【トッププレーヤーの高校時代】岡本彩也花「今の高校生にはいろんなことに挑戦してほしいと思います」(後編)

高校3年生になると、さらに責任感が増したと語る岡本[写真]=バスケットボールキング

春は出会いと別れの季節、特に中高生にとっては入学や進級などで環境が大きく変わる時期だ。
新たな生活に大きな期待を抱く一方で、同じくらいの不安を抱く生徒も多いだろう。
そこでバスケットボールキングでは、BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代を振り返ってもらうインタビュー特集をスタート。
トップリーグで活躍する選手たちの高校時代の話を、今後の学生生活の参考にしてほしい。
第2回はJX-ENEOSサンフラワーズのキャプテン岡本彩也花が登場。渡嘉敷来夢らとともに桜花学園高校の一員として全国大会では幾度となく優勝を経験した高校時代を全3回にわたってお届けする。

インタビュー・文=田島早苗
写真=バスケットボールキング編集部、伊藤 大允

強気のプレーでJX-ENEOSサンフラワーズをけん引する岡本[写真]=伊藤 大允

――高校2年生では大逆転優勝となったインターハイに初戦敗退(2回戦)の国体。そしてウインターカップではエース・渡嘉敷来夢選手(JX-ENEOSサンフラワーズ)がケガを負いながらの優勝と劇的でした。そして翌年、3年になった年は、岡本選手をはじめ、前年からの主力が多く残り、下馬評も高かったです。
岡本 前の年よりは気持ちに余裕ができたというか、自信も付いたとは思います。ただ逆に、主力のメンバーは丹羽さん(裕美/東京羽田ヴィッキーズ・2019-20シーズンをもって引退)が抜けただけで大きく変わらなかったので、チームとして何も変わらないというのが怖かったというか。前進しているかどうかが自分たちでは良く分からなかったところはありました。

 それでも、個人的には2年生の時は来夢に頼っていたところがあったのですが、3年生になってからは私が引っ張らないといけないという覚悟、自覚がより増しました。私がしっかりしないと勝てないとも思っていましたね。

 後は前の年に国体で負けたこともあり、気持ちに緩みが出てしまったらまた負けるのではないかという怖さがあったので、夏のインターハイはすごくドキドキしながら臨みました。すごく心配でした。

――結果的にはインターハイ、国体、ウインターカップで優勝。3冠獲得を果たしますが、どの試合も大きな点数を付けて勝つことが多かった気がします。
岡本 競った試合というのはあまりなかったですね。

――3年生の時はスターターが全員3年生。盤石の強さがありました。
岡本 今は水島(沙紀)もトヨタ自動車(アンテロープス)で相手だけど、あの時みたいにまた一緒にやりたいなと思います。だから、今年のWリーグオールスターで来夢、水島と同じチームで一緒に試合ができたことはすごくうれしかったです。

――高校の3年間で一番思い出に残っている試合は?
岡本 やっぱり2年生のインターハイ決勝ですね。自分の気持ちが一番出ていた試合だったかなと思います。

――桜花学園高校で身についたなと思うものは何ですか?
岡本 人のことを考えられるようになったことです。それまでは自分のことしか考えられていなかったけれど(笑)、周りにパスができるようになるなど、周りに気を使えるようになったと思います。

――その時からコート内外で渡嘉敷選手とは言い合える仲でしたよね。
岡本 お互いに思ったことを言い過ぎるし譲らない。負けず嫌いなところがあったので、意見を交換する中で、反発が起きたり。それで井上(眞一)先生にはよく「2人が喧嘩したらチームはどうなるの?」と怒られていました。それを言われて「確かに」って納得して、喧嘩を止めたこともありましたね(笑)

――桜花学園は井上コーチとはコート外ではいわゆるタメ語。家族のような雰囲気があります。
岡本 先生とコミュニケーションを取れていたことがいいチームになれた要因だと思います。コートから離れたら仲の良いおじさんにみたいな存在で。そういうところからコミュニケーションを取り、それで信頼関係が生まれたと思います。私たち選手は先生のことが好きですし、信頼している。本当にすごい先生だなと今も思います。

――改めて桜花学園に進学して良かったと思いますか?
岡本 思いますね。そうでなければJX-ENEOSにも入ってないだろうし、バスケットももうやっていなかったかもしれないですから。

――ちなみに、3年生の時はチームのまとめ役は誰だったのでしょうか。
岡本 キャプテンの本多(真実/元トヨタ紡織サンシャインラビッツ)だったと思います。私は、井上先生から「キャプテンはできない」って言われていたので(笑)。私は中学からそういう感じで今までで一度もキャプテンはさせてもらったことはないです。

 

今年のオールスターでは渡嘉敷、水島ら桜花学園高時代の同級生と同じチームで出場した[写真]=伊藤 大允

――では、今シーズン、JX-ENEOSでキャプテンでしたが、これが人生初のキャプテンだったのですね。
岡本 大変でしたね。考え過ぎなのかもしれないですが、今までキャプテンをしてこなかった分、どんな感じか分からなくて。みんなをまとめなきゃとか、声をかけなきゃとか、気を使ってすごく疲れました。

 でも、これまではリュウさん(吉田亜沙美)に頼っていた分、私がしっかりしなきゃいけないという思いが芽生えたというか。プレーで見せないといけないと思っていたので、今シーズンは、3ポイントシュートやディフェンス、走る面でみんなに示していくことは意識して取り組んだシーズンでした。

――チームとして今シーズン、どんな良さが出せましたか?
岡本 ベンチメンバーも一緒になって戦えたというのが大きいです。それと、みんなが付いてきてくれた。それは自然と付いてきてくれたのか、キャプテンが私だから、個々が「しっかりしなければ」という思いで付いてきてくれたのかは分かりませんが、全員で戦えた感じはします。それに私の中では、みんながステップアップしたシーズンだったとも思っています。

――最後になりますが、現役の高校生にアドバイスをお願いします。
岡本 いろいろ挑戦して欲しいと思います。バスケットもそうですが、他のことでもいろんなことに挑戦して欲しいですね。今、私がそうなんです。初めてキャプテンになって、今まで変わらなくてもいいと思っていたことも挑戦しないといけなくなった。でも、多くのことに挑戦することで、人としても成長していくと思うので、いろんなことに挑戦して、またそれを楽しんでほしいと思います。
 

PROFILE
岡本彩也花(おかもと・さやか) JX-ENEOSサンフラワーズ
鋭いドライブや3ポイントシュートなどで得点を挙げる攻撃型プレーヤー。桜花学園高校では同級生の渡嘉敷来夢(JX-ENEOS)らとともに2年生からスターターを担い、5回の全国大会優勝に貢献した。
JX-ENEOS入団後も着実に力を付け、外角シュートを武器に主力として幾度となく日本一に貢献。2019-2020シーズンはバスケット人生初となるキャプテンを務め、チームをけん引した。
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