昨季はチャンピオンシップに進出し、一昨季からのステップアップを見せた名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。さらなる進化を期す今季は一時西地区首位に立ちながら、その後、琉球ゴールデンキングスにその座を譲り、京都ハンナリーズも背後に迫っている。
チームの課題はディフェンス。トランジションバスケットを志向する分、どうしても点の取り合いになることが多く、特に12月に入ってからは失点がさらに増えて1勝4敗と黒星が先行していた。
その中で、12月21日の川崎ブレイブサンダース戦は前半の20分間で28失点と、ディフェンスで結果を残した。後半まで持続できず川崎の猛追を受けたが、最終的に2点差でしのぎきったことは大きい。
この試合で好守の一端を担った1人が笹山貴哉だ。第2クォーター開始早々にフリースローで得点を挙げた直後、相手のドリブルをカットしてそのままレイアップ。続く相手のポゼッションでも再びドリブルカットから速攻レイアップに持ちこみ、川崎はわずか40秒でタイムアウトを取らざるを得なくなった。試合の入りで生まれた勢いが少し落ち着きつつあるところで、再びチームを波に乗せるビッグプレーだった。
前述したように一時地区首位に躍りでたチームにあって、開幕前にケガに見舞われた笹山は唯一出遅れた。不在の間に小林遥太が目覚ましい活躍を見せ、そのままスターターに定着。戦列復帰から2カ月近く経つ現在まで、笹山は一度も先発出場していない。しかし、「スタートで出たい気持ちはある」としながらも「そこまで執着はしていない。まだ100パーセントのパフォーマンスを出せていないので、まずは自分に焦点を当てたい」と、今は目の前にある役割を果たすことに傾注している。
気の早い話ではあるが、チームは今季もチャンピオンシップを狙える位置につけている。出遅れた分を取り戻したい笹山としても、チャンピオンシップに向かうチームにどう貢献するかという点はすでに意識しているようだ。
「チャンピオンシップに出ることは通過点。昨季チャンピオンシップで勝つ難しさを経験したことは、またその局面になった時に活かせると思うので、僕はそこに合わせたいと思っています。ケガで出遅れましたが、その局面で必ず僕の役割が出てくる。そこでしっかりと自分の力を出して、その時にインタビューで『できました!』と言います」
焦ることなく先を見据える笹山がここからどのようにパフォーマンスを高めていくか、大いに期待して見守りたい。
文=吉川哲彦