リーグ3位の得点力を武器に、西地区2位につけている名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。抜群の突破力を持つマーキース・カミングスがその原動力になっていることは間違いないが、日本人選手にも安藤周人という優れたスコアラーがいることを忘れてはならない。
第15節の川崎ブレイブサンダース戦を終えた時点で、1試合平均13.5得点。川崎との1戦目で14得点を挙げた安藤は、続く2戦目は24得点とさらに数字を伸ばした。まだ大卒2年目という若手だが、「うちのエース。相手チームも彼を抑えるのは難しいと思います」と梶山信吾ヘッドコーチが言うように、早くも得点源の1人として計算できる存在になった。
開幕から12試合連続2ケタ得点と安定感も備えている安藤だが、12月に入ってからはそれまで2度しかなかった1ケタ得点が7試合中4試合。そして、その4試合はいずれもチームが敗れている。他チームからの警戒が強まっている証であり、安藤の得点力がチームの勝敗に与える影響を物語るデータだ。しかし、安藤自身は「まだエースと言われる立場ではない」と自らに厳しい目を向ける。
「強い相手でもコンスタントに2ケタを取れるようにならないとエースとは言われないだろうし、1ケタの試合が4試合あったことは受け止めないといけない。マークがきつくなった時にどうすればいいかということは考えさせられたので、この2試合でそれを表現できたのは良かったかなと思います」
安藤が強調するのは、あくまでチームの一員であるということ。いかに与えられた役割を果たせるかという点に意識を傾けており、得点は与えられた役割の中の1つにすぎないという考え方だ。それでも、“エースの自覚”とも呼ぶべきメンタリティーは備わりつつある。
「任せられたらやらないといけない。昨季よりそういうシーンが増えてうれしい反面、失敗しちゃいけないというプレッシャーもありますが、数をこなしていくうちに慣れてきて、もっとボールが欲しいという気持ちにもなってきたので、そこは成長できているんじゃないかと思います」
フィールドゴール試投数の7割以上を3ポイントが占める中、「外のシュートだけとは思われたくない」と言う安藤は、川崎との2戦目では力強いドライブで6本の2ポイントをすべて決めてみせた。アシストやディフェンスにも向上の意欲を見せる安藤が、自他ともに認めるエースとなる日はそう遠くない将来に訪れるだろう。
文=吉川哲彦