「千葉県内で台風の影響で大変な思いをしている方々がいる中で、こうして試合ができたことに感謝しています。選手たちにも『感謝の思いを持ってプレーすること』、『気持ちが伝わるプレーをして、最後まで諦めずにプレーし続けること』は伝えました」
9月14日の「B.LEAGUE EARLY CUP 2019 KANTO」の1回戦後、川崎ブレイブサンダースの佐藤賢次ヘッドコーチが口にした言葉だ。
ともにケガ人を抱え各チーム8名での試合を強いられたが、川崎はサンロッカーズ渋谷に8点差で敗戦。それでも、試合終了残り6秒で66-74というほぼ勝敗が決定した中でも、選手たちはフロントコートからディフェンスを仕掛け、最後までボールを追いかけた。
「気持ちの部分では、しっかり伝えることができたのではないかと思っています」。敗れはしたが、佐藤HCは選手たちを称えた。
今シーズンから川崎に加入した大塚裕土は、先発に名を連ねて約23分間コートに立った。約2カ月間チーム全体で注力してきたディフェンスの部分では「いい時間帯も作れました」と手応えを口にしたが、オフェンスでは7得点と振るわなかった。持ち味の3ポイントシュートは「出だしから焦って打ってしまった」と、計6本中ネットをくぐったのは1本。だがその1本は、最後に川崎のスコアボードを動かした。
第4クォーター残り7秒、スコアは63-74。鎌田裕也がオフェンスリバウンドで競り合い、そのこぼれ球を拾った藤井祐眞からコーナーにいた大塚へパスが渡った。この直前にも3ポイントを放っていたが決められず、大塚にとっても川崎にとってもこれがこの試合最後のシュートだ。大塚は藤井からパスを受けると、これまでの素早いタイミングではなく、キャッチしてから“一拍置いて”3ポイントを放った。
「自分としても丁寧に打った感じはありました」
シュートは水物ではあるが、大塚がこの試合で決めた1本の3ポイントは、試合前の指揮官の言葉を遂行し続け、最後まで諦めずにプレーし続けた結果が生んだ3点だった。
🏀試合速報🏀
9/14(土)
vs #サンロッカーズ渋谷試合終了
川崎 66-74 SR渋谷ハードに練習してきたディフェンスとリバウンドを最後まで貫きましたが、終盤にショットが決まらず敗戦。
横浜との5位決定戦にまわることになりました。#川崎ブレイブサンダース#Bリーグ#アーリーカップ pic.twitter.com/nutIdzVxtA— 川崎ブレイブサンダース⚡️川崎からバスケの未来を⚡️ (@brave_thunders) September 14, 2019
「いい時もあれば、悪い時もある。今までそういった中でシーズンを過ごしている」と、32歳となったシューティングガードは言う。当然、この先プレータイムをどれだけもらえるかも保証されていない。川崎には日本を代表するシューター・辻直人もいる。
大塚自身は「今は試合に出れていますけど、辻(直人)選手も帰ってきますし危機感はあります」と口にするが、ここまでの新天地での日々を「ハードに練習もできて、いい2カ月を過ごせています」と胸を張る。
「明日も収穫がある試合をしたいです。外国籍選手や代表メンバーがそろってないですが、このメンバーなら十分に戦えると思います」
新天地でも必要不可欠な存在となれるか。大塚裕土の新たな挑戦は、まだ始まったばかりだ。
文=小沼克年