遡ること1カ月半、昨年11月に行われた3x3男子日本代表第3次強化合宿で、落合知也はこんなことを言っていた。
「一つひとつの合宿をどれだけ質の高いものにできるか、そこでどれだけオリンピックを意識できるか」
それを踏まえて考えても、1月6日からの第4次強化合宿は前回と比べて内容の濃い練習メニューをこなし、7月の東京オリンピック本番に向けて代表候補メンバーが一歩前進したものと言っていいだろう。5人制とは異なる3x3ならではの攻守の切り替えに重点を置いたものや、人とボールの動きの中でシュートを狙うポイントを認識するためのシューティング、14-14のスコアと両チーム4ファウルの状況から始まるスクリメージなど、そのメニューは3x3の戦い方に慣れるためのものだった。経験者の多くが「5人制とは別の競技」と語り、トーステン・ロイブルヘッドコーチも「5人制には存在しない動きがある」と言う3x3の戦い方を、合宿の前日までBリーグの試合を戦ってきた選手が再確認する作業だったと言うことができる。
国内の3x3個人ポイントランキング1位を守り続けている落合は、一連の強化合宿で他の選手に3x3の戦い方を微に入り細にわたって伝授する役割を自認する。Bリーグを主戦場とする選手にアジャストしなければならない部分もあるものの、その中で3x3の“世界基準”をいかに浸透させるかという点に腐心している。
落合いわく、「強いチームは簡単に1点を取ることができる」。サイズ面で他の強豪国に劣る日本は脚を使ったプレーでレイアップのチャンスを作る必要があり、それはまさしく落合が数多くの国際試合で学び、実践してきた方法論だ。世界で戦う術を知る落合は、この合宿も常に“世界基準”を念頭に置いた上でチームを見つめ、自身の役割にも覚悟を持つ。
「経験も積んできて良くなってきてはいますが、世界で勝つということを考えるとこのメンバーはまだまだ足りない部分もあるし、試合でどれだけできるかというのもあるので、もっと経験が必要かなと思います。夏まで戦ってきた他の国のチームの精度と比べると、まだまだ突き詰めていかないといけないし、そういう相手がいないこの合宿では自分が体現していかないといけないと思います」
2020年を迎え、落合は「正直なところ、そこまで『オリンピックイヤーだ』という実感はないんですが、2020という数字を見るとやっぱりワクワクするというか、『いよいよ来たな』という気持ちは少しずつ湧いてきている」と言う一方で、時間がないという危機感も抱き、「現状、代表候補が集まる機会も少ないので、集まった時にいかに海外で勝つことをイメージしながら取り組めるか。海外を意識することをチームにも働きかけたい」と、改めてその意を強くした。一貫して世界との戦いに意識を傾注する落合が、ここから代表候補をどう変えていくのかが楽しみだ。
文=吉川哲彦