7月28日に開幕した「令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」。いちき串木野市総合体育館の最終試合、男子1回戦、九州学院高校(熊本県)と正智深谷高校(埼玉県)の対戦は、最後まで勝敗の行方の分からない熱戦となった。
九州学院は厳しいディフェンスを武器とするチーム。対する正智深谷も全国の常連として名前の通った強豪だ。試合はティップオフから互いの持ち味を発揮した好ゲームとなる。九州学院は1-2-2のゾーンプレスで正智深谷のボール運びを襲う。攻めては強引と思えるドライブで正智深谷の防御網を突破した。
しかし、正智深谷も試合巧者だ。次第に九州学院のプレッシャーに慣れてシュートを決めていく。前半は34-33と正智深谷が1点リードしてハーフタイムを迎えた。
勝敗の行方を分けたのは第3クォーター。一進一退の展開の中、九州学院は中野友都の速攻で逆転に成功すると、その後も西村仁のスティールから窪田俊祐の速攻などで畳みかけていく。ここで10点ものリードを奪うことに成功した。
それでも正智深谷は決して諦めることなく反撃を試みるが、九州学院に追いつけない。第4クォーター残り時間52秒に九州学院の大内一慶がバスカンを決めたが、これが勝利を決めるとどめとなった。九州学院は14本のスティールを決め、正智深谷に22本のターンオーバーを誘発させた。スタッツを振り返ると、九州学院の圧力の強いディフェンスが奏功したことが如実に物語っているとも言えるだろう。
試合後、九州学院の田中洋平コーチは「40分のうち38分は互角。残りの2分が第3クォーターの終盤。ここで流れを引き込めたのが大きかった」と勝因を語った。「正智さんは全国の常連校。普段通りの試合ではかなわない。それに向けて準備してきたものを発揮してくれたと思う。ただ、逆の結果になってもおかしくない試合だった」と汗をぬぐった。
この田中コーチが全幅の信頼を寄せるのがキャプテンの跡部晃基をはじめとする3年生。「下級生の時から出ていることもあり、私とも意思の疎通ができている。彼らにはいろいろな戦い方をするだけの力もある」。その話を当の跡部に振ると「そうですね」と笑顔で答えた。「準備してきたものをやり切ったと思います。相手も走るチームだけど、そこでは絶対に負けないと思って試合に臨みました」と胸を張った。
また跡部は九州大会でなどで高校バスケ界の強豪である福岡県の2校、福岡第一高校と福岡大附属大濠高校と戦うことで成長できたとも語る。「特に(福大)大濠には練習試合にも行かせてもらいました。アンダーの代表選手もいるよう選手たちとの試合はいろいろ学べました」と振り返った。
そして、田中は今大会の目標を「ベスト8」と見据える。「当たる相手は強豪ばかりですが(2回戦は関西大学北陽高校と対戦)、これまで鍛えてきたものを発揮したい」と初戦に得た手ごたえを発揮するときは間もなくだ。
文=入江美紀雄