まさに“3ポイントの雨”、あるいは“神がかった”とも言うべき光景だった。
12月27日に行われた「SoftBank ウインターカップ2019 令和元年度 第72回全国高等学校バスケットボール選手権大会」準々決勝、北陸高校(福井県)は明成高校(宮城県)を86ー65で退けてベスト4へ進出。北陸は平均身長189.5センチの高さを誇る相手に対し、実に16本もの長距離砲を沈め反撃の糸口をつかませなかった。
3ポイントの雨を降らせたのは、米本信也(2年)と髙橋颯太(3年)のシューターコンビ。米本は試合前、髙橋に「カマしてやろうぜ!」と声をかけたという。
その“言い出しっぺ”の米本が、まずは先陣を切った。試合開始2分35秒に1本目の3ポイントの決めると、そこから面白いように3ポイントをマークしてスコアを積みあげる。第1クォーターを終えた時には6本中5本の3ポイント、計19得点を稼いだ。
北陸の2年生シューターは、試合をとおして13本中7本の3ポイントを射抜いて計28得点。そして「前半は調子がよくて3ポイントが入ったけれど、後半はダメダメで先輩に助けてもらいました」(米本)と、前半の殊勲者を後半に助けたのが髙橋だ。
「(重野)先生からも『前半入らなくても後半入る』と言われているので、そこは自信を持って打てましたし、ハーフタイムに修正できたので、それが入りだした要因かなと思います」(髙橋)
髙橋の前半での3ポイント確率は6分の2。決して悪い数字ではないが、後半の20分では計12本もの3ポイントを放ち、8本がリングを射抜く。そのほどんどが3ポイントラインから1メートル以上離れた“ディープスリー”だったこともあり、より強いインパクトを残した。そのプレーはまるで、髙橋が目標とし、昨年のウインターカップで得点王に輝いた富永啓生(レンジャー短大)を見ているかのよう。当然、明成へ与えたダメージも大きかったはずだ。
「どんな試合も2人のシュートが入れば強い。今日の試合は米本が7本、僕が8本とすごく当たったので、3ポイントに関しては完璧に近いです」と胸を張った髙橋。「外れれば他の選手がカバーしてくれます」と、外れても202センチのダンテ スレイマニ(3年)がリバウンドを取ってくれる、小川翔矢、土家拓大(ともに2年)らがアタックして点をとってくれる——。そういった仲間との信頼関係があるからこそ、思いきりの良いシュートが打てるとも明かした。
指揮を執る重野善紀コーチも、2人の活躍については少し驚いた様子だった。「本当にシュートが入りましたね。神がかっていたというか……」
しかし、この日披露した3ポイント攻勢は決して偶然ではなく、大会約1カ月前からチームとして取り組んできた成果が実ったともいえる。
「『自分のタイミングがあったら打っていいよ』と言っていて、3ポイントを1試合で目標40本と設定しています。40本なら確率が3割でもそれなりに得点を稼げますし、あとはペイントアタックやフリースローで得点できればなと」
明成戦の3ポイントは37本中16本成功。高確率で決めたが、重野コーチは目標の40本に届かなかったことについては「もうちょっと」と、やや物足りなさを感じていた。それでも、「明成さんはうちにインターハイでやられた分、対策してきたなと感じました。それでも勝ちきれたのは、こっちもそれなりの準備をしてきたからだと思っています」と選手たちを讃えた。
夏も明成を倒し、破竹の勢いで決勝まで駆けあがった北陸。「インターハイのように試合を追うごとにチームが成熟しています」と、指揮官は確かな手応えを口にする。「明日もインターハイ準優勝というプライドを持ちながらも、謙虚に一戦必勝の気持ちで戦いたいと思います」
28日の準決勝は福岡大学附属大濠高校(福岡県)との対戦。インターハイに続く決勝進出が見えてきた。
文=小沼克年