仕事を持ち取り組んでいます。平日は仕事が終わった夜に映像でスカウティングをし、ゲーム前は職場に早退や休みをいただくケースもあると思います。またいつ呼ばれても対応できるように、有休もできるだけレフェリー活動のためにとっておく対応が多いため、オフはある意味シーズン準備に全て使っていると思います。


この機会にトップリーグレフェリー活動を紹介した映像もチェックしてほしい

――コロナ対策としてファン・ブースターも知れる部分があれば教えてください。
高森
 これまでレフェリーの担当カードは、平日ゲームを除いて原則所属都道府県協会エリアのゲームを担当しないスケジュールを組む対応をしてきましたが、今シーズンは移動による感染リスクの回避を優先しています。日常ではアプリによる体調管理を行い、万が一の体調不良でもいち早く把握し、担当カードをすぐカバーできるように連携しています。また選手同様にPCR検査も決められたスケジュールで実施しています。
現場レベルではゲーム前後に集合して行う映像ミーティングも、オンラインやテレカンに切り替える対応を取りました。通常時はレフェリーを評価するためにインストラクターを試合に派遣していましたが、コチラも現場ではなく試合映像による評価に切り替えました。

上田 ファンの方がすぐ見て取れる対策ですと、ゲーム前のマスク着用と飛沫防止対策のためにホイッスルにはカバーを付ける対応を行いました。またゲーム前に行ってきたキャプテンミーティングは、安全を優先する判断があり、行わないことになりました。貴重なコミュニケーションと、両チームのリスペクトを伝える場であることは間違いありませんが、現時点では健康と安全を優先しようという考えです。

――なるほど。対策はコート内外の多岐にわたっているのですね。うーんディープな内容なので、これはドキュメンタリーで追いかけるべきだった&動画インタビューの方がブースターには喜ばれたような気がしますね…。

使用するホイッスルにまで飛沫防止対策はおよぶ。現在はトップリーグのみだが今後普及していきそうだ


※後編に続く

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