2018.11.17

“笹山貴哉頼み”から脱却し、シューターとして覚醒する安藤周人

名古屋Dを引っ張る存在になりつつある安藤 [写真]=鳴神富一
1981年、北海道生まれ。「BOOST the GAME」というWEBメディアを運営しながら、スポーツジャーナリストとしてBリーグを中心に各メディアに執筆や解説を行いながら活動中。「日本のバスケの声をリアルに伝える」がモットー。

 今シーズンの安藤周人は違う、そう思っている方も数多くいるのではないだろうか。名古屋ダイヤモンドドルフィンズのシューターとして期待されている彼は今季、飛躍的に成長を遂げている。11月16日時点で1試合平均得点が14.6点と昨季よりも6点も向上し、3ポイントシュート成功率も48.1パーセントと好調をキープ。チーム加入3シーズン目にして、プロとして覚醒を遂げようとしている。シーホース三河との第10節第1戦は敗戦を喫したものの、チーム最多の16得点と活躍した。

 好調をキープする理由、それは意外にもシーズン序盤にケガで離脱していた笹山貴哉にあった。チームの精神的な柱の一人でもある笹山の離脱により、自分自身でチームをけん引しなくてはいけないという気持ちが出てきているようだ。さらに、彼自身がオフシーズンで自分自身をもっと向上させようとする気持ちもあった。

「一番の理由は開幕の時に笹山選手がいなかったのが大きいですね。昨シーズン、笹山選手がチームをけん引する部分が多かったと思います。その中で彼に頼りすぎていた部分がありました。オフシーズンにアシスタントコーチ陣に対して、得点力を上げたいとかピック&ロールのプレーをうまく使っていきたいと相談して、練習を積み重ねてきました。それが少しずつですけど試合に出てきて、それによって笹山選手の負担も減ってきていると思っています。でももっともっと確率良くシュートを決めていきたいので、この状況で満足するのではなくて、上を目指せるようにしていきたいと思います」

 彼のスタッツの向上もあり、チームも西地区で首位をキープしている。

「一つ言うならチームが去年より若くなって、チームメート同士がお互いに意見を言い合うなど、話し合う場面が非常に多くなりました。昨シーズンから5人も入れ替わったので、それも踏まえてチームで勝とうということを非常に大切にしています。だからこそ、今日のような試合をしていたらこの好調な流れを失ってしまうと思います。ある意味、今日があって良かったと思っていて。負けてしまいましたけど、大切なことを再認識できたという意味でいい金曜日になったかなと思います。 改めて自分たちが何が足りないのかということがわかりましたし、もっともっとチーム力を上げていければいいなと思います」

 そんな彼の活躍を梶山信吾ヘッドコーチも「彼の今シーズンの活躍は本当に素晴らしくて、何よりも自信に満ち溢れてますよね。自分でもやらなくては、という部分の意識も芽生えていますので、チームがかなり助けられているところがあると思います。僕らとしては彼はあれぐらいできると思っていたので、頼もしい限りです」と喜びと見せている。

開幕から全16試合で先発を任されている [写真]=鳴神富一

 昨季は少し控え目な印象があったが、この日は言葉にも自信が満ち溢れているようだった。「そんなことはないですよ」と笑顔で言いつつも、「今はすごくできすぎている部分があると思います。自分で点数を取りに行くというよりは周りに活かされて、自分がノーマークになる場面が多くなり、それを決めているだけという場面が多いので。逆に自分が周りを活かせるように、もっともっと局面で任せてもらえるような場面を増やしていきたいですね」と意欲を見せ、ハッキリとした口調で今季の目標を語った

「チームとしては日本一なんですけど、それ以上に今は目の前の相手との戦いを一戦一戦大切にしていきたいです。昨シーズンよりも1勝でも多く勝ちたいですね。それはチームとしても個人としても目標です。さらに個人として言うならば今の調子をキープして、シューターとして3ポイントシュート成功率40パーセントを目標にシーズンを過ごしてきたなと思います」

 彼のプレー面と精神面での目覚ましい飛躍が、名古屋Dがシーズン序盤をいい状態で過ごしている一因というのがわかった気がした。安藤がコート上で輝き続ける、それは名古屋Dに歓喜の瞬間が訪れる瞬間とリンクするに違いない。

文・写真=鳴神富一

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