平成最後の皇后杯となる「第94回天皇杯・第85回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」。今年の4月には新元号も発表予定だが、Wリーグでは昭和生まれの選手たちが元気だ。ここではその中でも4名の選手をピックアップする。
文=田島早苗
「若い子に負けないよう、私も中心にいたい」長部沙梨
ファイナルラウンドに進出したチーム中、最年長はトヨタ紡織サンシャインラビッツの長部沙梨(昭和62年生まれ)。これまで長きに渡ってチームの得点源を担い、デンソーアイリスとの準々決勝でも、15得点9リバウンド6アシストという数字を残した。
「ベテランとして”ここ”という時に点を取ることと、チームの中で一番しっかり、どしっと構えていないといけないとは個人的に思っています。そしていかに自分のプレーをずっと続けられるかが目標です」
こう発する長部は、力強いドライブなどが特長で身体能力も高い。だが、「もう回復力が(笑)。毎日、疲れを残さないようにするかには気を使っています」と笑う。しかし、「若い子たちは勢いがあっていいと思うのですが、それに負けないように、私も中心にいたいとも思っています」と強い思いも語ってくれた。
「自分のやるべきことをしっかりやりたい」王新朝喜
体の面で言えば三菱電機コアラーズの王新朝喜(昭和62年生まれ)は、「ここ2、3シーズン、ダメなところは分かっていたのですが、今シーズンは、やっとそれが修正できたというか。体の使い方に敏感になって早めにトレーニングに取り組むなどしています」と、今シーズンのこれまでを振り返る。ただ、これは年齢的なものではなく、さらに今シーズンはトレーニングコーチからのアドバイスで “呼吸”も意識しているとのこと。
「呼吸がうまくいく時は姿勢が取れるし落ち着いてプレーができます」と、コート外でも一日中呼吸を意識することで、試合にいい形が臨めているそうだ。
ベテランと言われる世代、「無理をしてはいけないところも分かってきているので、次に備える、無駄な力を使わないようにしています」と、経験から得たものも大きい。「自分のやるべきことをしっかりやりたい」と、今後の戦いに向けて前を向いた。
「ヨシがいるから頑張れるし、ヨシがやれるなら負けたくない」藤井美紀
シャンソン化粧品シャンソンVマジックの藤井美紀(昭和62年生まれ)は、王と白鷗大学時代のチームメイト。山梨クィーンビーズからシャンソン化粧品に移籍した今シーズンも、20代の頃と変わらないスピードを見せている。今大会はケガから復帰の初戦となったため、「久しぶりの試合は(体力的に)きつかったです」と、藤井。当面は、「(ヘッドコーチの)丁海鎰さんの信頼を得ないと」と、チーム内のポジションをしっかりつかむことだ。
JX-ENEOSサンフラワーズの吉田亜沙美(昭和62年生まれ)と東京成徳大中学・高校とは6年間を一緒に過ごした仲。「(その後)歩んできた道は違うけれど、ヨシ(高校時代のコートネーム)がいるから頑張れるし、ヨシがやれるなら私も、負けたくないという気持ちはあります」と、仲間であり、ライバルでもある存在は、頑張る源となっているようだ。
「同年代が頑張ってることで『自分も頑張らないと』と思うし、心強い」吉田亜沙美
その吉田は、今シーズン、新しい環境で挑戦している。というのも、スターターの座を後継者の藤岡麻菜美に託し、自身はバックアップメンバーとして試合に出場しているのだ。
「今は少しでも流れを変えるのが役割。でも、キャプテンとしてチームをを引っ張ること、ポイントガードとして試合を作ることは変わらないです。バックアップの難しさやスタートとは別の緊張を感じるなど、いい経験ができています」と、新たに学ぶことは多い。
アジアを代表するガードだが、「一番は体力面。20代とは違います。ベテランと言われている選手たちはそれとどう付き合っていくかですよね(笑)」と、30代ならではの苦悩も語ったが、「同年代が頑張ってることで『自分も頑張らないと』と思うし、そういう存在がいるのは心強い。よりどころになっています」と、同世代の活躍は、吉田にも大きな影響を与えている。
他にもトヨタ紡織の野町紗希子ら昭和生まれの選手たちはWリーグに10名。幾多の経験を重ねながら、いぶし銀のプレーを見せる昭和の星たちは、こらからも輝き続ける。
文=田島早苗