今シーズンから活躍の場を秋田ノーザンハピネッツに移した細谷将司にとって、横浜ビー・コルセアーズはBリーグ開幕から3年間在籍した古巣だ。
「海賊マーシーから、桃色マサシになりました。細谷将司ー!!」
試合前の選手入場、横浜の豊嶋彬MCからそうアナウンスされると、秋田の背番号6は「センスないな(笑)。もうちょっと違う例えはないのか」と首を横に振りながら笑顔でコートに入った。横浜のブースターからも温かく迎えられ、会場は大きな歓声に包まれた。
古巣凱旋——。嫌でも自然と力が入る。前田顕蔵ヘッドコーチは横浜との第2節、前節先発した伊藤駿ではなく、細谷を先発ポイントガードに起用した。「スターターは特に固定していませんが、細谷選手に関しては(横浜への)想いがあったと思うので、ベンチからではなくスタートから出場させました」と、指揮官の愛情もあっての先発起用だった。
173センチのポイントガードは、試合開始から元チームメートの橋本尚明、田渡凌らと「バチバチ」のマッチアップを繰り広げた。また、第1クォーター1分43秒には2本のフリースローを獲得すると、選手入場の時とは打って変わって横浜ブースターから大ブーイングを受けた。これには「笑っちゃいましたね」と細谷。しかし、しっかりと2本とも決めきり、試合後はご満悦な表情を見せた。
「不思議な感覚でしたね。ワクワクした気持ちで臨めましたし、すごく楽しかった」と古巣との一戦を振り返った細谷だが、前半で3つの反則を宣告されてファウルトラブルとなり、チームに迷惑をかけてしまった。
前田HCが「細谷選手がファウルトラブルになって、そこからチームが崩れだした」と悔やんだように、秋田は後半にペースを握られ60-75で敗戦。細谷自身も「リズム的には自分の中でもよかったですけど……。(審判のジャッジに)しっかりと対応しなければいけなかったです。僕自身がポイントガードとしてリズムを作れなかったのは反省点」と唇をかんだ。
ディフェンス主体のスタイルは変わらないものの、前田新HCのもと細谷を含む5選手が新加入した今シーズンの秋田。司令塔としてチームをコントロールしなければいけない細谷も「まだまだチームの良さなどを理解しきれていないです。フォーメーションの中で誰を使うのか、どのタイミングで自分が行くのかのバランスもまだまだです」と正直に言う。
「もう3試合消化したので、日々コミュニケーションをとって改善していかないと手遅れになってしまう。そこを強く意識してこれからもやっていきたいです」
細谷にとっての古巣対決は、後半に23得点しか奪えず前節から2連敗となった。次戦はホームに戻りリーグ2連覇中のアルバルク東京を迎え撃つ。チームの新司令塔は、“クレイジーピンク”を味方につけられる16日の試合へ向け、「早くホームで試合がしたいです。この連敗を止めなきゃいけない」と意気込んでいる。
文=小沼克年