Bリーグ2シーズン目の最後を飾るにふさわしい、紙一重の大激戦だった。5月27日に横浜アリーナで行われた「B1・B2入替戦2017-18」、スコアは88-85。富山グラウジーズがやっとの思いでB1残留を勝ち取り、熊本ヴォルターズがつかみかけていたB1昇格の願いは成就しなかった。
第1クォーターに熊本が一時7点をリードしたが、第2クォーター以降は6点以上の差がついたことはなかった。第4クォーターに限れば、結果的に富山は開始19秒で追いついてから一度もリードを許さなかったものの、4点差がついたのが残り21秒からの14秒間のみで、その他の時間帯はすべて3点差以内。熊本にとっては、常に1回のポゼッションで同点あるいは逆転を狙える状況だった。
富山の大黒柱である宇都直輝が「ちょっとでも気を抜いていたら間違いなく負けていた」と振り返ったように、どう転んでもおかしくない試合内容。裏を返せば、高い集中力を40分間持続させなければならないほど、富山にとって熊本は難しい相手だったということだ。熊本を率いた保田尭之ヘッドコーチも「富山は降格圏内に入るようなチームではないと思っている。そんなチームに対して全く引けを取らないゲーム展開を演じて、最後の最後までチャンスを見せてくれた選手たちを心から誇りに思う」と胸を張った。
昨季B2から入替戦に出場した広島ドラゴンフライズは、横浜ビー・コルセアーズに地力の差を見せつけられた。そのことを考えれば、その広島の後塵を拝してプレーオフにも進めなかった熊本にとって、入替戦でB1クラブに3点差まで肉薄したという事実は大きくステップアップした何よりの証になったはずだ。
チームの顔である小林慎太郎も「あの(熊本)地震以降、僕たちは厳しい境遇に立たされたが、みんなの力を合わせることの重要性を震災から学んだ。もちろん昨シーズンもチームは一つになれたが、そこからもう1ステップ上のクオリティーで団結できた。そのことを誇りに思うし、仲間に感謝したい」と、チームが着実に階段を上っていることを強く感じている。
「この2年でチームは大きく成長して、それをファンの皆さんが支えてきてくれた。その人たちのためにも、来季はできるだけ早い段階で(B1昇格を)見せないといけないという宿命的なものを感じている」と力強く語ったのは保田HC。さらなるステップアップを期する熊本の戦いはすでに始まっている。
文=吉川哲彦