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『B MY HERO!』
2大会連続、そしてインターハイと国体に続く、桜花学園高校(愛知県)と岐阜女子高校(岐阜県)の頂上決戦。この決勝の顔合わせが象徴するように、今大会の女子はおおよそ順当な結果だったと言っていいだろう。
それを物語るのが、接戦の少なさだ。3位決定戦を含めた全50試合中、5点差以内で決着した試合は6試合しかなかった。逆に、20点以上の大差がついた試合は25と、全体の半分に上っている。準々決勝も3試合までが20点以上の差がつき、残る1試合も18点差。準決勝も桜花学園が24点差、岐阜女子が16点差という、いずれも快勝と言える試合運びであり、桜花学園と岐阜女子の突出ぶりが際立つ結果となった。ちなみに今大会の最少得点差は、1回戦の2試合と決勝で記録された「2」だった。決勝進出の2チームが他チームを置き去りにしているというのが、高校女子の現状なのである。
その2チームの強さはどこにあったのか。岐阜女子の場合は何といっても強固なディフェンスだ。破壊力抜群のオフェンスを誇る八雲学園高校(東京都)を51点に抑え、準決勝でも昭和学院高校(千葉県)を45点に封じた。オフェンスでは、ディヤイ・ファトーの高さと石坂ひなたの高確率の3ポイントを、藤田歩が落ち着いたコントロールで演出した。ファトーをダミーに使い、空いたスペースに小野佑紀がアタックするプレーも要所で機能した。
そして優勝した桜花学園は、初戦となった倉吉北高校(鳥取県)で実に7人が2ケタ得点を挙げ、139-42の記録的大勝を挙げたことからもわかるように、オフェンス力が高い。各ポジションに佐古瑠美や山本麻衣らタレントがそろい、インサイド、アウトサイドのどこからでも得点できるが、中でもやはり馬瓜ステファニーの多彩なオフェンスは本物だ。ベンチプレーヤーにプレータイムを譲った下位回戦は数字が伸びなかったが、準決勝の大阪薫英女学院高校(大阪府)戦で32得点、決勝でも25得点と大一番で大黒柱にふさわしい働きを見せた。高い身体能力に頼ることなく、ジャンプシュートやステップワークにも磨きを掛けた馬瓜の1on1は、岐阜女子でも止めることができなかった。
シード校が確実にトーナメントを勝ちあがる中、ノーシードからベスト8まで駒を進めたのが昭和学院と浜松開誠館高校(静岡県)。注目の赤穂ひまわりを擁する昭和学院は、インターハイで敗れた札幌山の手高校(北海道)を大差で下してベスト4まで進んだ。もともと前評判は高く、昨年まで4年連続でベスト4という実績を考えれば、今大会の成績に驚く者はいないだろう。
それに対し、浜松開誠館の快進撃は予想以上だった。インターハイの2回戦敗退からステップアップし、3回戦まではいずれもインサイドのサイズの不利を跳ね返しての勝利。高原春季らオールラウンダーを多数擁する大阪薫英女学院には屈したものの、ベスト4入りが確実視されていた相手を慌てさせる場面も多々見られた。鍛えあげられた足腰を活かした粘り強いディフェンスと、がむしゃらに手を伸ばすリバウンドとルーズボールは、この夏のリオデジャネイロ・オリンピックで日本が見せた戦いにも通じるものがある。浜松開誠館のようなチームがさらに出てくれば、その中からきっと桜花学園や岐阜女子を脅かすチームも現れ、より激しい競争が生まれるだろう。引いては、高校のみならず日本のバスケット界全体にも良い影響があるはずだ。
桜花学園の井上眞一コーチも、優勝決定直後のインタビューで「東京オリンピックに向けて、日本のバスケットを盛りあげていきたい」と語っているように、新興勢力の台頭は望むところだろう。浜松開誠館のさらなるステップアップはあるのか、また、第2、第3の浜松開誠館登場もあるのか、今から興味は尽きない。
最後に、今大会の出場選手から、上記以外で今後が楽しみな選手を3名だけピックアップしてみたい。筆者が実際に見た選手のみという点はご容赦いただきたい。札幌山の手の栗林未和は188センチの長身を活かし、3試合で96得点を稼いだ。チームが55得点に抑えられた昭和学院戦も、1人で32得点をマークしている。今後アウトサイドからのプレーを磨いていけば、相当なオフェンス力の持ち主になれるだろう。
聖和学園高校(宮城県)の阿部泉美はボールさばきに長けたガード。167センチとサイズもあり、得点も期待できる。2回戦で岐阜女子に敗れたが、もう少しプレーを見てみたかった選手だ。創部3年目で全国ベスト8入りを果たした開志国際高校(新潟県)からは、藤永真悠子。180センチながら、赤穂同様アウトサイドから仕掛けられる選手だ。
3年生が進路先でどのようなプレーを披露するかも期待大だが、ほんの数カ月で劇的に成長するのが高校バスケの最大の魅力。来年、ウインターカップを戦った下級生がどれだけ伸びているか、それもまた楽しみなところだ。
文=吉川哲彦