2019.08.03

北陸の赤尾夢大、チームをひとつにした元応援団長のリードボイス

決勝戦では約13分間プレーした赤尾 [写真]=佐々木啓次
本格的に取材を始めたのが「仙台の奇跡」と称された2004年アテネ五輪アジア予選。その後は女子バスケをメインに中学、高校と取材のフィールドを広げて、精力的に取材活動を行っている。

 「令和元年度 全国高等学校総合体育大会 バスケットボール競技大会」の最終日。男女の決勝戦が行われ、男子は福岡第一(福岡)が北陸(福井)を107-59で圧倒し、4年ぶりの、そして‟令和初”の夏の王者に輝いた。

 2006年以来13年ぶりの優勝に手をかけた北陸だったが、わずかにそれを掴み取れなかった。それでも市立船橋(千葉)、東海大学付属諏訪(長野)、明成(宮城)、延岡学園(宮崎)、そして報徳学園(兵庫)といった強豪校を次々と倒していったのは今年の北陸に力がある証拠。チームを指揮する重野善紀アシスタントコーチはその躍進ぶりをこう明かす。

「選手とのコミュニケーションを大切にしました。それがチーム一丸――コート内も、ベンチも、応援席も一丸になったからこそ、ファイナルまで勝ち進めたのだと思います」

北陸の指揮を執る重野アシスタントコーチ [写真]=佐々木啓次

 実のところ、鹿児島に入ってからチームの雰囲気はよくなかったという。しかし、これではいけないとミーティングをおこない、「バラバラになりかけていたチームが1つになれました」。語るのは3年生パワーフォワードの赤尾夢大だ。

「鹿児島に入って練習試合をしたときに、勝つことはできていたんですけど、内容が悪かったんです。みんながやるべきことをやっていなかった。だから開幕の2日前にまずはエントリーメンバーだけで話して、そのあと重野ACや、エントリー外のメンバーも入って話し合いました。そこでは声が出ていない、コミュニケーションから改善しようという話になって、そこからチームがひとつになっていったんです」

 赤尾はスターティングメンバーに名を連ねるが、どの試合もたいてい米本信也と交代をする。米本は2年生のシューティングガードである。

 今大会の北陸は、バスケットの面だけで見れば2年生が大きな流れを作っていた。重野ACもチームの精神的支柱ともいうべき3年生を起用したいと強く思いながらも、一方で勝利を目指すうえで2年生の実力は欠かせないとも考えていた。

 リバウンドに飛び込む赤尾 [写真]=兼子慎一郎

 そのために赤尾のプレータイムはおのずと削られていった。それでも赤尾は腐らず、ベンチでも積極的に声を出し続けていた。今日の決勝戦でもタイムアウト明けなど5人がコートに出ていった直後、ベンチ裏にいたエントリー外のメンバーとともに円陣を組み、「1、2、3」の掛け声を先導していたのは赤尾だった。キャプテンの伊藤瑠偉がいるときでさえ、である。

「僕は昨年までエントリー外にいて、応援団長をしていたんです。チームを盛り上げるために自分で勝手にやっていました」

 赤尾はそう言って笑う。しかしそうすることでチームも試合を重ねるごとに1つになっていくのを感じたとも認めている。

 むろん選手である以上、試合には出ていたいし、下級生にそのポジションを簡単に譲りたくもない。今大会の結果で勝ち取ったウインターカップではベンチではなく、コートの上でもっと存在感を示したい。

「僕の役割はリバウンドと走ること。攻めるタイプではないけど、シュートの確率を上げることと、全国のフォワードを守るディフェンス力が課題です」

 そして、こう続ける。

「チームとしてゲームのなかでの声が足りなかったので、ウインターカップではコートの中でも声を出していきたいです」

最後は完敗のインターハイだったが、赤尾の声でチームがもっと一丸になれば冬はもっと戦える――。

文=三上太

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