年に1度の誕生日。時には何ものにも代えがたい特別なプレゼントも欲しくなるものだ。
10月26日に行われた「平成31年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会 (ウインターカップ2019)千葉県予選会」。男子決勝戦で日本体育大学柏高校に3点差で競り勝った市立船橋高校は、2年ぶりのウインターカップ出場を決めた。
試合後、斉藤智海コーチとともにヒーローインタビューに呼ばれた永野雄大(3年)が最後にこう言った。「今日は7番の和田将英が誕生日なので、(みんなで)歌いたいと思います!」。
マイクを持った永野の合図で、ベンチや応援席にいるメンバーが『ハッピーバースデー』を歌い始める。会場の船橋アリーナに訪れた観客も、なじみある代表曲を口ずさんで和田の記念日を祝福した。
「本当に自分は幸せ者です」
思わぬサプライズを受けた3年生の和田は、187センチのスモールフォワード。得意とするアウトサイドシュートを武器にシューターとしてチームをけん引する存在だ。
この日の決勝戦は相手の厳しいマークに遭って思うようなプレーができず、「全体的にはひどかった」と振り返る。それでも、試合中は仲間から何度も励まされながらプレーを続けた和田。同点で迎えた第4クォーターの勝負どころでは、3ポイントラインでボールを受けると、ショットクロックに余裕があったにも関わらず迷わずシュートを放ってリングを射抜く。和田はそこから連続得点をマークしてリードを5点に広げた。
「ベンチに入れなかった3年生たちが『お前ならできる』、『落ち着いて楽に打てよ』など声をかけ続けてくれたことが一番心に残りました。最後にああやって決められたことは、仲間の声援や先生の励ましのおかげです」
「これからもっとシュート力を上げて、ウィンターカップでは満足いくようなプレーができるようにしたい。チームを引っ張る立場としても、周りをサポートできるよう努力していきたいと思います」
この日の祝福は、試合に勝っていなければ、ウインターカップ出場を決めなければきっとなかっただろう。最高の仲間とともに全国大会出場を決めた“バースデーボーイ”は、いつも以上に特別な誕生日を味わった。
文=小沼克年