レギュラーシーズンの3分の2が終わり、Bリーグの各クラブは5月11日から始まる『B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2017-18』進出に向け、大切な終盤戦を迎えている。各地で熱戦が繰り広げられているが、強豪ひしめく東地区において、首位を走るのがアルバルク東京だ。開幕前に日本バスケットボール協会でテクニカルアドバイザーを務めていたルカ・パヴィチェヴィッチ氏を新たにヘッドコーチに招聘し、外国籍選手も一新するなど、2シーズン目のBリーグを迎えるにあたり、クラブのバージョンアップを図ったA東京。今回、悲願のBリーグ制覇に初優勝に向けて、キーとなる3選手にたっぷりとお話を聞く機会を得た。その2回目は馬場雄大選手。学生プロとしてキャリアをスタートさせた馬場選手の現在地を改めて聞いた。
取材=バスケットボールキング編集部
写真=加藤誠夫
卒論の題材は「ダンクシュートの有用性と勝敗について及ぼす影響について」
――今シーズンは学生プロとしてプレーされていましたが、卒業はバッチリですか?
馬場 1月18日に卒論発表会があり、あとは卒業式を待つのみです。
――おめでとうございます。発表会はどうでしたか?
馬場 スーツを着て、結構かしこまった雰囲気の中で、担当の先生の前でプレゼンをしました。パワーポイントを使ったものなのですが、同じゼミの人たちも教授の後ろに座って見ていました。
――卒論の内容は?
馬場 バスケットボールコーチング論を学ぶ研究室だったので、「ダンクシュートの有用性と勝敗について及ぼす影響について」です。
――いかにも馬場選手らしい題材ですね。筑波大学で同期だった杉浦佑成選手(サンロッカーズ渋谷)と青木保憲選手(川崎ブレイブサンダース)の進路も決まりました。
馬場 よかったです。自分のことのようにうれしく思います。
――これからは本格的にライバルになるわけですね?
馬場 これまで2人とは戦ったことがなかったんですよ。高校時代も2人が卒業した福岡大学附属大濠高校とは対戦経験がなかったので。互いにBリーガーになったわけですから楽しみですね。渋谷にしても川崎にしても、同じ地区になれば対戦も多くなります。
――とはいえ、プレイングタイムを獲得しなければいけないわけですが。
馬場 そうですね。川崎には(篠山)竜青さんと(藤井)祐眞さんが同じガードのポジションにがっちりいます。青木にとって厳しいとは思いますが、どのように(時間を)つかんでいくのかにも興味があります。
――杉浦選手は即戦力として期待されています。
馬場 杉浦はすでにもう結構出ていますから、マッチアップも含めて楽しみです。
シュートは入るか、入らないかではなく、流れの1つであり、打つことに意味がある
――これまでは学生との掛け持ちの中で初めてBリーグでプレーをしていますが、前半を振り返っていただけますか。
馬場 ひと言で言えば、『正解』だったと思います。外国籍選手と初めてプレーすることで、スペースが狭いなとも思ったり、色々悩んだりして、当初はてこずりました。その中でルカ(パヴィチェヴィッチ)コーチも使ってくれますし、1試合1試合、吸収する事も多くて充実しています。
――今ルカHCに一番教わっていたり、アドバイスもらっていることは何ですか?
馬場 オフェンスだけでもダメ、ディフェンスだけでもダメというのがルカHCの考えです。その両方をアグレッシブにできる選手はなかなかいませんが、「お前は(それができる)1人だ」と言われています。今は特にハードなディフェンスを教わっているところです。
――ルカHCの考えは、ディフェンスなら「1対1でガチッと守れ」だと思います。HCの求めているところのどれくらいできていると思いますか?
馬場 自分ではわからないですけど、失点を見ている限りだと結構頑張って抑えられている部分も出てきました。多少はルカHCの求めているところはできているかなと感じています。
――スタッツ的に意識しているところはありますか? 1試合で何点取るとか。
馬場 今はしてないですね。一番はチームの勝利の力になれるようにプレーしているので、内容の方を意識します。スタッツは意識しません。
――内容を意識するとは具体的にどういう事ですか?
馬場 「(シュートを)打つべきところで打つ」であったり、スキルの面だったら練習してきたことを体現できているかではないでしょうか。それは結果が伴わなくともやっていることができていれば思いますし、反対に結果が伴えば、特に数字は気にしていませんね。
――「打つべきところで打つ」ということは、高校、大学でも課題にしてきたことだと思います。
馬場 ルカHCはシュートが苦手なころから「打て」とアドバイスされています。「お前はシュートが下手ではないから」と、日本代表合宿でも言ってくれました。「チャンスがあれば打て! それが入るか、入らないかではなく、流れの1つであり、打つことに意味がある」とも言われています。今までは「決めに行け」と言われていました。これは今まで教わってこなかったことで、だからちょっと違うところだったかなと。ここに来て、ちょっとずつ決められるようになっているので、成果は出ていると思います。
――実戦でも鍛えられ、練習でも鍛えられる感じですね。
馬場 さらに反復練習を繰り返しって感じですね。
――逆に一番注意されることは何ですか?
馬場 なぜか気が抜ける時があるのです。ボーっとしている時があるようで、試合でも練習でも「準備しろ! 準備しろ!!」と言われますし、試合中でも「起きろ」と言われたりします。
――以前聞いた時は、ターンオーバーを注意するように言われていたと思います。
馬場 試合に集中するとターンオーバーは減ります。
――性格ですか?
馬場 そうですね、ボーっとしちゃうんですよね。
――それはスタミナ不足も原因ですか?
馬場 疲れると(集中力が)散漫になってしまいます。集中する時はいいのですが。自分でも集中している時はパフォーマンスがすごいかなと思いますけど。
――卒論でも題材になっていた“スラムダンク”を期待するファンも多いと思います。でも、自分としては、「それだけではないんだけどなあ」と思ったりもしますか?
馬場 僕の中では、ダンクを特別視してなくて。行ける時は常に行く感じです。ダンク以外のところも見てほしいとは特別思いませんが、ダンクをするとアリーナは盛り上がりますし、その1つで勢い与えるプレーとして大切だとは思いますが、今までできなかったことがコート上でできるようになったところも見てほしいですね。
――具体的にどの辺ですか?
馬場 外角シュートとかピック&ロールの使い方、特に外国籍選手との合わせです。
――このあたりも学生では分からない部分ですね。
馬場 Bリーグでプレーすることで、平面的な部分だけでなく、空間の使い方も違うことが分かります。それらが少しずつ見えてきたというか、この選手ならこのパスを取ってくれるだろうなということも把握してきたつもりではいるので、少しずつ順応しているのは確かです。
――代表活動をしながらのシーズン、代表の公式戦がシーズン中にあるというのは初めてです。疲労はいかがですか。
馬場 自分としては初めてのシーズンなので以前が分からず、これがスタンダードだと感じていますね。オフがあまりなくて大変だなと思いますが。
――大学の勉強もあります。
馬場 それが自分で選んだ道です。
――ルカHCが求めるものと、代表でフリオ・ラマスヘッドコーチが望むプレーには違いがあると思いますが、その使い分けはできていますか?
馬場 しっかり分けられていると思います。ルカHCのバスケは染み込んでいるところもありますし、求めるところもわかってはいるつもりです。また、ラモスHCはプレースタイルが違うので、アジャストするのに難しいところもありますし、今なかなか結果につながらないのですが、しっかりできるようになりたいです。
――シンプルに考えれば、代表でもアルバルクでも求められているのは「アタックすること」ではないでしょうか。
馬場 そうですね、アジアカップの時にちょっと消極的になって、僕が使われなくなったってことがあったんですが、昨年11月のフィリピン戦とオーストラリア戦で気持ちの切り替えができて、Bリーグも3カ月たっての試合ということもあったので、そこで変わった部分を見て使ってもらえるようになったかなって思います。
――では、自分として成長しているシーズンですね?
馬場 はい!
――Bリーグでは色々な選手とマッチアップをしていますが、自チーム含めて「この選手はすごいな」と思ったことありますか?
馬場 同じチームの(田中)大貴さんと比江島(慎/シーホース三河)さんです(即答)!
――究極の2人のように感じますが。
馬場 どちらかというと比江島さんが厄介です。大貴さんは毎日練習をしているので、最初は大変だったですがここに来て慣れてきたというか。しかし、比江島さんはちょっと…。
――比江島選手の何が大変?
馬場 スイッチがオフの時は本当に簡単です(笑) 今はスイッチが入っているかどうかも分かるようになりました。そこははっきりしていますから。ただ一旦“プッ”とスイッチがいると手がつけられません。単に1対1なら対応できるのですが、スクリーンの使い方や駆け引きなどもめちゃくちゃ上手いんです。入っている時はガンガン来ますし、特に代表戦ではすごいです。日の丸を背負って戦う時は常に全開で、とても本当に頼もしいですし、見て学ぶところがあります。
<後編に続く>