2018.11.09
昨シーズンはBリーグ新人賞を獲得し、22歳ながら日本代表としても活躍する馬場雄大(アルバルク東京)。現在23歳で11月公開予定の映画『走れ!T校バスケット部』では主演を務める期待の若手俳優・志尊淳氏。プロバスケット選手と俳優、フィールドは違えど、ともに1995年生まれという共通点を持つ同世代2人の対談がこの度実現した。若手らしく勢いよく最前線を走る両者に、互いの相違点やそれぞれがプロとして大切にしていることなどを語ってもらった。
インタビュー=小沼克年
写真=山口剛生
取材協力=スポーツナビ
――志尊さんは、9月17日に日本代表がイランと戦った「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区 2次予選(Window4)」の結果をご存知ですか?
志尊 はい。勝ってTwitterですごく盛りあがっているのを拝見しました。イランって強いんですか?
馬場 アジアでは強いです。日本はここ最近でほぼ勝てていなくて、ワールドカップの予選でやっと勝ったという感じです。
志尊 なるほど!馬場選手って今おいくつなんですか?
馬場 1995年生まれです。
志尊 お、早生まれですか?
馬場 いや、普通の……。今22歳です。
志尊 じゃあ(僕の)一個下だ。
――志尊さんが早生まれの3月生まれで、馬場選手が11月生まれです。
志尊 ほぼ同い年ですね。何歳からプロをやっているんですか?
馬場 僕は結構特殊だったんですよ。大学4年生の途中からアルバルク東京に入団してプロになりました。だから、今シーズンで2年目です。
志尊 バスケを始めたのは小学校からですか?
馬場 小学校1年生からバスケをやってます。
志尊 中学は推薦入学で……?
馬場 中学は地元の強いところに進学して、高校は父が指導者をしていた学校に行かせてもらいました。
――お父様もバスケの選手をされていたんですよね?
馬場 一応日本代表でやらせてもらっていたみたいです。
志尊 今もお父様はバスケをされているんですか?
馬場 僕の母校でもある富山第一高校の監督をしています。
志尊 そうなんですね!馬場選手の試合をお父さんが見て、何か言われることはあるんですか?
馬場 調子が悪いと言われることはあるんですけど、基本は「プロになったら自分で考えろ」みたいな感じです。その方がやりやすいですね。
――高校の3年間はお父さんが監督で、家に戻ってもいらっしゃるという環境は大変だったのではないですか?
馬場 オンオフが無いし、父も僕しか怒らないわけですよ。自分の息子だから。それで、ギクシャクしたまま家に帰るんですけど、その空間がキツくて散歩とか行ってました(笑)。
志尊 それキツいですね……。でもバスケは好きだったんですよね?
馬場 辞めようと思ったことは全然ないですね。
――志尊さんも、映画の撮影前にバスケットの練習をじっくりされたそうですが、実際プレーしてみていかがでしたか?
志尊 めっちゃキツかったですよ!僕、ずっと野球をやっていて、こんなことを言ったら怒られるかもしれないけど野球より全然キツかったです(笑)。バスケはずっと全速力で走っているじゃないですか?野球は力を入れるときもあるけれど、緩急があるんですよ。
馬場 練習というのはずっとゲーム形式でやられていたんですか?
志尊 手が決まっていて、その手を覚えながらという感じです。でもガードポジションで劣勢になっている場面を撮るとなったら走りっぱなしですし、広い絵画で撮っていたので、もう……(笑)。指導は元日本代表の半田(圭史)さんという方に教えてもらったんですけど、すごく優しく教えて頂きました。
――馬場選手が今まで一番緊張した試合はいつですか?
馬場 僕自身は「緊張する」って言ってるんですけど、周りの人からは「お前全然緊張していない」って言われるんです。
志尊 そういう風には見えないかもしれない。堂々とされているからかな?
馬場 プレーも思いきりが自分の強みなので、それが徐々に出てきてリズムに乗ってくると緊張は忘れちゃうという感じですね。なので、そんなに「(試合の)入りで緊張した」という試合はここ最近ないですね。
志尊 スポーツだと最初に緊張していても、身体を動かさないといけないから緊張している場合じゃないですよね?
馬場 緊張している間に試合が終わってたら話にならないので、緊張しても最初の2、3分ですね。
――志尊さん、『走れ!T校バスケット部』も高校のバスケ部の映画ですが、どういう映画なのか紹介をお願いします。
志尊 簡単に説明すると、弱小チームに元名門校のエースが入部して、そこから全国大会を目指して雑草魂で駆けあがっていくというストーリーです。それだけ聞くと表面的に、単なるドラマや映画のストーリーの中で繰り広げられているものと受け取られやすいんですけど、実話をもとにした話ですし、空気感もリアリティを追求しています。なので、今バスケをしている人にはぜひ見て頂きたいです。「諦めない」という部分で、綺麗ごとと思われるかもしれないですけど、新しい形がある。それぞれがバスケを辞めた後の話も描かれていて、引退後もバスケをやっている人は1人か2人なんですよ。でも部活中に一生懸命努めていたものが、その後の人生に活かされる部分があるという青春が描かれています。
――馬場選手が高校3年間の記憶で強く「残っている」、「活きている」ことはどういう部分ですか?
馬場 試合に対して懸ける気持ちは当時も今も変わらないんですけど、プレーについては高校のときに色んなポジションをやらせてもらいました。父にも「将来、絶対必要になってくる」と言われて。その経験はプロになって活きているかなというのはすごく感じます。
――映画を見に行くことはあるんですか?
馬場 バスケだけだと気が滅入ってしまうので、気分転換だったり他の刺激が欲しくなることはあります。そういうときは一人映画とかもしますね。
――気づかれたりしませんか?
馬場 気にしても仕方ないと思うので、声をかけられたら対応しますけれど、特別なことはしていないです。
志尊 すぐ気づかれそうですよね?
馬場 身長がこれ(198センチ)なんで……。
志尊・馬場 隠せない(笑)。
――志尊さんが俳優業をやっていく上で大事にしていることは何ですか?
志尊 僕らは発信する側なので、もちろん役を生きるとか血を通わせるというのは当たり前のことなんですけど、発信者として間違った表現をしないことを心がけています。最近だと性的マイノリティの役をやらせて頂いたんですけど、マイノリティと呼ばれている方がたくさんいる中で、役でその方たちを代表するものを背負うわけです。違う見られ方、間違った発信をしてしまうと皆さんをぞんざいにしてしまうことになりますし、失礼なのでそこは責任を持ってやろうと意識しています。
――馬場選手も「見られる立場」という部分は同じです。
馬場 プロ選手として、多くの方から見られている立場なので、行動や発言には気をつけないといけません。応援してもらっているからには自覚と責任を持ってコートに立ちたいと思いますし、それなりの心の持ち方も必要です。それはどの世界でも共通して言えることかなと感じています。
――ありがとうございます。最後にそれぞれの今後の目標を聞かせてください。
志尊 僕は昔からあまり明確な目標というものを決めず、それよりも自分が大切にしているのは今頂いているお仕事、役柄を全力で生きることが使命だと思っています。先のことより今のことを考えて、その延長線上で評価を頂いて、仕事を下さる方々がいて、表現者としての色を付けて下さればいいと思っています。これからも自分にできることを全力でやっていけたらなと思います。
馬場 僕も「今を全力で生きる」ということは志尊さんと変わりがないんですけど、それは大きな夢に向かってという理由があります。「日本にバスケットボールを広めるため」という漠然とした夢を持っていて、それを達成するためには個人的にも結果を出して有名になって、いつかはNBA選手になろうと思って日々がんばっています。でも、そのためには先を見るだけでなく、今を全力で生きる必要があると思っているので、今与えられた環境でいかに全力を尽くすかを考えています。
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