【皇后杯】「自分たちが弱いことがちゃんと分かった」チームの現在地を再認識し決意を新たにする富士通・町田瑠唯

キャプテンとして司令塔としてチームをけん引する町田瑠唯[写真]=加藤誠夫

「第96回天皇杯・第87回皇后杯 全日本バスケットボール選手権大会」のファイナルラウンド女子準々決勝(国立代々木競技場第二体育館にて開催)、皇后杯7連覇中のENEOSサンフラワーズに富士通レッドウェーブが挑んだ。

 試合は第1クォーターから互角の展開。しかし、ENEOSは第1クォーター残り3分半で渡嘉敷来夢がケガによる退場というアクシデントに見舞われてしまう。それでも後半、この試合22得点の宮澤夕貴らが奮起したENEOSが78-59で勝利。富士通は後半に得点が伸び悩み、女王に一矢報いることはできなかった。

 試合後、富士通の司令塔である町田瑠唯は、「悔しい気持ちがあります…。向こうの勢いにやられていた感じがしました…」と静かに言葉を絞り出した。

 今シーズンは、昨シーズンまで9シーズンともに戦ってきた篠原恵、山本千夏が引退。2人が抜けた穴の大きさは分かった上での戦いだった。

 若くなったチームにおいて、プレーでも言葉でもけん引しているのが町田と篠崎澪だ。ともにベテランの域に入っているガードコンビが獅子奮迅の活躍を見せながら戦っているものの、今シーズンはここまで勝っても負けても歯がゆい試合が続いている。

「今は篠崎さんと私とで何かあったら教えたり、伝えたりしているのですが、昨シーズンまでは篠原さんと山本さんもいたので、そこがうまく分担できていました。例えばセンターにはセンターなりの気持ちがあるので、そこを篠原さんがしっかり言ってくれていました。ポジションが同じだと説得力もあるので、そういったところでも(2人抜けた穴は)大きいなと感じています。しっかり伝えることができているのかどうか、難しいなと思いますね」と町田は言う。

「自分のプレーよりも周りのことを見てしまっていて、教えること、伝えることで精一杯なところはあります。自分のやりたいプレー、納得のいくプレーが(今シーズンは)全然出せていないです」と自分自身のプレーの調子が上がらないこともまた、町田が苦しんでいる要因だ。

 ENEOSとの準々決勝、「収穫は?」という問いに「いいところはなかったですね」と町田。加えて「自分たちが弱いということが“ちゃんと”分かりました。今までは、『渡嘉敷さんがいる』『ENEOSは女王だ』ということで常にチャレンジャーとして戦っていたけれど、渡嘉敷さんがケガでいなくなり、(ケガで不出場の主力がいる中)それでもやられてしまう。今のチームの弱さがすごく分かりました」とも語った。

皇后杯の結果はベスト8となった富士通レッドウェーブ[写真]=加藤誠夫

 だが、落ち込んでばかりもいられない。「自分のプレーだけに集中出来たらよいのかもしれないですが、もうそういう立場でもないので、うまくみんなを見ながら、教えながらやっていきたいと思います」と町田は前を向く。

「頑張ります」と言い会場を後にした彼女の肩にのしかかる負担は大きい。だが町田はそれをしっかりと受け止めている。1月から始まるWリーグ後半戦に向けて。戦いが続く限り、町田の闘志の火は消えない。

文=田島早苗

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