苦戦が続くA東京でルーキー小酒部泰暉が躍動、先輩が語る彼のポテンシャル

アルバルク東京の小酒部がチームの危機を救う? 高いポテンシャルを発揮する時が来た [写真]=B.LEAGUE

 アルバルク東京小酒部泰暉の活躍が目覚ましい――12月3日に開催されたサンロッカーズ渋谷との第2戦でベンチスタートながらドライブで切れ込み、キックアウトパスを受けての3ポイントシュート、さらにはリバウンドにも果敢に絡むなど、22分の出場時間でチームハイとなる17得点5リバウンド4アシストをたたき出した。いずれもキャリアハイの成績だ。とりわけ、結果的に相手の208センチ、チャールズ・ジャクソンに阻まれたが、第3クウォーターに左45度付近からドライブでペイントエリアに侵入し、187センチの体を躍動させてダンクを狙ったシーンは、会場が思わず息を呑むほどであった。

 ただ104-80で勝利した試合後のヒーローインタビューでは場慣れしておらず「いや、本当に嬉しい、というか……めっちゃ緊張してます。すみません!」と、コート上での様子とは対照的だった。それでもゲームの話に及べば次のように言い切った。

「昨日、負けて本当に悔しかったです。昨日より自分がアグレッシブにディフェンスで入っていければ、チームの流れを変えられると思っていました。昨日以上に頑張った結果が、こういう結果につながったと思います」

初のヒーローインタビューではシャイな一面を披露 [写真]=B.LEAGUE


 またスタッツに目を向けると、第1戦は負けただけではなく、自身もフィールドゴールが1本に終わっていた。それを思うと、チームに貢献できなかった悔しさ込みの言葉にも受け取れた。

 記者会見では「昨日までで気持ちは切り替えています。同期入団の平岩(玄)選手には『あした、あした』という感じで声をかけてもらいました」とも明かしている。バイウィーク明け、チームの黒星が先行した中で、彼が12月6日の琉球戦から20分以上の出場時間を得て、わずか4試合目で勝利の原動力になったことは、地区7位と苦戦が続く王者にとっても大きな収穫となったに違いない。

 振り返れば、高校時代まで全国の舞台は未踏だった選手だ。しかし進学した神奈川大学バスケットボール部では秋のリーグ戦で得点王に輝き、年代別の日本代表にも選出されるなど、一気に頭角を現した。そしてバスケ部を退部し、大学在学中ながら2019-20シーズン途中に特別指定選手としてA東京へ加入。今シーズンで2シーズンを迎える。

 もっとも開幕当初からベンチを温めることが多く、出場時間は多くても10分程度だった。だがここ4戦を見てのとおり、コートに立てば思い切りのいいアタックやアウトサイドショット、守備でも貢献を示している。12月9日の秋田戦では出番が増えてきた理由として「気持ちの部分から(ゲームに)入っています。相手にシュートを簡単に打たせないなど、ディフェンスが少しずつできはじめているので、少しずつプレータイムが延びるていると思います」と語った。いままで準備をしてきたことが、開花しつつある。

 先輩である田中大貴は現在の彼の様子、そして送ったアドバイスについて自身の体験を踏まえて、次のように話している。

「小酒部選手は今ステップアップして、すごいチームにエネルギーを与えてくれています。若い選手にいろいろと難しいことを言ってもしょうがないと思うので、もう思い切りやるようにと伝えています。自分も若い頃はそうやらせてもらいました。彼なんかは“試合に出れば出るだけ成長していく選手”だと思うので、そういった意味では、ある程度のミスは仕方がないと思っています。思い切りが大事ですね」

 まだ数試合であるが、コート上で披露したパフォーマンス、さらにはダンクを狙いにいくような積極的な姿を見ると、先輩たちのアドバイスを吸収しながら、プレーできている証と言えるだろう。もちろん勝負の世界である。これまでも経験していると思うが、活躍と比例して相手のマークも厳しくなる。きっと上手くいかなこともあるだろう。それでも多少のミスに目をつぶってくれて、思い切りやるようにと言われることはある意味、ルーキーの特権とも言える。

 ファンの前でスピーチした「今日は勝ちましけど、今日以上にもっともっといい試合ができるよう頑張ります」という言葉を大いに期待したい。小酒部泰暉のポテンシャルはまだまだこんなもんじゃないはずだから。

田中大貴は「すごいチームにエネルギーを与えてくれています」と高評価 [写真]=B.LEAGUE


文=大橋裕之
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