河村勇輝(2年)はコート上で誰よりも速かった。
12月23日から1週間わたり熱戦が繰り広げられた「Softbankウインターカップ平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」。男子は福岡第一高校(福岡県)が初戦から中部大学第一高校(高校総体2/愛知県)との決勝戦までの5試合全てで20点差以上をつけ、2年ぶり3度目の頂点へと駆けあがった。
司令塔を担う河村は福岡第一の真骨頂である“走るバスケット”を中心で体現し続け、大会をとおして計38本(1試合平均7.6)のアシスト、17スティール(同3.4)を記録。東海大学付属諏訪高校(長野県)との準々決勝では、10得点10リバウンド15アシストの“トリプルダブル”も達成した。河村は決勝戦後、日本一を手にした喜びを口にしながらも、「去年は悔しい思いをした」と話す。その悔しさとは、昨年のウインターカップ準決勝の福岡大学附属大濠高等校戦だ。この試合は58-61で福岡第一が敗れ、決勝進出を逃した。
「去年の大濠さんとの準決勝は自分が1年生でガードとして出場したんですけど、3ポイントが10分の0で……。スタッツを見るとやっぱり自分がチームを負かしてしまって、そこからずっと悔いが残っていました」
3点差ということもあり、当時1年生ながら河村は自分を責めた。しかし、「その3ポイントが課題として残っていて、この1年間ずっと3ポイントの練習をしてきました」と明かし、「この決勝もそんな確率は良くなかったですけど、2本くらいはシュートを決めれたので、それは去年の反省があったからこそのシュートかなと思いますね」と述べた。実際、29日の決勝戦では6本中2本の3ポイントを記録し、計5試合の成功率は47.1パーセント。朝と練習後にチーム全体で取り組んだ、それぞれ約1時間のシューティングが実を結んだ形となった。
圧勝して優勝する——。
それはチームで掲げた目標でもあるが、ウインターカップ予選で、最後までもつれる激闘を繰り広げた福大大濠との約束でもある。
福岡第一のスピードスターはライバルへ向け、こうメッセージを送った。
「大濠さんが出ても優勝できるような力はあったと思います。あの試合で自分たちがいい緊張感や責任感ができたからこそ、圧勝できた大会になったと思うので、そこは激戦をやってくれた大濠さんに本当に感謝したいです。でも来年、大濠さんはこの悔しさを晴らそうと自分たちに立ち向かってくるので、自分たちもそれを跳ね返せるようにがんばっていきたいなと思っています」
文=小沼克年