2シーズン連続のチャンピオンシップ進出に向け、熾烈な争いの真っただ中にいる名古屋ダイヤモンドドルフィンズ。3月23日に行われたアルバルク東京とのB1リーグ第29節第1戦は第1クォーターで26-21とリードしながら、その後は自慢のオフェンス力を発揮できず、70-82で昨季王者に屈した。
その中で活躍が光った1人が、6試合ぶりの2ケタとなる12得点を挙げた張本天傑だ。最大で14点開いて劣勢に回った第3クォーター、その14点差がついたところでコートに入った張本は、力強いドライブでファウルをもらい、フリースローで加点。さらにヒルトン・アームストロングのダンクを演出するアシストや自らの3ポイントでA東京のディフェンスを攻略し、約2分30秒の間に6点差まで縮めてみせた。第4クォーターも張本の5得点が効いて一時2点差に迫るなど、追いあげに一役買ったことは間違いない。
張本はキャプテンであり、チーム唯一の日本代表選手でもあるが、今季はここまでの48試合のうちスターターとしての出場は12試合にとどまり、スタッツも抜きん出ているわけではない。この試合はディフェンスの強度が高いA東京が相手とあって「こういう相手とやる時は迷ってしまうと変なミスになる」と思いきりよく得点を狙っていったが、張本の真価はチームへの貢献を第一に考え、試合展開に応じて自身の役割を見出す柔軟性と献身性。名古屋Dでも日本代表でもシックスマンという重責を担う張本は、そのスキルを数字に表れない部分でも発揮している。
「ベンチで試合の流れを読みながら、今何が必要とされているか、コートに立った時に何をするべきかを常に考えています。代表でも同じですが、そういう選手がチームに必要。そこは責任を持って、役割に徹してプレーしたいと思っています」
CS出場へ予断を許さない状況の中、張本が重視するのはメンタル面。戦術よりも、一人ひとりの強い気持ちが1本のリバウンドやルーズボールにつながると張本は言う。日本代表選手である張本が名古屋Dにもたらすものは少なくないはずだ。
「今日も前半に追いあげられた時に今まで出なかったようなターンオーバーが出てしまったり、相手の強いディフェンスにタフショットを打たされたりしたのはメンタルの影響が大きい。キャプテンとして、みんなのメンタルコントロールをしていきたいと思います。Bリーグ以上にタフな国際試合で得た経験を、言葉だけでなく態度でも示していきたい」
文=吉川哲彦