2019.12.28

“キャプテン”として戦い抜いた1年が桜花学園の平下愛佳を大きくさせた

記者会見では優勝カップを前に優勝の喜びを語った桜花学園の平下[写真]=伊藤 大允
中学や高校、大学などの学生バスケットをはじめ、トップリーグや日本代表と様々なカテゴリーをカバー。現場の“熱”を伝えるべく活動中。

「この1年ウインターカップで優勝することを目標にやってきて、苦しいこともあったけれど、優勝できていい経験になったと思います」

 決勝後、優勝会見の壇上で桜花学園高校(愛知県)の平下愛佳(3年)は優勝の感想を語った。

 ようやくつかんだ“冬の日本一”だった――。
 
 高校女子界のトップを走る桜花学園において1年生の頃からスターターを務め、順調に高校のキャリアをスタートした平下。しかし、1年生の冬は準決勝で敗退し3位。続く2年生ではインターハイ、国体(桜花学園主体)を制したものの、ウインターカップではベスト8止まりとなった。

 そのため、常勝軍団にとって今年はインターハイはもとより、ウインターカップでも絶対に負けられない年に。そのチームにおいて平下は“キャプテン”という重責を自ら背負った。

「1年生の時から試合に出させてもらっていたので、自分しかいないと思いました。先生にとっては足りなかったかもしれないけれど、まずはチームの中で一番声を出すこと意識して、練習でもできてない人がいたら教えるようにしていました」と、この1年間の取り組みを語る。

 ただ、名将・井上眞一コーチからはことあるごとに「キャプテンがいない」「リーダーシップを取れる人がいない」と喝を入れられた。その度に平下は下を向くことなく、最善の最強のキャプテンであろうと取り組んできた。

決勝では19得点を奪った平下[写真]=兼子愼一郎

 今や桜花学園の練習では、平下がチームメイトに指摘をしたり、叱咤激励したりする声が響くまでに。ウインターカップ序盤は井上コーチから「ガードの江村(優有/2年)とセンターのアマカ(オコンクウォ・スーザン・アマカ/2年)に任せきり」と言われた場面があったものの、準々決勝からは本来の持ち味を発揮して、得点、そして精神面でもチームを引っ張った。

 決勝でも後半に得点ペースが加速。第4クォーター中盤、相手を引き離す場面ではドライブやミドルシュートで畳み掛け、最後も残り6秒、勝負を決定付けるフリースローをしっかりと2本沈めた。

「桜花のキャプテンは精神面でもプレー面でも引っ張っていかないといけないので、そこは1年間苦労したところです。声を出すだけでもダメだし、プレーで点を取るだけでもダメ。両方ができてないといけないので、両方がバランス良くできるように努力していました」と平下。

 先輩たちの背中を見ながら戦っていたそれまでとは違い、リーダーとして一人立ちした1年。「私の弱点がキャプテンシーやリーダーシップがないところでした。でも、弱点を少し克服できたかなと思うし、この先、上にあがっていくにもキャプテンシーは必要。強い気持ちがないと上がっていけないと思うので、本当に自分の弱点を見付けてくれて良かったと思います」と語る。

優勝を決めた直後、互いに駆け寄って喜び合う桜花の選手たち[写真]=伊藤 大允

「井上先生を絶対に胴上げしたい」という公約を果たした頼れるキャプテン。明日からはようやく、両肩に掛かっていた重荷を下ろすことができるだろう。

「オリンピック出場」を目指す平下は、この1年で得たかけがえのない経験を生かし、新たなステージへと羽ばたく。

文=田島早苗

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