【皇后杯】ENEOSの頼れるキャプテン・岡本彩也花。ケガをした仲間たちに「優勝を届けたかった」

皇后杯の表彰式でメダルを掛け合う岡本と渡嘉敷[写真]=加藤誠夫

 12月20日、「第87回皇后杯全日本バスケットボール選手権大会」皇后杯ファイナルラウンド女子決勝が行われ、ENEOSサンフラワーズがトヨタ自動車アンテロープスを相手に、後半に逆転勝ちを収めて25回目の優勝を飾った。

 優勝会見の席で「(トヨタ自動車は)オフェンスリバウンドが強いので、全員でボックスアウトをしよう、高さで負けている分、平面、スピードで勝負しようということで試合に入りました。最初はボックスアウトができていなくてリバウンドを取られてしまったのですが、後半立て直すことができ、センター陣が頑張ってリバウンドに参加してくれたことで良い流れができたと思います」と試合を振り返ったのはENEOSのキャプテンを務める岡本彩也花。チームはケガ人が多く苦しい台所事情となったが、自身は決勝で40分間フル出場。20得点11アシストをマークし勝利に貢献した。

 その岡本は、会見の席で8連覇のプレッシャーについて問われると「正直、プレッシャーに押しつぶされそうでした。この(ファイナルラウンドの)3日間、全然寝られなくて、負けたらどうしようって思っていました」と本音を語った。

 そんなとき、相談するのはやはり同期の渡嘉敷来夢。準々決勝で膝のじん帯断裂という大ケガを負い、「本人が一番つらいけれど」と気遣いながらも「不安なんだよね」と話をしたという。その時、渡嘉敷から返ってきた言葉に岡本は吹っ切れるキッカケをもらう。

「もうなにも失うものないでしょ、自分がいないんだから」(渡嘉敷)

「なんか『そうだよね』って思って(笑)。周りは渡嘉敷がいなくなったことで、(相手チームが)ENEOSに勝てると思ったと思うんです。でもそれは、自分たちがどれくらいできるのかということを試されている気がして。『これは勝たないといけないな、みんなをびっくりさせないといけないな』と思いました」と岡本は言う。

 渡嘉敷とは同級生で桜花学園高時代からのチームメート。『喧嘩するほど仲が良い』ということわざがピタリくるような2人は、ここまでうれし涙や悔し涙を一緒に流してきた。

「ケガをしている選手が多いので、勝ってあげたいというか、自分のためでははく、その人たちに優勝を届けたいという気持ちで戦っていました」という岡本、中でも渡嘉敷への思いは特別であっただろう。渡嘉敷本人はもちろん、岡本のショックも計り知れない。それでも、彼女はキャプテンとして、フロアリーダーとしてコート内外で気丈に振る舞い続けた。

スピードと勝負強いシュートでチームを盛り立てた岡本[写真]=加藤誠夫

 今年は新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、表彰式でのメダル授与はこれまでとは異なり、台上にあるメダルを選手自らが取り、首に掛けるスタイルとなった。だが、前後で並んでいた岡本と渡嘉敷は互いにメダルを掛け合った。「実はその時からもう泣きそうでした」と岡本。表彰式ではキャプテンとして皇后杯を受け取ると、それを渡嘉敷に渡した。通常なら優勝チームのアナウンス後に杯を掲げるのはキャプテンなのだが、その大役を渡嘉敷に託したのだった。
 
 そこには、ケガで戦線離脱となったものの、ベンチから大声で仲間を激励し続けた渡嘉敷への感謝や一緒につかみ取った優勝だという岡本から渡嘉敷へのメッセージだったのではないか。多くの言葉はいらない。「優勝はENEOSサンフラワーズ!」のアナウンス後、渡嘉敷は、岡本から受け取った皇后杯をしっかりと持ち、高く掲げた。

文=田島早苗

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