「2年間優勝していないので、この2年間はすごく長く、10年ぐらいのように感じました」
昨年12月に行われた「ウインターカップ2019」の決勝後の記者会見、優勝した桜花学園高校の井上眞一コーチは、こう語った。
井上コーチは、言わずと知れた日本バスケット界の名将。『名短(めいたん)』と呼ばれ親しまれた名古屋短期大学付高校時代から校名が桜花学園に代わった現在も、毎年、日本一のチーム作り上げている。
ウインターカップ2019の優勝を含めてインターハイ、国体と井上コーチが指揮を執った全国大会での優勝回数は実に67回。これは男女合わせても他に例を見ない大記録で、しかも、井上コーチ一人で達成しているのだから驚きだ。
その井上コーチの元には高校での日本一を目指して全国から選手が集まってくる。卒業生の中には髙田真希(デンソーアイリス)や渡嘉敷来夢(JX-ENEOSサンフラワーズ)といった現在の日本代表を引っ張る選手を始め、大神雄子(トヨタ自動車アンテロープス・アシスタントコーチ)ら指導者として活躍している人も多い。
だが、最近のウインターカップだけを見れば、桜花学園の成績は2017年は3位、2018年はベスト8。優勝はおろか、2年連続で決勝の舞台にすら進むことができていなかった。
その年の集大成となる大会での敗退。だからであろう。優勝が絶対命題のチームであり、負けず嫌いの指揮官にとっては、『僅か2年』とも思える期間が、長く感じたのだ。
令和元年という記念する年につかんだ冬の日本一。この年は終わってみればインターハイ、国体(桜花学園主体の愛知県が優勝)、ウインターカップと、3大大会を制覇。これも3年ぶりとなった。
「大会前の調子が良くなくて、こちらも怒ってばかりのまま大会に入ってしまいましたが、(大会)途中からリズムが出てきた。決勝は選手がとても緊張していて(出だしが)良くなかったので早めにタイムアウトを取りましたが、それで少し落ち着いたのかなと思います」と、井上コーチはホッとした表情をのぞかせた。
だが、コーチも選手もこの優勝に浮かれている暇はない。他のチーム同様、すでに新人戦が始まっており、2020年での3大タイトル獲得に動き出しているのだ。
新チームでは平下愛佳(177㎝)、岡本美優(177㎝)とスターターの3年生2人が抜けるが、4番ポジションには1年生の朝比奈あずさが担い、「昨年と違うのは朝比奈が182㎝あるので、ミスマッチを付いて得点を稼ぐことができると思います。だけど、もう少し外のシュートが安定してこないと」と、井上コーチは新戦力に期待を抱きながらも、しっかりと課題も挙げる。今年も下馬評の高い桜花学園だが「全然手応えはない」と井上コーチ。
この時期、チームは原点に戻りファンダメンタル叩き込んでいる。決して突飛な練習をしているわけではなく、内容はいたってシンプルであり、基本に忠実。そしてそれを徹底する。
桜花学園に集まったダイヤの原石たち。この先に大きな輝きを放つためにも、今はしっかりと石を磨いているところだ。
文=田島早苗