「あの15番がね……」
明成高校(宮城県)の佐藤久夫コーチが、悔しそうな表情を見せた。
“あの15番”というのは、明成を5点差で退けた北陸高校(福井県)のポイントガード・土家拓大(2年)だ。身長は169センチしかない。しかし、平均190センチという高さを誇る明成は、その“小ささ”についていけなかった。
ベンチスタートではあるものの、現在は同ポジションの伊藤瑠偉(3年)に代わって多くのプレータイムを得ている土家は、明成と対戦する前日に考えた。「小さいけど何ができるか」と。
「やっぱり自分はドリブルが得意だからみんなを動かすプレーでいこうかなと思って、スピードのバスケを意識しました」
その言葉どおり、マンツーマンやゾーンディフェンス、オールコートのゾーンプレスなど変幻自在のディフェンスを仕掛けてくる明成に対し、土家は自らのドリブル突破で相手をかき回して相手の脅威になり続けた。
これには、明成の佐藤コーチも脱帽。「随分選手たちにも(警戒するよう)言ってたけどね。ああいう選手を守れる大きさ持ってるんだけど、足がついていかない。股の下くぐられてるようなドリブルだからね」。
ドリブルやパスだけでなく、相手のブロックをかわすフローターショットも要所で沈めた土家。終わってみれば約33分間に出場して18得点4アシストを記録。さらには6リバウンド4スティールもマークして、チームのベスト8進出に大きく貢献した。
一方で「やっぱり相手がデカかったのでターンオーバーが……」と話したように、この試合では両チーム最多となる6個のミスを犯した。また、プレーでは引っ張れたが、司令塔として「声」で味方を鼓舞することができなかったと反省。この点についてはキャプテンの伊藤の方が優れており、今後の課題でもあるという。
3年生が精神的支柱となり、「ガンガン行きたいタイプ」の土家ら2年生がのびのびとプレーできている今大会の北陸。初戦から船橋市立船橋高校(千葉県)、東海大学付属諏訪高校(長野県)、そして明成を倒して今最も勢いに乗っている。
ベスト4を懸けた31日は、延岡学園高校(宮崎県)と対戦。土家は明成戦とは異なり、同じタイプの木下岳人(2年/168センチ)とのマッチアップが予想される。
「相手が誰でも、僕らは流れを作って勝ちに行くだけです」
次戦は小細工なしの真っ向勝負に注目したい。
文=小沼克年