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「Softbankウインターカップ平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」男子準々決勝、初のベスト4入りを目指す東海大学付属諏訪高校(長野県)は福岡第一高校(福岡県)の誇る“えげつない”ファストブレイクに屈し、大会を去ることとなった。
東海大諏訪はウインターカップでは過去7度ベスト4入りを果たしている強豪・福岡第一への対抗策として、2つの策を準備。1つはトライアングル・ツーと言われる守備網で、福岡第一の司令塔・河村勇輝(2年)とエース・松崎裕樹(3年)には厳しいマンツーマンディフェンスを張りつけつつ、ゴール付近のスペースを残りの3人できっちりと守る形で相手の攻撃を封じることに成功した。これは昨年のウインターカップで土浦日本大学高校(茨城県)のエースであった高原晟也(現日本大学1年)対策を講じた際に得た、東海大諏訪のチームとして経験を活かしたものだ。
2つ目の策は速攻を受けるリスクを背負ってでも、オフェンスリバウンドに積極的に飛びこむという選択をしたことだ。福岡第一の誇るファストブレイクを恐れるあまり、他の高校はオフェンスリバウンドでの争いを捨て、自陣へのディフェンスバックを優先するなど安全策を取ることが多い。東海大諏訪は敢えて、逃げずに自分たちの強みでもあるオフェンスリバウンドを奪い取ることでセカンドチャンスを作り、攻撃権を増やすことに活路を見出す策に出た。実際に福岡第一の13本に対し、東海大諏訪が奪取したオフェンスリバウンドは21本。攻撃権を多く得るという事前に準備した目論見どおりの展開となった。しかし、東海大諏訪はこの策によって粘り強く福岡第一の攻撃をしのぐも、インサイドの柱である張正亮(3年)のファウルトラブルと米山ジャバ偉生(2年)が接触により出血するというアクシデントにも見舞われ、ゲームプランの変更を余儀なくされると、積みあげたセカンドチャンスもシュート精度が上がらずに得点に結びつけることが出来なかった。
この隙を見逃すほど名将・井手口孝ヘッドコーチが率いる福岡第一は甘くはなく、破壊力抜群のファストブレイクが立て続けに発動。東海大諏訪はこの攻撃にジワリジワリの心身のスタミナを削られると追いすがる余力をなくし、63-86で敗戦。悲願のベスト4入りはならなかった。
敗れた東海大諏訪の入野貴幸HCは「やろうとしていたことはうまく遂行できていた」と語ると、「ファウルトラブルとジャバのアクシデントが立て続けに重なり、耐えしのげなかった」と悔しさをにじませ、続けて果敢にオフェンスリバウンドに飛びこんでいった点について「試合をとおしてオフェンスリバウンドをがんばれたことは評価できるが、そこからのシュートが、ノーマークの3ポイントシュートも含めて入っていれば……。タラレバですけれど……」と述べて肩を落とした。序盤を接戦に持ちこむも最後に押しきられた相手チームに対し、「福岡第一は、逆に“ここ”ってところ強烈ですよね。あのファストブレイクが。やっぱりわかっていても止められないというあの強さが……。ここというところで決められる福岡第一が強かったと思います」と今大会を席巻する福岡第一の伝家の宝刀に脱帽した。
河村の卓越したコートビジョンとパスセンスが注目されがちではあるが、リバウンドやスティールからマイボールにした瞬間にスイッチが入り、適切なレーンを素晴らしいスピードで走り抜ける受け手の選手たちのランニング技術と最後にシュートまで打ちきる気持ちにも注目したい。厳しい反復練習と河村への信頼がなせる芸術的なファストブレイクは、それを観るためだけでも会場へ足を運ぶ価値が十分にある。理不尽なばかりの速さを誇る伝家の宝刀を手に、福岡第一が一気に栄冠を勝ち取るのか、それとも必殺の武器を止める手立てを持つチームが現れるのか、今年のウインターカップも最後の最後まで目が離せそうにない。
文=村上成