2016.12.30

ベスト4進出は努力の結晶、帝京長岡が総体予選後から続けた3万4000本のシュート練習

エースナンバー「7」を背負う、帝京長岡の遠藤善 [写真]=大澤智子
大学時代より取材活動を開始し、『中学・高校バスケットボール』編集部を経て独立。メインフィールドである育成世代から国内バスケット全体を見つめる"永遠のバスケ素人"。

 乱暴な言い方で恐縮だが、今回ファイナル4に進出したチームのうち、帝京長岡高校(新潟県)のメンバーの中学時代のキャリアのなさは群を抜いていた。全中への出場経験があるのはメンバー中1人。有望選手の証でもあるジュニアオールスターの出場経験者も4人しかいない。

 その1人である遠藤善(3年)は、今年の春にエースナンバーの「7」を託された。入学当初は170センチだった身長が3年間で12センチ伸び、それにつれてプレーが安定した。「(7番になった)最初はプレッシャーで全然シュートが入らなかった」と振り返るが、身体能力の高さとシュート力を武器に、ウインターカップ予選では夏のリベンジの立役者に。「自分は怒られキャラで、毎日のように怒られてきました。練習でメンタルと足を鍛えられて、ここまで成長したんだと思います」(遠藤)

 帝京長岡の選手は、遠藤を筆頭に外角シュートの精度がとても高い。出てくる選手全員がここぞというところで3ポイントシュートを沈める。入学当初からシュート力の高い選手がそろっていたのかと主将の神田大輔に尋ねると、「全然そんなことはないです」と否定された。

 インターハイ予選で開志国際高校に敗れた悔しさを胸に、ウインターカップ予選までの2カ月間、個人練習の時間を使って全員がシュート1万4000本インを達成した。昨年は達成できなかったチャレンジの成功を自信に予選を勝ちあがり、そこから本選までにさらに2万本のノルマを追加するという気合いの入れようだったが、準決勝の福岡第一高校(福岡県)戦は再延長の疲労でシュートが手打ちになってしまったことを神田が悔しそうに認める。

「疲労もそうだし、プレッシャーを掛けられた時に回避せずにアタックできる気持ちと技術が足りなかったと思います。また、3年生がコート内外でタヒロウ(ディアベイト・タヒロウ)に頼っていたことが今日のような形になってしまったのかもしれません」

 部員のほとんどが学校の所在するに新潟県中越地区の出身。前述のとおり中学時代の有望選手がほとんどいない中で、選手それぞれがコツコツと努力を重ねて成長し、ベスト4までたどり着いた。目標としていた全国制覇は達成できず、3位決定戦を逃したためメダルもない。しかしその努力の結晶はそれぞれの胸の上で燦然と輝いている。

文=青木美帆

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