■昨年度は1勝1敗。どちらも負けられない崖っぷちの戦い
ホームの横浜国際プールで迎える2月22日のチャイニーズ・タイペイ戦は、「FIBAバスケットボールワールドカップ2019 アジア地区1次予選」で最も重要な決戦となる。フィリピンとオーストラリアに敗れて2敗を喫している男子日本代表は、実力的にライバルと目されるチャイニーズ・タイペイには勝たなければならない。ただ、相手にも同じことが言える。チャイニーズ・タイペイも11月の予選ではオーストラリアとフィリピンに連敗。ともに崖っぷち決戦だ。
互いに勝ったり負けたりのライバル関係。昨年度の戦いは1勝1敗で、日本は2017年6月に長野で開催された東アジア選手権では73-78で敗戦を喫している。帰化選手のクインシー・デイビスにリバウンドを支配されたことで主導権を握られ、スコア以上に内容では完敗だった。逆に、8月にレバノンで行われたアジアカップではチャイニーズ・タイペイがデイビスを負傷で欠いたために、日本が87-49で快勝している。今回はデイビスが復帰しており、2月の予選こそが本当の意味での決戦となる。
チャイニーズ・タイペイのスタイルは、大黒柱デイビスのインサイドを軸に、スピードあるアウトサイド陣の走力とシュート力が連携するスタイルだ。アジアカップのように大黒柱が不在だと崩れる脆さもあるが、ガツガツとゴールに向かうフィジカルの強さがあるために、波に乗ると手がつけられない破壊力があることは、完敗した東アジア選手権でも実践済みだ。
だが、発表されたチャイニーズ・タイペイのメンバーを見ると、今回よりも7月のホーム最終戦に懸けているのでは、と言いたくなるような12人の構成となった。日本は相次ぐ負傷者に頭を悩ませているが、チャイニーズ・タイペイもしかり。メンバー構成だけでいえば、今回は日本よりも層の薄さが目立つ。
■エース格の劉錚が負傷で欠場、ベテラン陣も辞退
現在、チャイニーズ・タイペイの軸となるのは、2014年のアジアカップ(現アジアチャレンジ)で準優勝に躍進したメンバー。センターのデイビスと、アウトサイドの周儀翔(ツォー・イーシアン)と劉錚(リョー・ゼン)だ。この3人は近年、世代交代を進めてきたチャイニーズ・タイペイの顔である。
デイビスは11月のフィリピン戦では20得点9リバウンドを記録。日本が東アジア選手権で完敗を喫したのも、デイビスにリバウンドを支配されたからであり、彼をいかに抑えるかがポイントとなる。
そして、機動力を活かしたアウトサイドで得点源となるツォー・イーシアンとリョー・ゼンだが、このうち、最近の国際大会で活躍してきたリョー・ゼンが負傷のために欠場することになった。チャイニーズ・タイペイにとっては大きな痛手だ。
他にも主力が相次いで辞退している。クレバーな状況判断と要所のシュート力で東アジア選手権優勝の原動力となった蔡文誠(ツァイ・ウェンチョン)、3ポイントに威力がある呂政儒(ルゥ・ジォンルー)、フィジカルが強い曾文鼎(ツェン・ウェンディン)ら経験豊富なベテラン陣と、インサイドで存在感を示している周柏臣(ツォー・ボーチェン)らが負傷やコンディションが整わずに辞退。選手層が一気に薄くなっている。
■ポイントガードに強力な新戦力が浮上
そんな負傷者が続出の中で、新戦力として浮上しているのがポイントガード陣だ。
注目したいのは、2017年8月、自国開催のユニバーシアードで大活躍した陳盈駿(チェン・インジュン)。11月は負傷のために出場を見送ったが、スピードと得点力があり、次世代のチャイニーズ・タイペイを背負う司令塔と期待されている。また昨季の国内リーグSBLでファイナルMVPを獲得した蘇翊傑(スー・イジェ)は2012年以来となる代表復帰を果たした。ともに国際大会でのキャリアは浅いが、従来よりポイントガード陣に厚みが増したことは警戒しなければならないだろう。
両国ともに苦しい台所事情で戦うことになる崖っぷち決戦。ホームで絶対に負けられない戦いだ。
文・写真=小永吉陽子