2019.07.30

開催地代表・川内高校が過ごした短くも熱い夏

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 前半を終えてのスコアは27-21。27日の1回戦では計116点を奪った北陸学院高校(石川県)相手に、狙いどおりのロースコアゲームに持ちこんだ。

 しかし後半、鹿児島県代表の川内高校は、北陸学院にゾーンディフェンスを敷かれると我慢の展開が続いた。第3クォーターで積みあげたスコアはわずか「6」。その間、相手は3本の3ポイントを含む計22得点をマークし、最後の10分間を前に10点の差が開いた。

 待ちに待った地元インターハイ。このまま負けるわけにはいかない。

 第4クォーターは、開始約3分で5点差まで追いあげた。だが、北陸学院のアウトサイドシュートに最後まで苦しめられ、試合をひっくり返すことはできず。最終スコアは49-63。川内の「令和元年度全国高等学校総合体育大会バスケットボール競技大会」は、初戦(2回戦)敗退という結果で幕を閉じた。

第3クォーターで相手を突き放した北陸学院[写真]=佐々木啓次

 川内は、2ポイント成功率こそ44パーセント(38本中17本成功)を記録して北陸学院の34パーセント(32本中11本成功)上回ったが、3ポイントに至っては12パーセント(25本中3本成功)。対する北陸学院は41パーセント(24本中10本)の高確率でリングを射抜いた。田中俊一コーチも「後半になってゾーンにされて、そこでアウトサイドのシュートが決めきれなかったです。シュート力の差が歴然と出たのが敗因だと思います」と素直に認めた。

 エースの野口侑真(3年)も影を潜め、この試合ではわずか9得点という結果に。絶対的存在なだけに「相手がダブルチームに来たは想定内」(田中コーチ)、そこで野口は6月の九州大会でも見せたような「周りを活かす」プレーを選択した。アシストやリバウンドでチームに貢献したが、第3クォーターにフリーで放った3ポイントは、まさかのエアボール。「前半からシュートタッチが良くなくて、入ったシュートも『何で入ったんだろう?』という感じだった」と、本来の力を発揮することはできなかった。

野口は北陸学院のディフェンスに苦しんだ[写真]=佐々木啓次

 敗れはしたものの、田中コーチは「ロースコアな展開に持っていくバスケットをできたことは、本当に子どもたちを誇りに思います」と称える。野口も言う。「見に来てくれて方々に勝って成長した姿を見せたかったです。でも、そんなに甘いものじゃなくて、負けという結果になってしまったんですけど、最後まで戦ったことに変わりはないですし、気持ちの面は見せれたかなと思います」。

 会場にこだました赤い声援は、試合開始からまるで最終局面かのように一つひとつのプレーに一喜一憂した。コートの端にはテレビカメラが2台、記者やカメラマンは、ざっと数えても20名は超えており、地元・川内に対する期待の大きさがうかがえた。

「子どもたちはこの大会のために努力して、ここまで成長して来たので……、1回くらい勝たせてやりたかった……。最後は『ありがとう』と伝えました」

 田中コーチは取材の最後、目を潤ませ、思わず言葉を詰まらせた。

「勝たせてあげられなかった」と悔やんだ田中コーチ[写真]=佐々木啓次

 川内高校は進学校だ。部活動に割ける時間も少なく、夏が終われば受験に備えて引退する選手も少なくない。この夏に懸けてきた分、「ウインターカップと言われでも、まだイメージが湧かない」と野口も口にする。

 現在所属する3年生全員が、冬まで残る可能性は少ないと言っていいだろう。それでも、体育館で汗を流し、仲間と切磋琢磨して過ごした日々は今後も大きな財産となる。

 サンアリーナせんだいをさらなる熱気で包んだ川内と、不利な状況にも屈せず3回戦へと駒を進めた北陸学院に、心から拍手を送りたい。

文=小沼克年

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