10月13日、ブレックスアリーナ宇都宮に4000人以上の大観衆を集めた、B1リーグ第2節第2戦の栃木ブレックスと富山グラウジーズの一戦。前日の大差がついた内容から一変し、最後の最後までどちらに勝利が転がりこむかわからないスリリングな展開でゲームは進んでいった。
富山は前日の反省からエナジー溢れるプレッシャーの激しいディフェンスを序盤から披露。前半は相手の得点を33点に抑え、リバウンドでもゴール下の番人であるジョシュア・スミスを中心にしっかりと確保をしてゲームを優位に進めていく。しかし、オフェンスでは第1クォーターでターンオーバーを7個犯すなど相手を突き放すことができず、これがゲーム展開に大きく響く結果となった。一方の栃木は相手ディフェンスのプレッシャーにオフェンスが重くなり気持ち良くプレーさせてもらえない。さらには相手のファウルで得たフリースローをなかなか決められずイライラするような展開になったが、持ち味でもある連動性のあるチームディフェンスで我慢し続け、流れをつかむチャンスを虎視眈々と狙っていた。
前半を33-36と富山リードで折り返した第3クォーター、中盤が過ぎたところまでは一進一退の攻防が繰り広げられる。ゲームの展開はさらにスピードを増し、得点の取り合いの様子を呈した。栃木はこの日15得点9アシストと活躍を見せた田臥勇太が素晴らしい判断能力でチームをコントロールし、様々なパターンで得点を重ねていく。一方の富山はともに19得点を挙げたスミスとレオ・ライオンズの両外国籍選手を中心にオフェンスを展開。スミスのゴール下での強さ、ライオンズのオフェンスでの決定力で応戦した。しかし、残り時間3分半を切って栃木が一気に猛攻を仕掛ける。チームでのボールムーブメント、そして早い展開でのオフェンスで突き放し、栃木が逆転して12点リードで最後の10分間に突入した。
第4クォーターは富山が素晴らしいディフェンスで相手を圧倒し、一気に追いあげを見せる。オフェンスでは果敢にリングにアタックを仕掛け、相手ディフェンスを翻弄。点差は見る見るうちに縮まり、残り1分35秒にはライオンズのドライブからの得点で再逆転を果たす。しかし、すぐさまライアン・ロシターの3ポイントシュートで再度ゲームをひっくり返した栃木。ファンの声援がさらに増し、アリーナの雰囲気が一気に変わった中、渡邉裕規が2連続でクラッチシュートを決め、ディフェンスでも相手にスコアを与えずに勝負あり。最後は“ナベタイム”で決着がつき、85-80でホームの栃木が開幕からの連勝を「4」に伸ばしたゲームとなった。
一進一退の勝負を決めたポイントは、ターンオーバーと40分間の継続性であった。
ターンオーバーの数が栃木4個に対して富山は12個。ターンオーバーから奪った得点が、栃木18得点に対して富山7点となり、ここで差が開いた。富山のドナルド・ベックヘッドコーチは「今日は昨日よりも選手たちの気持ちが伝わってくるゲームだった。自分たちのバスケットを正確にプレーしていたし、リバウンドの優位性があった部分は満足している。ただ、ターンオーバーで自滅してしまった。この2連戦は自分たちがステップアップするいい機会だったし、ここから経験を積んでチームとして成長していきたい」とゲームを振り返りながら、自分たちのミスを悔やんだ。
そして、40分間我慢をし続け、自分たちのやるべきバスケットを貫いた栃木。ファストブレイクポイントが栃木21得点に対して富山が8得点と、激しいディフェンスから早い展開のバスケットを貫いた結果がこの数字で証明されている。
栃木の安齋竜三HCは「難しい試合になると試合前から思っていた。相手がディフェンスから激しくプレッシャーを掛けてきた中で前半は重い展開になってしまった。第3クォーターになって走り合いながらも得点の取り合いになって、それでもいいからどんどん走って自分たちが体力的に有利になればいいかなという展開に持ちこめた。それが終盤の攻守につながったかなと感じている。本当に選手たちが強いチームに対して2日間ともしっかりとチームルールを守って、激しくディフェンスしてくれた」とコメントした。
少しの差が勝敗を分けるのがバスケットボール。それを改めて感じたゲームとなった。
文=鳴神富一