Bリーグを代表する日本人ダンカー、熊谷尚也(川崎ブレイブサンダース)が今シーズン初のダンクシュートを決めたのは第7節第2戦の島根スサノオマジック戦のこと。この試合では2本のダンクを叩きこんだが、敵地での試合だったため、新天地のホーム・とどろきアリーナではまだダンクを披露できていなかった。
11月9日に行われた三遠ネオフェニックスとの第1戦。その瞬間は第1クォーターに訪れた。
3試合連続となるスタメン出場を果たした熊谷は、チームのファーストプレーで相手からファウルを誘い、直後には先制点となる3ポイントをマーク。開始から調子の良さを垣間見せると、同クォーター残り3分39秒、相手のターンオーバーからニック・ファジーカス、ジョーダン・ヒースとつないで川崎は速攻を展開。一足先にゴール下まで走りこんでいた熊谷は、2対1の状態でヒースからリング付近へのパスを受けると、そのまま両手でアリウープを叩きこんだ。
「とっさに出た」(熊谷)ビッグプレーに対し、会場に訪れた4725名の観衆はこの日最初の“盛りあがり”を見せた。熊谷はこの瞬間を笑顔でこう振り返る。
「練習でもアリウープの練習はしてなかったですし、パスをくれたのがどちらかと言えば“もらう側”のJ(ヒース)ってのが良かったです(笑)。(ホームでのダンクは)絶対決める、とまではいかないけど、なるべく早く決めたかったのでホッとしていますし、成功してすごく嬉しかったですね」
熊谷の代名詞でもある軽快なダンクは、195センチの身長と高い身体能力があるからなせる技だと思われがちだが、それに裏付けされたコートを駆け上がる走力があるからこそチャンスが生まれる。第3クォーターで見せたタッチダウンパスから相手の意表をついた速攻からの得点も、「パスが来ると信じて走っていた」結果だ。
第1クォーターでは、豪快アリウープを含む5本のシュートをすべて沈めて8得点を記録した熊谷。「得点にも絡めてディフェンスでもチームに貢献できた」と第1クォーターに関しては自身に合格点を与えたが、「それ以降はファウルが混んだり、オープンショットを外したりしたので、まだまだです」と反省の弁を口にした。「ヘルプディフェンスのところでもコミュニケーションミスだったり、ポジショニングが悪かったので修正するべき点はあります」。
それでも、川崎に新加入した28歳はここまでのレギュラーシーズン13試合中8試合で先発としてコートに立ち、平均21分以上のプレータイムを得ている。「チームに合流してからいろんな選手とコミュニケーションを図りながら練習してきて、いい状態で開幕を迎えられました。まったくフラストレーションがないというか、体はすごく動けています」。
今の川崎の強さの要因は、1試合平均72.9失点という誰が出ても40分間強度の落ちないディフェンスであり、熊谷も「コートに出てる以上はディフェンスを一番頭に置いている」と話す。「ディフェンスが良ければ、オフェンスのリズムにつながるので、まずはディフェンスから。今は全員が切磋琢磨し合っていますし、自分が長く試合に出て勝てることが一番いいですけど調子のいい時もあれば悪い時もあるので、カバーし合いながらこれからもやっていきたいです」。
「チームで戦っている実感がある」と、新天地でも充実したシーズンを送っている背番号「27」。10日の第2戦でも、ホームの大観衆を虜にするプレーを披露してほしい。
文=小沼克年