滋賀レイクスターズには今シーズン、副キャプテンに指名された伊藤大司、ビッグマンの荒尾岳、新外国籍選手のガニ・ラワルら7選手が新たに加わった。大幅なリニューアルを図ったが、そのうち5選手が30代。伊藤は、経験値が高くやるべきことを理解している選手が多いため「すごくやりやすい」と話す。
10月6、7日の開幕節では新潟アルビレックスBBに第1戦で敗れ(73-78)、第2戦でリベンジ(75-71)。同様に川崎ブレイブサンダース相手にも第2戦で勝ち星を取り返した(第1戦64-76、第2戦80-68)。ベテランが多いチームらしく、ここまでは修正力の高さを発揮しているが、川崎戦での勝利は出来過ぎにも見えた。
伊藤は勝因をこう分析する。「昨日(10月12日、第1戦の敗戦)と違って、今日は第1クォーターで相手の失点を抑え、そのディフェンスを我慢して最後まで続けられたことが良かった」。第1戦では第1クォーターを6失点に抑えるも、第2クォーター以降はすべて20点以上を許し、逆転負けを喫した。しかし、この日は第1クォーターを10点に抑え、第2クォーターで盛り返されるも、後半を計34失点で乗りきった。結果について「ビッグクラブに勝てるのはめちゃくちゃうれしい」と満面の笑みを見せた。
伊藤自身もビッグクラブ出身だ。2010年にアルバルク東京の前身にあたるトヨタ自動車に加入し2017年まで所属。昨シーズンはレバンガ北海道でプレーし、今シーズンから滋賀に籍を置く。その実績、実力はショーン・デニスヘッドコーチからも高く評価され、伊藤によると加入後に「アツい話」をしたそうで、滋賀では日本語と英語の両方を話せる強みを活かし、「ショーンHCがどういうバスケットをしたいかをしっかり伝えていく」というミッションを自らに課している。
この日は第2クォーターに滋賀ファンを沸かせた。残り1分37秒、自身2本目となる3ポイントシュートを決め、滋賀が33-31と再びリード。残り59秒には、速攻の場面からラワルのアリウープをアシストし、さらに24秒後に相手のパスをインターセプトしてファストブレイクをお膳立て。2点ビハインドの状況から一気に6点リードと、快進撃を演出した。
31歳のベテランとして、チームを引っ張っていく意思は強い。「僕の経験を伝えていきたい。どういうメンタリティだと試合に勝てるのか、練習にはどう取り組むべきか、そういうことを伝えるのが僕の役割。(竹内)譲次さんや(田中)大貴(ともにA東京)といったスター選手とプレーして得たことをシェアするのも重要な仕事」。“ビッグクラブのマインド”を注入すべく、積極的に声掛けもする。「外国籍選手とも話せるし、乗せ方も知っている。うまくいかない時の声掛けは気をつけながらも、思ったことは全部言っていくつもり」。それが選手の、そしてチームの成長につながると考えているからだ。
プレー面において、特に意識しているのは「チームメートがどれだけ気持ち良くプレーできるか」。得点源になる選手がボールを欲していれば、その選手のためにプレーを組み立て、調子の良い選手がいればその選手にボールを預け、チームを勢いに乗せる。いいプレーをしたら「チヤホヤして、その選手を“ゾーン”に入れる」。「僕とプレーしたら気持ち良くなれると思ってほしいし、精神的な支えになりたい。メンタル面でもリーダーになれればと思っている」
では、滋賀は今後もビッグクラブと対等に戦えるのか。伊藤は「今はまだそのレベルにはない。昨日のような試合をやっていてはアルバルクには歯が立たない」と見ている。ただし、こうも話した。「シーズンをとおして戦う中で、強豪ともわたり合える力が付いてくる」。そうなるためには何が必要なのか。「責任感とプライド。リバウンドを絶対に取る、コーチの指示を絶対に守るといった責任感。こいつには負けない、こいつを倒して日本代表に入るといったプライド。まずはそういう気持ちが必要になる」
川崎に勝ったとはいえ、4試合を終えて2勝2敗。まだその力量を推し量ることはできない。しかし、伊藤は確かな手応えを感じている。「今日はチームメートから責任感やプライドを感じた。だから大事な場面でリバウンドが取れたし、ルーズボールも取れた。第4クォーターで、気を付けなくてはいけない辻(直人)選手に3ポイントを打たせなかったのは(マッチアップした高橋)耕陽の責任感でありプライド。それを全員ができれば上のレベルで戦える」。次節以降は大阪エヴェッサ、横浜ビー・コルセアーズ、名古屋ダイヤモンドドルフィンズといった中堅クラスとのゲームが続く。2年連続で残留争いに巻きこまれた滋賀が躍進できるかは、この序盤戦で連勝を飾れるかが一つの指標となりそうだ。
文=安田勇斗