2019.07.29

「人ではなく、プレーを守る」…進化する足羽の原点、能力ではなく“脳力”で勝負

足羽はディフェンスで相手を苦しめて勝利を手にした[写真]=佐々木啓次
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 試合後に見せたコーチの笑顔が、嬉しさとともに楽しさを物語っていた――。

「令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会(インターハイ)」の女子1回戦、足羽高校(福井県)は松江商業高校(島根県)を87-64で下して、2回戦に進んだ。

 試合後、チームを率いる林慎一郎コーチが笑顔なのは、勝ったからではない。いや、もちろん近年のインターハイでは思うような結果が出せず、苦しんでいた林コーチからすれば勝ったことも嬉しい。しかしそれ以上に今年のチームは、どこか足羽の原点のようなバスケットを展開している。それはディフェンスで粘って、粘って、粘り抜いて勝機を見出すスタイル。今日の勝因も間違いなくディフェンスで相手を苦しめて、そこが生み出されるファストブレイクだった。そこがたまらなく楽しいんだ。そんな笑顔だった。

この日は第1クォーターから25-9と突き放した[写真]=佐々木啓次

「ディフェンスを重視しているのはサイズが小さくなったから。昨年のチームを経験しているのは杉本(りく)くらい。だから選手たちにも『ディフェンスを頑張らんと、勝てんぞ』と言っているんです」。林コーチはそう語る。

「ただし、小さいってことは守ることに工夫をしなければいけないことでもあるんです。だから今年は2人じゃなく3人、ヘルプじゃなくトラップと言っています」
いわゆる“ギャンブル”的にトラップを仕掛けるのではない。どこに優先順位を持たせるか。試合中、林コーチは「人ではなく、プレーを守りなさい」と選手たちに声をかけていた。それはつまり相手がどんなオフェンスをしているのかを見て、考えて、そのプレーを守りに行くことだ。

「たとえば相手がピック&ダイブをしても、ダイブでやられていなければ、スイッチしてもいいわけです。選手たちはどうしてもディフェンスの形をしたがるんだけど、『このチームがこういうオフェンスだから、こう守らなければいけない』と考える工夫が必要なんです。今年のチームは個々の“能力”はありません。でも、だからこそ“脳力”を使うことが大事なんです」

「小さいってことは守ることに工夫をしなければいけない」(林コーチ)[写真]=佐々木啓次

 個々の能力で劣るのであれば、5人の総合力で戦う。しかも、がむしゃらに足を動かすだけではなく、頭も使って5人で戦う。

「昔の足羽に戻ったでぇ!」

 林コーチはそう笑うが、戻ったのはディフェンスから勝機を生み出すスタイル(形)であって、その中身は間違いなく進化している。

 足羽は29日、東北ブロックチャンピオンの湯沢湘北高校(秋田)と対戦する。比較的サイズの大きいチームだが、負けるつもりはない。

「走り合いでは負けない。オーバーペースにして、自分たちの強み、つまりはスピードで勝負したい。やっちゃろうかなって気持ちです」

 その笑顔が明日も見られるか。

文=三上太

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