「SoftBankウインターカップ2018 平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」男子1回戦の好カード、桜丘高校(愛知県)vs県立広島皆実高校(広島県)。試合は最終スコアこそ9点差となったが、第2クォーターから相手を突き放した桜丘が、後半の大半を20点前後の点差で進め初戦を突破した。
実はこの試合、桜丘はとあるアクシデントに見舞われていた。江崎悟コーチは第1クォーターが21-18と拮抗したのも、そのせいでもあると言う。気がかりだったのは、同クォーターで本来先発で出るはずのラポラス ベンツロバス(2年)、またはセン マム リバス(1年)の留学生が終始ベンチに座っていたこと。試合後にその理由を尋ねると、なんとも予想外の言葉が返ってきた。
「実はですね……」と、やや恥ずかしそうに切りだした江崎コーチ。「気になったでしょ? 荷物の運搬トラブルで2人のユニフォームがなかったんです」
「荷物は(宿舎に)事前に送るわけだ。その荷物の中に2人のユニフォームを入れたわけよ。でも、親(保護者)が『ユニフォームはちゃんと自分たちで直接持っていくものでしょ?』って勘違いして。ユニフォームを荷物のバッグの中から取って、マネージャーに渡したわけよ。そこでマネージャーがあの2人に渡してればよかったのに、何かの伝達ミスでそのまま学校の更衣室にあるわけ。今朝になって『ない!』ってなって……」
この日のゲームは15時40分からの第5試合目。もし午前中の試合だったら、と考えるとゾッとする話である。2人のユニフォームは学校のある豊橋市から何とか車で届けられ、第2クォーターに間に合った。真面目なロバスは、この影響でナーバスになってしまい、試合中もゴール下のノーマークを外すなど終始浮かない表情。だが、一方のリバスは第2クォーターだけで10得点をマークすると、ディフェンスでもゴール下を支配。試合をとおして27得点16リバウンド3ブロックの活躍を見せた。
「勝ったから笑い話になるけど、冗談じゃないって話だよ(笑)」(江崎コーチ)
エースの富永啓生(3年)は、“事件”当日の朝の状況をこう振り返った。「ホテルの雰囲気はヤバかったです(苦笑)。監督に言おうか言わないか迷ったんですけど、どっちみちバレるから言おうってなって……。でもそんなに怒ってなかったです」
その富永。試合では両チーム最多得点を記録したが、プレーを見る限り本調子ではなく、3ポイントに至っては14分の2とお世辞にもいいとは言えない数字だった。しかし、江崎コーチが「ドライブして中から点を取れ」との指示を遂行し36点を積みあげた得点能力は、流石の一言に尽きる。本人も次戦に向けては「修正できます」と問題ない様子であった。
3年ぶりのウインターカップ初戦は、コート外の思わぬアクシデントに振り回された桜丘。次の相手は高知中央高校(高知県)に決定し、試合は中1日空いて25日に行われる。次戦は試合開始から本来のバスケットを披露してくれるだろう。
文=小沼克年