「相手が強いとわかっていたが、最初から自分たちのバスケができました」。JX-ENEOSウインターカップ2016の覇者、福岡第一高校(高校選手権)でキャプテンを務める重富周希は充実した顔で、高校生活最後の試合を振り返った。
1月5日に行われた第92回天皇杯・第83回皇后杯(オールジャパン2017)3回戦。名古屋経済大学(大学6)を破り、3年ぶりにオールジャパンのタイトルを目指すBリーグの強豪、川崎ブレイブサンダース(Bリーグ1)への挑戦権を手に入れた福岡第一は、67-114と大差で敗れたものの、最後まで自分たちのバスケットをやりきった。
この日も果敢にゴールへとアタックし続け、15得点8アシストを記録した重富周は「一番通用したのはドライブ。チームとしても怖がらずにそれぞれの得意なプレーができました」とコメント。続けて「自分たちの中ではチームとして30得点を取れれば良いと思っていたのですが(苦笑)、試合をやってみたら、結構得点できました」と、“最後のNBL王者”川崎に真っ向勝負を挑み一定の満足感を示した。
福岡第一を率いる井手口孝ヘッドコーチは試合後、「いやー。強い。シュート入るわ」と苦笑しながらミックスゾーンに現れると、オールジャパンにおいて高校生が明らかに実力も経験も豊富なプロチームへ挑む意義を語った。
「自分たちのプレーを止めないで、いつもどおりのことをやるように指示しました。10回やって1回はできるかもしれませんから」と笑顔を見せ、さらにこう続けた。「いつも生徒たちに言っていますが、『バスケットは人生と同じ。挑戦しろ』ということです。そういう意味で、今日の試合、生徒たちがゴールにアタックしてくれて良かったです。今日の試合は福岡第一高校としてではなく、選手個々が彼らの人生として良い経験になったと思います」
第69回全国高等学校バスケットボール選手権大会とウインターカップの2冠を達成し、2016年の高校バスケットボール界を席巻した福岡第一。最後の試合で浴びたプロの洗礼と、何ものにも代えがたい貴重な経験が、この試合を最後に新たなステージへと向かう未来のスター候補たちにどのような変化をもたらすのか。その答えがわかるのはもう少し先かもしれないが、それを待つのも、これからのバスケットボール観戦の醍醐味の一つになるだろう。
文=村上成