タフなスケジュールが続いているB1のレギュラーシーズンも第24節を終えると、一旦3週間のウインターブレイクを迎える。そんな状況下の中、2月10日に行われたアルバルク東京vs滋賀レイクスターズはラストプレーまで目の離せない一戦となった。滋賀がコート上で繰り広げたマンツーマンとゾーンを多彩に織り交ぜたチェンジングディフェンスにA東京はオフェンスのリズムをいつものようにつかめず、逆に滋賀は最後までファイトして相手に対して詰め寄り、非常に見応えのあるゲームになったと総括していいだろう。
第2クォーターには、チームハイの19得点を獲得したアレックス・カークを中心にインサイドを攻め立てゲームの主導権を握ってA東京がリードを広げていく。そこに滋賀のキープレーヤーであるマーカス・ブレイクリーとここ最近スタートで出場し続けている荒尾岳のファウルトラブル。この瞬間にA東京が一気にリードを広げていくかに思えた。しかし、ここから滋賀はスモールラインナップを活かして脚を使って激しいディフェンスを披露すると、それが功を奏し前半を8点差で耐え凌いだ。
後半に入るとA東京もギアを一段上げる。第3クォーターの序盤には、この日18得点を獲得した安藤誓哉が持ち味の思いきりの良いシュートやアウトサイドが好調だったミルコ・ビエリツァの3ポイントシュートなどで点差を2ケタに広げていった。最後の10分間に勝負強さを見せるA東京、過去の戦いぶりからこのまま点差が広がるかと予想された。しかし、滋賀は1つのビッグプレーで流れを変える。第4クォーター序盤に特別指定選手で加入した中村功平の3ポイントシュート、相手のファールも誘ってバスケットカウントを奪うとそこからゲームの主導権を握る。そこからブレイクリーの速攻からの豪快なダンクや3ポイントシュート4本も含む20得点を獲得した高橋耕陽がコート上で躍動し、残り2分半で3点差まで滋賀が詰め寄る。流れの良さはディフェンスにもいい影響を及ぼし、よりアグレッシブにプレッシャーを掛け続ける。A東京が得意とするトランジションとハイピックからスタートするオフェンススタイルをストップさせ、一気に逆転かということを思わせる雰囲気となった。
しかし、これを止めたのは安藤だった。相手のディフェンスをかいくぐってドライブからタフにスコアメイクすると勝負所で相手のオフェンスをシャットアウトして追いつかせなかったのである。最後の最後まで分からなかった40分間は70-65とA東京が逃げきり、今シーズン初の7連勝という結果を収め、いい流れでウインターブレイクを迎えるゲームとなった。
最後まで相手を追い詰めた滋賀のショーン・デニスヘッドコーチは「我々は最後までしっかりとディフェンスでファイトできた試合だったと思います。敗れてしまいましたが素晴らしい試合ができました。若手の高橋と中村が活躍をしてくれました、彼らの活躍はこのクラブの将来にとっても大切で非常に良い兆しだとも感じています。ウインターブレイクを利用して、終盤戦に向けてしっかりと準備していきたいと思います。来週後半にはおそらく3人目の外国籍選手が加入する予定です。手応えを感じているチェンジングディフェンスやオフェンスシステムをチームに落とし込んで更なる高いレベルで遂行できるようにしていきたいですね。現状の成績だと残留プレーオフも視野に入ってきますが、万が一の場合でもしっかりとB1に生き残れるように準備をしていきます」と前向きな表情で試合を振り返った。
一方、7連勝を収めたA東京のルカ・パビチェビッチHCは「今日も厳しいゲームでした。特に相手のオフェンスリバウンドを含めたリバウンドの部分で苦しめられました。相手のチェンジングディフェンスに対して、課題である状況判断の素早さをしっかりと実行することができずに苦しめられたのもあります。その中でなんとか凌げたゲームでもありました。滋賀はリーグで現在下位に沈んでいますが、このチームはデニスヘッドコーチの元でどのチームにも勝てるチームだと感じています。我々は40分間ハードに戦って最終的に勝利することができ、選手たちにはよく戦ったと試合後のロッカールームで伝えました。代表選手以外の選手たちには少し休んでほしいと思っていますが、ここからの3週間は3月から始まる大事な終盤戦に対してもしっかりとチームで戦えるように準備をしていきたいです」と安堵の表情を見せたのである。
それぞれ現在の位置からは違う目標が存在しているが、ここからの3週間のウインターブレイクを利用してより強固な組織を作りあげるに違いないであろう。それは両チームの指揮官が非常に有能で経験豊富だからだ。レギュラーシーズン残り20試合、勝負は3月から始まる。
写真・文=鳴神富一