試合前にはBリーグの大河正明チェアマンから優勝リングが贈呈されるなど、華やかな雰囲気の中で始まったアルバルク東京の開幕戦。しかし、その雰囲気を吹き飛ばしたのがティップオフ直後からサンロッカーズ渋谷が見せたプレッシャーディフェンスだった。さらに今シーズンから加入のライアン・ケリーが両チーム最多の28得点をあげる大活躍を見せ、試合の行方は最後の最後まで分からない大接戦となった。
タイのバンコクで開催されたFIBAアジアチャンピオンズカップ2018では6日間で5試合という強行スケジュールをこなし、10月3日に帰国したA東京。昨シーズンのSR渋谷との対戦成績は4勝2敗と優位ではあったが、体だけでなくメンタルにも疲労が残る中での試合であったことも、試合がもつれた大きな要因だろう。
しかし、それ以上にA東京を苦しめたのがSR渋谷のビッグラインアップだ。211センチのケリーをスモールフォワードに配し、満原優樹と滋賀から移籍のファイサンバをパワーフォワードに、そしてロバート・サクレをセンターに置くSR渋谷の布陣が牙をむいた。
52-49と3点リードで迎えた最終クォーター、A東京は安藤誓哉と馬場雄大がドライブを決めて抜け出したかに見えた。ただし、安定したディフェンスを見せるSR渋谷は決定打を許さない。反対にケリーがオフェンスリバウンドをねじ込むと、残り時間1分25秒、ベンドラメ礼生が渾身の3ポイントを決めて逆転に成功する。この大事な場面でA東京はアレックス・カークが7連続得点を決めるパフォーマンスを見せ、何とかSR渋谷を振り切り、開幕戦を勝利で終えることができた。
記者会見に現れたルカ・パブチェビッチヘッドコーチは「この厳しい状況の中、よく戦った」と開口一番、選手たちをねぎらった。残り時間が1分を切った場面で、ポイントガードをベンチに下げ、田中、馬場、ザック・バランスキー、竹内譲次、カークというラインアップを繰り出したことに質問が及ぶと、「渋谷の高さに対抗するため。ケリーが入ったことで飛躍的にサイズアップしていたので、この場面、ディフェンスリバウドが重要になると思い、サイズで負けないようにした」と、その理由を明かしている。
オフの間も田中、馬場、竹内という主力が代表活動に専念していたため、フルメンバーで練習できた時間はほとんどなかった。それでも勝利を得たのは「(優勝した)昨シーズンの土台があったから。そこで何とかしのいだ試合だ。チームの完成度はまだ40%。これからシーズンを通して練習と試合で培っていく。厳しい状況は続くがここを乗り切りたい」。ルカHCには安どの表情がのぞいていた。
一方敗れたとはいえ、SR渋谷の勝久ジェフリーヘッドコーチは、新メンバーで迎えた初のリーグ戦で手ごたえを得たようだ。
勝久HCは「ビッグラインアップをベースに、今シーズンはいろいろな戦い方ができると思う。それにはスターターだけでなく、ベンチメンバーもいつでも試合に出られるマインドが準備できれば楽しみだと言える」とコメント。「それには私たちスタッフも勉強しなければいけないことが多いのも事実。何が一番効果的なのか見極めていきたい」と課題にも言及。
激しい戦いを終えて、翌日にはまだ試合が組まれている。「チームとして40分間戦いたい。今日見せてくれた強いインテンシティを発揮してほしい」と、明日へ期待を込めた。
文=入江美紀雄