Bリーグ、WJBL、社会人、大学、高校とオールカテゴリーのトップが日本一の座を争う第92回天皇杯・第83回皇后杯(オールジャパン2017)。アマチュアプレーヤーにとって、この大会は自身の実力を知る絶好の機会であり、Bリーグにとっては隠れた逸材を発見できるショーウィンドー的位置付けの大会でもある。
■伊集貴也(九州電力)
今年度の最初の全国大会である昨年9月の全日本実業団競技大会では3ポイントシュートを中心とした得点力を発揮し、見事なシックスマンぶりで九州電力は大会3連覇、伊集貴也は最優秀選手に選ばれた。「自分なんかがもらっていいのかなって」という伊集に、期待もこめた選出ではと言うと、「応えられるようにがんばります」と笑顔を見せた。今年度はポイントガードとしてコートに立つこともあるが、「熊さん(熊谷駿)にもいろいろと教えてもらっていますが、まだまだ全然ダメです」
そんな伊集とチームに思わぬ試練が訪れる。主力PGの熊谷がケガで離脱、「まだまだ」というPGを伊集がメインで務めなければいけなくなった。3週間後に行われた11月の全日本社会人選手権では決勝で敗れ、3連覇を狙う大会を準優勝で終えた。試合後、伊集は「何をやっていいかわからない」と苦しい思いを口にした。「真似ではダメ。自分の形で」と周りに言われても、何が正解なのかわからないままプレーしていた。
あれから2カ月、「今は随分と良くなった」と山口健太郎ヘッドコーチ。しかし「まだ悩んではいるとは思います」とも言う。現在Bリーグの千葉ジェッツで活躍する石井講祐はシュートメインのプレーから、コート上でのチームバランスを考えたプレースタイルを身につけていく中で確実に存在感を高めた。同様に伊集もこの逆境をチャンスに変えて、さらにチームを勝利に導くプレーができる選手になっていくと期待したい。
文=渡辺美香