【 #B飛躍の5年目へ 】千葉ジェッツ・大野篤史HC「見ていて面白いバスケットをすることが僕らの責任」

千葉ジェッツを率いて5年目となる大野HC[写真]=B.LEAGUE

 10月2日から開幕するBリーグ。B1に所属するクラブは昨シーズンの18から2つ増えて20となり、それにともなって東西2地区制へと変更となった。また、ベンチ入りできる外国籍選手が2選手から3選手になるというルール変更が行われたため、開幕5年目を迎えるBリーグでの戦い方は、大きく変化すると想定される。そこで、バスケットボールキングでは、B1全20チームのヘッドコーチにインタビューを行い、今シーズンの戦い方や目標などを聞いた。

 第17回は、悲願のリーグ制覇を目指す千葉ジェッツの大野篤史ヘッドコーチ。Bリーグ初年度からチームを率いる指揮官のもと、あと一歩のところで逃してきた栄冠をつかむことはできるのか。

インタビュー・文=峯嵜俊太郎
取材日=9月2日

――昨シーズンは28勝12敗で東地区3位でした。
大野 チームづくりに時間がかかり、序盤に自分たちのプレーができなかったことは残念でした。そしてチームが良くなってきた時に新型コロナウイルスの影響でリーグが中止となり、とても残念なシーズンだったなというのが率直な感想です。

――シーズン序盤に勝利を重ねられなかったのは、どこに要因があると思いますか?
大野 新しいプレーを採り入れた一方で、一番基本となるチームで戦うというメンタリティを作れていなかったと思っています。だからこそ、中盤以降は“原点回帰”というか、自分たちが見せなければいけないものを取り戻すことにフォーカスしていました。その中で、年明けのアルバルク東京戦ではすごくいい試合ができて、選手たちも「今年もやれるぞ」という自信を持ち、チームは上り調子にあったと思います。

――中盤以降は、コー・フリッピン選手や藤永佳昭選手のチームへのフィットも素晴らしかった印象です。
大野 アキ(藤永)はもともと努力し続ける姿勢が素晴らしい選手でしたが、ルーキーでもあったコーにはプレー面のことに限らず、試合に向けたメンタルの持って行き方なども含めて、彼の成長のためにもさまざまな話をしました。個人的に選手が1年でも長くキャリアを積めることを一番大事にしていて、いつか別れる時が来るとしても関わった選手に1年でも長くプレーしてほしいと思っているので、そのために必要なことをコーには話しました。

――上り調子ではありつつも課題もあったかと思います。
大野 課題は挙げればキリがないですね。ディフェンスのポジショニングだったり、オフェンスの合わせだったり。細かい部分の徹底がおろそかになってきていたので、今シーズンは改善したいと思います。展開の早い、見ていて面白いバスケットをすることが僕らの責任だと思うので、そこを目指してやっていきます。

――今夏の移籍市場はどのような狙いを持って臨んだのでしょうか?
大野 トランジションのディフェンスに課題がありましたので、ディフェンシブかつ機動力のある選手がほしいと思っていました。また、マイク(マイケル・パーカー)が移籍することとなったため、ボールタッチの時間が短くても効率的で、リバウンドで貢献できるプレーヤーが必要でした。

 その中で最初にいいと思ったのがセバスチャン・サイズ選手です。ディフェンスのインテンシティはもちろん、もっとうまくなりたい、勝ちたいと思ってプレーする競争力のある選手がほしいと思っていて、そこは佐藤卓磨選手も同じです。

――同じく新加入のシャノン・ショーター選手は、大野HCが広島ドラゴンフライズでアシスタントコーチを務めていた際に共闘していた選手です。
大野 今の時代、一人のボールハンドラーに頼っていてはゲームがなかなか進まないので、サイズのあるボールハンドラーを探していました。シャノンはバスケットに対して非常に情熱的で、練習からタフにやれるところが好きでした。先ほども言いましたが、競争力は絶対に必要だと思っていて、そうした選手が入ることでチームの士気も高まっていきます。今回の移籍で来てくれた選手たちには、そうした部分を期待しています。

――サイズのあるガードという意味では、赤穂雷太選手も新たに加入しました。
大野 もともとポテンシャルの高さは知っていたので、彼からもっといいプレーを引き出せるという判断で獲得しました。本人にも言っていることですが、「今、赤穂雷太ってどんな選手?と言ったら、なんでもそこそこできる選手だよね、というのが大方の評価だよ」と伝えています。そこから「赤穂雷太ってこういう選手だね」と言われるように、何を武器として戦っていくのかを探そうと話しています。

新たなルールにアジャストメントしていかないと生き残っていけない

――大野HCがチーム作りをする上で大切にしている信念や考え方はありますか?
大野 組織を作る上で目的は成果を生み出すことだと思っています。僕たちの成果は、“勝利”と“ステイクホルダーの皆さんに喜んでもらうこと”です。ブースターの皆さんやスポンサーの皆さん、コミュニティの皆さんに応援されるチームにならなければならない。そういうところにフォーカスできるようにと選手に伝えています。

 それに加えて僕が来てから言っているのは、チームカルチャーを作りたいということ。エナジーのないプレーをする選手を誰が見たいのかと。そのためにもハイエナジーで練習をする。練習でやったことしか試合では出ないと、口酸っぱく言っています。

 もう一つはタフになること。タフにならなければ、応援されるチームにはなれません。自分たちがタフかタフではないかを問われた時に、「今日はタフだったね」「昨日はタフではなかったね」という判断はない。タフな人間か、タフではない人間かの二つに別れるんです。タフではないと思う部分があるのであれば、どんどんタフにならないといけない。

 あとはStay Together、仲間を大切にしようと。ともに戦う気持ちがないのを誰が見たいのか、誰が応援したいのかという部分を強く言っています。

――今シーズンは、リーグ全体としてガードポジションやウィングポジションに外国籍選手が増えました。こうした変化をどのように捉えていますか?
大野 新たなルールにアジャストメントしていかないと生き残っていけないと思います。2地区制もそうですけど、外国籍選手のレギュレーションの変化にも対応して、それをアドバンテージに変えられるようにしていかなければいけません。

 個人的にはアウトサイドの外国籍選手が来ることは大賛成です。ビッグマンで争うだけではなく、バックコートの日本人選手の相手が外国籍選手になることは、日本代表にとってもプラスになってくると思うので。

――それでは最後に、ブースターの皆さんにメッセージをお願いします。
大野 困難な状況の中、多くの方に応援してもらい、支えてもらっているので、その分結果でしっかり答えないといけないと思っています。リモートマッチになっても、応援してくださる皆さんに何かを伝えられるように、フロントとチームが一丸となって話をしているので、末長く応援してください。

互いに競争しつつも、仲間を大切にするチームを作り上げていく[写真]=B.LEAGUE

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