「B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18」クォーターファイナル、最も注目されたカードでもあった千葉ジェッツと川崎ブレイブサンダースの一戦。5月13日、5108名という超満員の船橋アリーナで両者は自分たちの力を出しきって戦った。アリーナは千葉の「赤」と川崎の「白」の2色で埋め尽くされ、その光景はまるでファイナルを思わせるような雰囲気だった。
第2戦での勝利が絶対条件の川崎は、司令塔をアグレッシブなプレーが持ち味の藤井祐眞に変更して勝負に出る。彼がドライブで相手ディフェンスを切り裂くと、ジョシュ・デービスも同じようにリングにアタックするプレーでチームを鼓舞し、65-87で敗れた第1戦とは見違えるようなゲームを展開。自分たちの良さを序盤から見せつければ、負けじと千葉も前日同様にギャビン・エドワーズとマイケル・パーカーが好調ぶりを見せ、第1クォーターは同点で終了した。
勝負の分かれ目は、第2クォーターにあった。持ち味の激しいディフェンスでリズムをつかむ川崎は相手にスコアを全く与えない。オフェンスでも縦にアタックすることで、エース、ニック・ファジーカスの周りにスペースができ、彼の良さが出てくる。どんな体勢でも確実にスコアを決めて点差を広げ、前半を38-32と6点リードで折り返した。
後半はこの点差がなかなか縮まらない。我慢比べの展開で川崎はコートに立ったファジーカスと外国籍選手2人がそれぞれの持ち味を出し、相手の追いあげを阻止。第3クォーターのラストでは栗原貴宏が富樫勇樹のドライブを懸命に阻止し、そのボールを受けた藤井がロング3ポイントシュートを決め、川崎ベンチとその後ろにいた、真っ白になったエリアは大盛りあがりを見せた。
川崎の9点リードで迎えた第4クォーターは、互いにスコアをなかなか追加することができないディフェンシブな展開。その中でもファジーカスが要所でシュート決め、千葉にダメージを与えていく。千葉は第1戦で好調だった3ポイントシュートが、相手のディフェンスの鋭さにより封じこめられた。このまま逃げきった川崎が71-61で第2戦を制し、すべてが決まる運命の第3戦へと進んだ。
20分間の休憩を挟んでスタートした第3戦。お互いの意地がぶつかり合う緊張感溢れるゲームの中で、勝負の分かれ目となったのがスタミナだったことは間違いない。第2戦に全力でぶつかった川崎の選手たちの足がうまくディフェンスで動かず、相手にほんの小さなスペースを与えた。その隙を千葉は見逃さず、前半残り1分50秒、ショットクロックギリギリで石井講祐が2ポイントシュート。決まった瞬間、赤く染まったアリーナが揺れ、ここから相手を一気に突き放した。
千葉リードの14-6で迎えた後半、川崎も最後の意地を見せる。藤井の3本のフリースローとファジーカスへの見事なアシストで追いあげ、開始40秒で3点差。しかし、レオ・ライオンズが相手のパスを完璧に読みきった見事なスティールを決めて、再びゲームは千葉の流れに。その中でエースの富樫勇樹が、残り24秒で相手のブロックを越えるフローターシュートを確実に決めた。
千葉の3点リードで迎えた残り8.9秒、同点を狙う川崎の藤井が放った3ポイントシュートがリングに弾かれ、そのリバウンドを千葉がしっかりと保持して勝負あり。最終的には22-15でホームの千葉がセミファイナル進出を決定した。
死闘を制した千葉の大野篤志ヘッドコーチは「勝因は勝ちたいという気持ちが上回り、そしてチームでタフにプレーしようとしたこと。ホームじゃなかったら負けていた。それくらいファンの大声援に後押しされた。セミファイナルに向けての準備はこれから。ファン、ブースターのためにもしっかりとしたいいゲームをしていきたい」と、興奮した様子でゲーム後に語った。一方、敗戦を喫した川崎の北卓也HCは「選手は素晴らしいプレーをして、タフによく戦った。第2戦でプレーイングタイムを分散できず、第3戦で疲労の色が少し見えていた。分散できなかったのは、私の責任。本当に勝ちたかったし、東芝としてのラストシーズンで有終の美を飾りたかった」と悔しい表情を見せた。
クォーターファイナル大注目のシリーズを制した千葉。次に迎え撃つのは最強のディフェンスチーム、琉球ゴールデンキングスに決定した。最大限のホームコートアドバンテージを受け、いかにディフェンスで我慢して、ほんの小さなチャンスをものにできるかが勝負の分かれ目となるだろう。
文=鳴神富一