決勝でも堅守を発揮、今季1つ目のタイトル獲得
11月7日、つくばカピオ(茨城県)にて行われた1部トーナメントの「オータムカップ2020」決勝戦。東海大学vs大東文化大学の一戦は、最終スコア79-47と差が開き、東海大が優勝を飾った。
試合は開始約6分間で6-4と重い立ち上がり。大東文化大は流れを変えるべく、準決勝で18得点の活躍を見せた石川晴道(3年)をコートへ送り出したが、西田優大(4年)の3ポイントシュートで東海大が一歩リード。すると、大倉颯太(3年)も石川とのミスマッチをつきポストプレーからリングへアタック。リードを広げた第1クォーター終盤には、大東文化大・飴谷由毅(4年)のテクニカルファウルもあり、最初の10分で22-11と2ケタ点差がついた。
第2クォーター、東海大は坂本聖芽(3年)、河村勇輝(1年)らを中心に試合を展開すると、坂本が会場の度肝を抜くダブルクラッチを沈めて起用に応える。対する大東文化大はバトゥマニ・クリバリ(1年)の得点でついていったが、同クォーター残り2分19秒、河村に3ポイントを決められ36-22。すぐさまタイムアウトを取って流れを止めるも、このタイムアウト明けからは東海大がさらに守備の強度を上げて襲いかかり、40-25で前半が終了した。
後半に入っても、東海大は厚い選手層と質の落ちないディフェンスを駆使して終始試合を優位に進めた。第3クォーター終盤にはセカンドユニットの河村、坂本、松崎裕樹(2年)を中心に走るバスケットを展開し点差を18点に拡大。最終クォーターは「今日の試合は『我々はディフェンスチーム』というのが表現できた」と陸川章コーチが振り返ったように、残り1分12秒までわずか3失点と圧倒した。すると最後は、2年生以降、なかなかAチームでのプレータイムを得られなかった木下碧人(4年)が3ポイントを沈め、今季初タイトルに華を添えた。
強さの裏に隠された津屋一球のキャプテンシー
佐土原の20得点を筆頭に、計79点を挙げたオフェンスもさることながら、誰が出ても強度の落ちない守備力で相手を47点に抑え込んだ東海大。今大会を振り返っても、決勝を含めた全4試合の1試合平均失点は54.5と、まさに守備で勝ち取った優勝だ。
試合後の会見で、今年のチームを象徴する守備力の要因について問われた陸川コーチは「きっかけは津屋一球キャプテンですね」と、間を置かずに答えた。
「彼が昨年のインカレ後の12月にキャプテンに就任したんですけど、練習が始まる前に『昔の東海、ディフェンスからみんなで走る東海を取り戻す!』とみんなの前で宣言したんですね。本当に彼がディフェンスで声を出して盛り上げて、キャプテンとしてみんなを引っ張ってくれたと思います」
フロアリーダーとしてコート上ではまとめ役を担う大倉、即戦力ルーキーとして躍動した河村も、最上級生の津屋の存在についてはこう口にする。
「チームのことを一番に考えているキャプテンで、下級生にも気を遣ってくれています。時に抱えすぎてしまうこともありますけど、そこは他の4年生や僕たちでバックアップしていますし、本当に責任感があってみんなが信頼しています」(大倉)
「本当に頼もしい存在というか、津屋キャプテンなしではここまでのチームになっていないと思います。シュート精度も良くて、泥臭い部分でもチームを鼓舞してくれるのでガードとしても助かりますし、自分が先輩たちに気を遣ってしまう場面があると、『思い切ってやれよ』と言ってくれます。練習中、チームの雰囲気が良くない時には、全員を呼んで「こんなんじゃダメだぞ!」ってしっかり喝も入れてくれるので感謝しています」(河村)
今年の東海大は、「バックアップメンバーが出ても差がなく、質が落ちない」(陸川コーチ)ことが最大の強みと言える。大倉を中心としたハーフコートバスケットに加え、河村の加入で坂本と松崎のスピードが一層生きるようになり、攻守両面でスピードアップした点も特徴の1つだ。さらには大倉&河村の2ガードも魅力的であり、この時間帯には大倉が”得点マシーン”と化して試合を決めてしまうこともある。
一見すると、どうしても4年生以外の活躍が目立ちがちだが、今大会で見せた”盤石”とも言える強さの裏には、前述した堅守とタレント軍団をまとめ上げる津屋一球のリーダーシップ、そして、『強い東海を取り戻す』というキャプテンの熱い想いがあることを忘れてはならない。
文・写真=小沼克年