2020.06.03
半年前にインタビューをした時はどこか自信がなさそうだった。同期の馬場雄大(アルバルク東京)や青木保憲がすでに名を知られる存在だったこともあり、引け目を感じているようにも見えた。実際、そういう言葉も口にしていた。
それが自信溢れる、フレッシュな若手プレーヤーに変貌した。林翔太郎は10月12日の滋賀レイクスターズ戦で2本の3ポイントを含む12得点、逆転勝利の立役者となった。翌13日の滋賀との再戦では、前日ほどの活躍ができず、チームも敗れてしまったが、確実に存在感は示した。
試合後の第一声は反省だった。「流れを変えるために出ているのに、自分のミスもあって悪い流れにしてしまった」。これも試合に出ているからこそ、発することのできた言葉だ。この日は15分57秒の出場で3得点1アシスト2リバウンド。やや物足りない数字ではあるが、勝負の第4クォーターでコートに立っていたことからも、チーム内における立場は変わってきている。
もっとも、昨シーズンの“セカンドユニット”の一人、谷口光貴の負傷離脱の影響もあって手にしたチャンスでもあり、まだポジションを確立したわけではない。その危機感は本人も持っている。「川崎はディフェンスのチーム。継続的に出場するにはしっかりとディフェンスができないといけない。その上で持ち味であるシュートやドライブでアピールしていきたい」
第2クォーター残り5分19秒、「今日もいいシュートタッチで打てた」というこの日唯一のシュートであり、25-25の同点弾となった3ポイントシュートは鮮やかな放物線を描いてネットに吸いこまれた。第3クォーター残り58秒、ドライブからのニック・ファジーカスへのアシストは「その前のタイムアウトで北(卓也ヘッドコーチ)さんから指示された形。そのとおりにできた」。堂々としたプレーを見せ、この試合でもまずまずの働きを見せた。
もう気後れはない。今年1月に特別指定選手としてチームに加わり、今シーズン正式加入。最初は「(篠山)竜青さんや辻(直人)さんにボールを回した方が、という気持ちがあった。でもやっていくうちに、自分が必要とされて出させてもらっていると感じるようになり、少しずつ持ち味を発揮できるようになった」。周りのアドバイスも大きかった。「北さんや(佐藤)賢次(アシスタントコーチ)さんから積極的に行くよう声を掛けてもらった。それと自分の中で一番大きかったのは数日前に言われた竜青さんの言葉。『お前の得意なプレーをどんどんやっていけ。ハセ(長谷川技)とは違う持ち味があるんだから、それを出せばいい』と言われ、気持ちが変わった」
東海大学九州の一つ上の先輩で、昨シーズン川崎に在籍していた小澤智将(広島ドラゴンフライズ)の活躍も刺激になっている。話を振ると、途端に笑顔になった。「小澤さんにはいつもご飯に連れて行ってもらっていた。すごく仲が良くて、先輩というより友達に近い存在」。前日の試合後にはLINEで激励のメッセージをもらい、また林自身も広島の試合を見て、それが励みになっているという。「小澤さんのプレーを見て、負けられないなという思いもある」
林は身長195センチの長身シューターで身体能力も高く、開幕前のアーリーカップ2018関東、横浜ビー・コルセアーズ戦ではダンクも見せた。高校時代にできるようになり、大学では「普通にできるようになった」。さらに「川崎に来て、ストレングスコーチの指導や自主練習のおかげでもっと高く飛べるようになった。チャンスがあれば狙っていきたい」
今シーズンここまで全4試合に出場、滋賀戦は開幕節の千葉ジェッツ戦よりもプレータイムが伸び、徐々にアグレッシブさも見せるようになり得点数も増えた。「千葉戦よりもオフェンスもディフェンスも積極的にできた。修正しなければいけない部分はたくさんあるけど、新人らしくもっともっと積極的にやりたい」。目標は「全試合に出ること。チームの力になれるように、もっと試合に絡んでいきたい。その上で新人賞を取りたい。今シーズンしか取れない賞だし、そのためにがんばっていきたい」。全国的にはまだ無名かもしれないが、そのチャンスは十分にある。まずは全選手がベストコンディションでそろった時にコートに立てるかが勝負だ。滋賀戦で垣間見せた強気のオフェンスでこれからもアピールしてほしい。
文=安田勇斗
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