春は出会いと別れの季節、特に中高生にとっては入学や進級などで環境が大きく変わる時期だ。
新たな生活に大きな期待を抱く一方で、同じくらいの不安を抱く生徒も多いだろう。
そこでバスケットボールキングでは、BリーグやWリーグの選手たちに、高校時代を振り返ってもらうインタビュー特集をスタート。
トップリーグで活躍する選手たちの高校時代の話を、今後の学生生活の参考にしてほしい。
第3回はJX-ENEOSサンフラワーズでも日本代表でも活躍を見せる林咲希が登場。日本を代表するシューターへと成長した彼女の原点とは。福岡県の精華女子高校での3年間を全3回のインタビューで振り返る。
インタビュー・文＝田島早苗
写真＝バスケットボールキング編集部、伊藤 大允
林はJX-ENEOSの次世代を担う選手[写真]＝伊藤 大允
――産まれも育ちも福岡。高校も地元である精華女子高校に進学しましたが、キッカケは何だったのでしょうか。
林 （精華女子のコーチである）大上晴司先生が誘ってくれたということと、何チームか練習に参加させてもらったのですが、精華が一番きつかったけれど、一番楽しかったというのが理由です。確かあの時はトレーニング期間で、バスケットというよりはトレーニングメニューをこなしたと思うのですが、大上先生も含めて、その時の“チームみんなでやる”雰囲気がすごく良いなと思い、進学を決めました。
――中学時代のバスケットの成績は？
林 県大会にも行っていなかったし、名前を知られているような存在でもありませんでした。成績は地区大会2位ぐらいでしたね。
ジュニアオールスターの福岡選抜には一次選考に参加しましたが、二次選考は各地区1位のチームのキャプテンしか進めなくて。私自身、バスケットもまだまだ未熟だったし、最終的に選ばれることはありませんでした。
自分のチームは弱かったのですが、夏休みは同じ地区の1位チームの練習に参加もしました。午前は自分のチーム、午後は1位チームのところで練習をしていました。
――中学校時代はどのようなプレースタイルだったのでしょうか？
林 4、5番ポジションでしたが、いろんなポジションをやりました。ガードの選手もいたのですが、ボール運びを手伝うこともありましたし。オールラウンダーだったんですかね、一応、中学も高校も点取り屋でした。
――中学時代の得点パターンで多かったプレーは？
林 ジャンプシュートですかね…。ドライブからストップジャンプシュートというプレーを良くしていたと思います。中学の時はインサイドプレーはしていなかったです。
――そして精華女子高校に入学。実際に入っての印象は？
林 精華のプレースタイルは走ること。私はもともと走るのが好きだったので、楽しかったです。（入学前に）思い描いていた以上に、いいチームだなと感じました。
――高校は寮でしたか？それとも通学でしたか？
林 通学でした。家は糸島市で、そこから通学時間は1時間ちょっと。毎日、朝5時半前には電車に乗っていました。
――朝が早くて大変だったのでは？
林 そうでもないですね。3年間、朝が辛いと思ったことは一度もなかったです。ただ、寝坊しそうになったことは僅かですがありました（笑）。きつかったといえば、冬の朝が寒かったぐらいですね。
私は高校で自主練習の楽しさを教えてもらったので、一人でやる自主練習の時間が好きでした。だから早く体育館に行って、早く練習をしたいという気持ちが勝っていたのだと思います。
――自主練習の楽しさはいつ頃知ったのですか？
林 高校に入ってすぐだと思います。精華は上手くて強い先輩たちがたくさんいたのですが、みんな自分を主張し過ぎず、自慢もしない。これは大上先生の教えもあると思いますが、一緒に練習をしながらモチベーションを上げてくれるんです。だから1年生の頃は「先輩のように上手くなりたい」という気持ちで取り組んでいました。
――１年生の頃から試合には出ていましたか？
林 ユニフォームはもらっていたので、出ていたと思いますが…。その頃のことがあまり記憶にないんですよね。
――強豪校の中で1年生からメンバー入り。争いも大変だったのではないですか？
林 メンバー入りしてからが大変というか、Bチームの選手たちのためにも頑張らないといけないという気持ちが強かったです。同級生が15人。その内Aチームに入ったのは4、5人だったので、『みんなのためにも』という思いを背負ってやっていました。
――当時の3年生は？
林 津田さん（史穂莉/新潟アルビレックス BBラビッツ）、津野さん（彩華/元日立ハイテククーガーズ）です。この年はインターハイに出場しましたが、ウインターカップ予選では福岡大学附属若葉高校に負けて冬の全国大会は出場を逃しました。若葉には渡邊亜弥さん（三菱電機コアラーズ）がいました。
――あの年は『津野＆津田コンビ』の活躍で、インターハイでベスト８入りしました。
林 そうですね。試合の記憶があまりないのですが、先輩たちがすごかったということは覚えています。それと、先輩方の記憶も、試合よりは練習で教えてもらったことの方が強く残っています。
林 咲希（はやし・さき） JX-ENEOSサンフラワーズ
高確率の3ポイントシュートで勝利を呼び込む日本代表のシューター。また、それだけでなく、走力も持ち味で、速攻など速い攻めにも積極的に絡む。精華女子高校を経て、進学した白鷗大学で4年生の時にはインカレ優勝を達成。ユニバーシアードの日本代表として2大会連続で出場しており、2017年大会では準優勝を果たした。昨年から日本代表としても本格的に国際大会で力を発揮している。