1月26日、アリーナ立川立飛で行われたアルバルク東京対富山グラウジーズは、一進一退の展開を見せた第4クォーター、安藤誓哉がファウルを受けつつ3ポイントシュートを決めた4点プレーや、ザック・バランスキーが今シーズン最多の16得点を挙げる活躍などでA東京が勝利した。
この試合、後半に富山が追い上げを見せたが、その原動力になったのが前田悟だ。前田は第3クォーターでは3本の3ポイントシュートを含む11得点をゲット。ゲームを通じて19得点を挙げ、勝利したA東京のルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチには「気持ちよくシュートを打たせてしまった。前田を乗せてしまったのがその原因だ」と言わしめた。
昨年の1月に特別指定選手として青山学院大学から富山に入団した前田は1年がたった今、スターターに抜擢され、主軸としてチームを支える選手に成長した。富山のドナルド・ベックヘッドコーチは「素晴らしい若手であり、現在はうちのベスト3ポイントシューターだ。いい経験を積んでいると思うし、成長も見て取れる」と期待を寄せる。
試合後、囲み会見取材に応じた前田は、「実はここ2試合スコアができず、ちょっと悩んでいました」と明かしてくれた。今シーズン、1試合平均26分にも及ぶ出場時間を獲得し、11.0得点を挙げてきたルーキーは、シーズンの後半に差し掛かった時点で壁に当たっていると感じていた。というのも、1月22日の新潟アルビレックスBB戦では今シーズン初の無得点を経験し、前日のA東京戦でも2得点に終わったからだった。
「自身としては(Bリーグに)だいぶ慣れてきていたと思っていたのですが、相手チームにスカウティングされ、マークも厳しくなってきた中で、もう1つステップアップしないといけないと思っています」と前田は現状を分析する。
これまで「ルーキーということは関係なく、責任感を持ってプレーをしていました」と語る前田だが、自分にプレッシャーをかけてしまうことも増えてきたという。それでもチームメートには「思い切りシュートを打て」とアドバイスをもらっているが、そのためにも「スクリーンのかけ方やマークのはがし方などいろいろと勉強しています」と、学ぶことは多い。
今節のA東京戦では「さすがトップのチーム、体の寄せ方もうまいし、ディフェンスが厳しいです」と、初めてのチャンピオンチームとの対戦で吸収するものが多かった。「勝負どころでの集中力が違いました。自分ももっと成長をしていかないと」と心に期す。
初戦での反省を生かして第2戦に臨んだことが好結果につながったともいえるが、先輩の宇都直輝にかけてもらった言葉で吹っ切れた部分もあったという。「宇都さんと昨日の夜に食事に行って、『お前の(感じている)壁なんて薄っぺらいよ』と言っていただいて(笑)。『明日やってやります』と返事しました」ことが好結果につながったのだろう。
これからの現役生活の中で様々な壁にぶち当たることも多いだろう。しかし、前田はその一つひとつを破りながら、着実に前進を続けていくに違いない。
文=入江美紀雄